地下洞窟
人一人が通るのがやっとの隙間に体をねじ込ませていくリリム。
仕方なく私も続くことにする。
(閉所恐怖症なんだが、大丈夫か、これ。)
リリムよりかは余裕を持って体を隙間に押し込んで行くが、この、動ける隙間すらない空間ってのが苦手だ。
というか、真っ暗なんだが。
「リリム」
「なんだ?」
「暗いんだが」
「何か持ってないのか、カルド」
「いや、あるけど」
(人任せかよっ!)
私はインベントリから魔道具のカンテラを取り出す。
カンテラ片手に体を通路と言う名の穴に押し込めていく。
「リリム」
「なんだ?」
「狭くなってないか?」
「なってるぞ」
四つん這いで体を傾け、進みながらリリムが答える。
私もせっかく出したカンテラだが、進むのに邪魔だから仕方なくインベントリにしまう。
一気に闇に包まれる。
壁がそれまで以上に迫ってくるように感じられる。
身動きが、取りにくい。
このまま閉じ込められちゃうんじゃ・・・。
思わず前にいるはずのリリムに声をかける。
「おいっ」
返事がない。
「おいっ!」
「なんだ、カルド。そこ、狭いから気を付けろよ」
ようやくリリムの返事が聞こえる。
「これ、いつまで狭いんだ。」
た、確かにここはキツイ。
私も四つん這いになり、体を捻りながら通る。
「しばらくだな。」
(しばらくかよ・・・)
長い長い、本当に私に取っては長い時間進み続け、ようやく洞窟が広がり始める。
私はすぐにカンテラを取り出して灯す。
「ここからは道が別れているからはぐれないように俺に着いてきてくれ。」
「ああ、わかった」
道は下りのようだ。所々に分かれ道や横穴がある。
必ずしも広い道を進むわけでは無いらしい。
ほら、また狭い穴にわざわざ入っていく。
思わず嫌がらせかとリリムを疑いたくなるが、しぶしぶ着いていく。
「リリム」
「なんだ?」
「なんでこんなとこの道を知っているんだ?」
「俺もハグレて長いからな。各地を旅しているし、ここはよく通るんだよ。一部じゃけっこう有名な道なんだ。」
「ふーん。そんなものか」
「あ、このあと、地底湖の脇を通るが、地底湖に近づきすぎるなよ。引きづり込まれるから。」
「何がいるんだ?」
「それはよくわからん。触手しか出てこないからな。地底湖の中は真っ暗だしな」
「・・・気を付けよう。」
私はこっそりクレナイにお願いしておく。
しばらく進み、件の地底湖が現れる。
広い。
ふちにそって歩き始める。
だんだん足場が狭くなってくる。
ついに足場が無くなる。
どうするのかとリリムの方を見ると、壁に点々と杭が刺さっている。
リリムはその杭に足を掛け、壁にへばりつき進み続ける。
私も近づく。
よく見ると木製だ。
クレナイにランタンを持っててとお願いし、リリムの真似をして壁にへばりつき進み始める。
(まあ、狭いよりはましだな。落ちても下、水だし。)
すいすいと二人して進んでいくと、途中、クレナイが微かに反応する。
どうやら例の触手が近くにいそうだ。
せっかくなので、ちょっとシャドーのロイに見に行ってもらう。
・・・どうやらなまずのような馬鹿でかい怪魚がいるらしい。触手は髭的なもののようだ。
こちらに攻撃して来なそうなのでそのまま通りすぎる。
そして、ロイはなんと水の中に落ちていた水晶をお土産に持ってきてくれた。
水晶は触媒になるかもしれないので、後で鑑定することにして、インベントリに水晶をしまう。
ようやく地底湖を過ぎると、小休止を取る。
リリムに中級スタミナポーションを渡し、自分でも飲む。
「リリム、あとどれくらいなんだ?」
「後は三分の一くらいだ。後はひたすら狭い道が続くぞ。」
その返事にげんなりしながらも、急ぎたいと言った手前、平気な顔を見せておく。
幸いカンテラを掲げていても何とか通れるサイズがあったので、暗闇にはならず、何とか無事に地下洞窟を抜けることが出来た。
外はちょうど日の出。
夜を徹して地下洞窟を通りすぎたことになる。
ここからは王都までは、約2日らしい。
シロガネが無事なら良いのだが。




