俺、ねじ曲がった時間は静かを増していく
8月13日。
我が高校の登校日である。
正直、何故、夏休み中間の日に登校する必要があるのだろうか。
まるでわからない。
『行きたくなかったら行くな。休め。惰眠を貪れ』
とは俺の姉の言葉である。
※勿論、姉さんは今日、サボります。
しかし、堕落した姉を持つと、逆に反面教師的な効果が受ける。
こんな人間にはなりたくはないな…、と。
というわけで夏祭り以来の外出を試みた。
「……あちぃ……」
外は想像以上の猛暑であった。
コンクリートとは熱を持っていて、何処からか聞こえるセミの声がその空間を包んでいた。
何台もの車が俺を追い越して、そのときに吹くちょっとした熱風がまとわりついた。
暑い。アホ暑い。暑すぎて気が狂いそ
「ちょっと北川先輩。暑い暑い言うのやめてくれませんか?こっちまで暑くなるんですが」
半袖の夏服にミニスカートを履いた彼女、春日井輪廻が愚痴を吐いた。
「お前、日光浴びないから暑くないだろ、別に口で出してないし」
「言ってました。漏れてました」
「絶対に言ってねぇ」
「ぜったい言いました」
「………」
俺は話した覚えはないが、もしかするとこちらの感情も輪廻に移っているのかもしれない。
何より、こんな下らない問答に残り少ない体力を削られたくはない。
こうゆう日に限って、交差点で赤信号を引く俺である。
目の前を車が通過していく様子を呆然と見ていた。
『私の未練は…』
「……」
この前の夏祭り以降、輪廻は少し変わった。
「…何ですか、先輩。人の顔をジロジロ見て。背中を押して事故死させますよ」
一つは妙に理不尽が過ぎること。いや、まぁこれは最初からだが最近はささくれているというか、尖っているという発言が以前にもまして増えた。
もう一つは。
「まったく。私の顔を見るぐらいだったら、秋ちゃんの顔に見とれててくださいよ」
もう一つは、やけに熊谷の名前を出すようになった。
おそらく夏祭りのあの一件が問題なのだが、俺にはいまいち輪廻の思考が掴めずにいた。
何故、今、思い立ったように熊谷を幸せにしようとしているのか。
いや、それが本心でない、ということは熊谷が幸せになることを望んでいない?
自分でも何を考えてるのかよくわからなくなる。
ちなみに姫ヶ岳の件はまだ内緒だ。もう勘づいている気もするが。
「…せんぱい?きたがわせんぱい!」
「ん?」
「もうとっくに変わってますよ、信号」
「あ、あぁ。そうか」
「どうしたんですか?暑さで脳がダメになりましたか?なら、オークションで売るんでこちらにサインを」
「誰がするか」
変わらない日常は変わっていくのが当たり前で、青信号は赤く変色した。
歪に進む時間は綻び始めていた。




