俺、後輩の成長に感激する
神崎と熊谷を会わせるのは少々デメリットが大きいと思っていた。
恥ずかしがり屋の熊谷は何度も会うことで、ようやくこの飯仲間に俺を入れてくれた。
そんな中、初めて会う神崎を警戒してしまうのではないのか、と。
しかし、それは杞憂でしかなかった。
「へ~俺と同じ、第2中か~社会の山崎ってわかる?」
「え、えっと、あのしゃべり方の特徴的な…」
「そーそー!俺らの時、あの人が担任で…」
熊谷は俺の想像以上のフレンドリーさで神崎と思い出話に話を咲かせていた。
人見知りや恥ずかしがり屋なところが少し治ったということか。
食わえた米は感涙の味がした。つまり、塩だ。
最近はタッパーに敷き詰められていて、端に申し訳程度のたくわんがついたオリジナル弁当と貸している。
正直………もっとおかずに自由度をください…。
「たくわん、も~らいっ!」
「あ、お前っ!」
俺の唯一のおかずは神崎の口の中へ消えていった。
「お、お前…俺のたくわんを…」
「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇし」
「減ってるよ!むしろ、無くなってるよ!」
「き、北川先輩。た、たくわん、お好きなんですか?」
俺と神崎の口論を見て、熊谷が尋ねてきた。
「え、あ~。うん。けっこう好きだぞ」
「そ、そうですか……。次はたくわんお弁当にしよう」
んーなんだろう、たくわんお弁当って。すげーこわいなー。
白飯だけになったソレを見つめながら、俺は一つ妙策を思いついた。
「なぁ、神崎。この弁当、この子の手料理なんだけど食う?」
米を手料理と呼ぶのはいささか強引な気もするが、これで罠は張った。
まず、神崎が女子の手料理と聞いて喜ばないわけがない。
かつ、神崎創始はムカつくほどのナチュラルイケメンだ。きっと不味くても「うまい」というだろう。
そうすれば熊谷レストランの開店だ。
題して……「塩ご飯に神崎も巻き込もう作戦」である。
………こうゆうとこも、輪廻から影響されてるのかな。
「それじゃあ、遠慮なくいただくよ」
タッパーに箸が近づき、白米に触れそうになった…その時!
「だ、だ、ダメですー!」
熊谷が割って入ろう、としたが立ち止まって両腕を振り回した。
「えーと……何でだ?」
神崎がそう聞くと、彼女は言葉に迷いつつもこう呟いた。
「そ、それは、き、北川先輩の、と、と、特別なお弁当だから……」
その後、顔が耳まで真っ赤に変色する。
「あー、うん。なるほどな」
何か察したような神崎は俺と肩を組んで後ろを向いた。
「後で聞かせてもらうからな」
「は?何を?」
「大丈夫。わかってるって」
そう言うと背中をバンッと叩き。
「わりぃ。用事思い出したわ。邪魔したな」
とそれだけ残して去っていった。
何か誤解していたようだが…まぁ後でいいか。
「くまが、い!?」
「…………」
彼女の顔を見ると、オーバーヒートを起こしているようだった。
「だ、大丈夫か」
「……だ、だだだ、大丈夫でひゅっ!わ、わわわ私も、こここれでし、失礼しましゅっ!」
神崎に続いて暴走列車熊谷も転びそうになりながらも、見えなくなっていった。
「……………」
神崎はいいとして、俺が特別か……。
はっ!!
電撃が走ったように一つの回答に達した。
熊谷は俺に………依存しているっ!と。
最近何かと一緒にいることが増えたからなぁ。
でも、依存だと根本的な解決にはならない。
どうしたものかな。
(そこまでいくと、鈍感を通り越してバカですね)
そんな声が脳内で聞こえた気がした。
「さて、俺も戻るかな」
あくびを漏らしながら、通路へ向かっていた。
なんら変わらない空気感の昼。
(一……ニ……三……四……)
不穏なカウントが耳元に聞こえる。
ん?何の音だ?
その思考が追い付く前に、俺の首を前に引っ張られた。
「が……な………」
同時に後頭部に痛烈な打撃が俺を襲った。
半目の瞳には制服のスカートが写って。
それ以降の思考が止まった――――。




