俺、幸せと決意を天秤にかける
それから十数分程度。熊谷が目を覚ますまでの間、俺は石段に座っていた。
手を握られていたこともあったが、思った以上に握力が強く、ガッシリと捕まれていたので動けなかった。
「ふぁぁ……」
大きなあくびと共に目が覚める。
「……え、えっと、き、北川先輩が何でこんなところに……」
前後の記憶が全くないらしい。さらに彼女の腹から小さく音が聞こえた。
「……!!ち、違うんです!これは、えっと、その、お、おならです!」
そっちのほうが恥ずかしくないか?と思ったがさすがの天然娘である。
「んじゃたこ焼きでも食うかな」
と、財布を開いたとき、俺はあるものがないことに気がついた。
別に金が抜かれてたとかそうゆうのじゃない。
いつもならここらで「私の分も」とか「鰹節増し増しで」とか言ってくるはずの輪廻が何処にもいなかった。
首に繋がった鎖があるので探すのは容易いが、何故だろうか。
何か取り返しのつかないことが水面下で起きている気がした。
「悪い、熊谷。さっきの店で忘れ物したみたいなんだ。ここで待っててくれ」
「そ、それなら私も」
「大丈夫だって。すぐ戻るから」
そう言って俺は繋いでた手を離し、鎖の先の彼女の元へ向かった。
人混みが多くなり、視界も悪くなっていく。
もし、輪廻が何処かで待っているとしたら見つけるのは簡単なことだ。
ただ、あくまでも仮定だが俺から逃げているとしたらきっと困難を極める。
あっちは幽体。俺は人の身。
障害物を無視できる輪廻に敵うはずがない。
「くそっ!何処だ!」
なぜ、こんなにも焦っているのかは俺もわからない。
ただ、心の中に不安だけが募っていく。
額から出る汗はほとんど冷や汗だろう。
(何処だ、輪廻!)
心の声を叫んでも一向に見つかる気配がない。
そんな時である。
俺の服の裾を誰かが握った。
もしかして。
「りん」
「残念~幽霊さんじゃないのですね~」
「……佐々木コンビと一緒じゃなかったのか、お前」
「お爺様が手を貸してほしい~って言ってきたので私はそろそろいくのですね~」
「そうか。大変だな」
「あとあの二人のテンションに会わせるのは、しんどかったとも言っておきますね…」
心中お察しします。
「それじゃあ俺はこれで」
「はい、スト~プ!」
姫ヶ岳が服の裾を引っ張り、俺の歩みを止めた。
「北川くんは~天然なのですか~?それとも~ただ記憶力が乏しいのですか~?」
「………そうだったな」
「ええ。シンキングタイムはしゅ~りょ~。答えを聞かせてほしいですね~」
屋台の裏側。遠くからはやんややんやと騒がしい声が聞こえる。
「こんな場所じゃなくてもよかったんじゃないか?」
「何時、何処で、誰が見て聞いているかわからないものなのですね~」
そう言いながら姫ヶ岳は一度視線を落とす。
「さあ、お返事を聞きたいのですね~Yesか、Noか」
「………俺は」
月明かりに照らされて俺は口を開いた。




