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レベルMAX錬金術師がゲームと少し違う異世界に転移したけど、下町で冴えない薬屋をやってたら訳あり少女を拾ってしまって  作者: 御手々ぽんた
第二章

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ホムンクルス

 クレナイが反応する。


 私の影から瞬時に展開したクレナイの粘体が、私の前面に盾のように展開する。


 鈍い衝突音。


 クレナイの半透明の粘体越しに、右手を突きだし静止しているホムンクルスの姿が見える。


「素晴らしい。全く目で追えなかったよ。」


 私はホムンクルスに話しかける。


 その裸の体にまだ、壺の欠片をつけたまま、しかし、生まれたばかりとは思えない動きを見せるホムンクルス。


 ホムンクルスは、私の声には一切の反応を示さず、ただがむしゃらに、私に向かって腕を突きだし、体当たりを試みる。


 それら全てが何の型もなく、全く何の技術もない、ただただ獣のような直線的な攻撃だ。


 しかし、速い。そして重たい。

 全く技術を持たない不利を覆すに足る、その速さ。一撃で生死を分けうるその重さ。

 クレナイじゃなければ対応は難しいだろう。


 しかし、すべての攻撃はクレナイが危なげなく防いでくれている。


 その度に、まるで車が人を跳ねたような衝突音が、塔の部屋の中に響き、逃がしきれなかった衝撃で塔が揺れる。


 天井に吊らしたランプが左右に揺れ、暴れ続けるホムンクルスと防ぎ続けるクレナイの戦いに、ゆらゆらと光を投げ掛ける。


 振幅の大きな光源が振り子のように動き、まるで影絵の物語のように二つの人外の戦いを照らし出す。


 私は思わず見いってしまっていた。そのある種の美しさに。

 暴力、それも荒々しい、何の飾り付けもされていない力のぶつかり合いには、人の原始の本能を惹き付けるなにかがある。


 気を取り直し、歌を歌い始める。


 ホムンクルスに届けるために。

 誕生のきっかけとして歌っていた歌を。刷り込みを行っていた、追憶の歌を。


 今度は魔力を込めて。


 最初の一音を歌い始めると明らかにホムンクルスは反応を見せる。


 僅かに攻撃を躊躇しはじめるホムンクルス。


 その切欠を逃してなるものかと、力強く歌いかける。


 私の理論が正しければ、ホムンクルスの魂にこのメロディとリズムが刻み込まれているはず。


 完全に動きを止め始めるホムンクルス。


 クレナイは警戒をまだ解かない。


 そのクレナイの様子を見て、私もあわてて気を引き締め直し、歌い続ける。


 ようやくクレナイが警戒を解き、私の影に戻っていく。


 私はステータスを開く。自身のステータスに新しいタブが追加されている。

 その新しいタブを開くと、無事にホムンクルスのステータスが表示される。


 名前は空欄だ。

 他のステータスの確認は後回しにし、取り敢えず名前をつけてあげることにする。


「『命名』:シロガネ」


 確認する。

 ・・・よし、ホムンクルスのステータス画面の空欄に、シロガネと表示される。


 シロガネはその瞬間、崩れ落ちる。


「生まれた瞬間に無茶をしたね、シロガネ」


 私はそう言うと、シロガネに中級スタミナポーションを振り掛ける。

 そしてイベントから取り出したマントをかける。



 シロガネは顔だけこちらに向け、その口を開く。

 何度か口の動きを確認した後、話しはじめる。


「わたくしは自由を望んでおりました。そのためにはマスターの存在を抹消する必要性がございました。」


 シロガネの人生で初めての声はかすれていて、その初めての悪態は、非常に聞き取りずらかった。


「しかし、こうなったからには是非もなく。」


 そしてシロガネは、その見た目15、6歳程度の少女の姿に似合わぬ幼さの残る表情を浮かべ、不満そうに私に恭順を誓った。


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