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エピローグ 彼女の夢

 エピローグ

 

「昨夜の事です、身元不明の男性の遺体がXX市の海岸に打ち上げられているのが見つかりました。遺体の損傷が激しく県警は三日前から捜索願を出されている行方不明の二宮ナツさん十六歳として身元を調査しています。何らかの形で海に落ちたと見え事件事故共に関係を調べています」

 

 アナウンサーが夕方のニュースを告げていた。

 

 二年後――。 


「先輩やりましたっ! 優勝しましたっ」

「やだ、もう私は先輩って呼ばれるほどの人じゃないのよ。茜部長」

「学校を卒業しても先輩は先輩です、何年先も同じなんですからっ」


 私は会場の外で待ってくれていた押切先輩の胸へと飛び込む、先輩は高校卒業後体育大学へ進学し、今では教師の資格を取る為に勉強している。時間が空くと私の練習に付き合ってくれていた。先輩の夢は教師になり自分の高飛びを次の世代に教えたいとの事だ。忙しい中、私の応援に来てくれたのだ。

 先輩が見ているそれだけで勇気を貰った気がした、結果はなんと192cmも飛ぶ事が出来、二年前の不甲斐なさをのしをつけて返した気分だ。

 

「でも……一年の時に二宮君が亡くなって落ち込んでいた私を励ましてくれたのは先輩ですし……」

「彼、自分の記録に悩んで居たものね。部員の悩みも解決できない無能な部長だったわ……」


 一瞬暗い顔をする先輩、あの時はイジメは無かったかなど学校全体で大騒ぎが起こった。あわや陸上部、ううん。高飛び部のほうは廃部までなりかけた、でもそれを回避するように皆で頑張ったのが思い出される。

 彼の事は好きだった、かもしれない。須藤・・先輩から彼がSNSをしたいって聞いたけど私は得意じゃないから彼にメールアドレスを渡した。これで私にも彼氏が出来たのかと喜んだのだけどメールが来る前に直ぐに亡くなってしまったので、この気持ちは今だに良く解からない。

 解かるのは『彼の事を少しでも思ったのなら高飛びで記録に残して忘れないようにしなさい』と叱咤してくれた先輩の言葉である。私が高飛びを続ける限り彼の事は忘れないだろう。


「違います。部長は頑張りました。だから今の私があるんです、これからも指導してください」

「もう。貴方があるのは私の力じゃないって二年前に言わなかったかしら? 次はインターハイよ気持ちを切り替えていくわよっ、そうねぇあと15cmは高く跳べるようにしまようか」

「15cmって随分高い目標ですけど、意味はあるんですか?」

 

 とてつもない高い目標に驚き先輩を見ると、その口元は微笑んでいる。


「さぁね。さっ取りあえずは祝勝会よ今日ぐらいは私のおごりよっ」

「もー、何時も先輩におごってもらってますよー」


 私の叫びも聞かず軽やかに進む先輩の後を必死に追いかけた。


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