俺、馬鹿は風邪をなんたらっというのは迷信のようだ
「おっはよ~、真人~」
「『こんにちは』と『こんばんは』を間違えるのならわかるが、『おはよう』と『こんばんは』は間違えんだろ」
「いや~、それほどでも」
「一応、言っとくが誉めてないからな」
日曜日。夏祭り当日。
当初の予定は俺と輪廻、あとは成り行きで熊谷だったが情報が熊谷経由で流れたらしく、結局いつもの面子➕姫ヶ岳で行くこととなった。
それで俺は輪廻と早めに合流場所で残りの連中を待っていた。
チラリと横目で輪廻のほうを見る。
薄いピンクの浴衣、肌白と黒い髪が対比して何時にも増して可愛い…というか綺麗というか…。
「ねー?真人ー?」
「五月蝿い。それより相方はどうした」
「あいかた?」
「……もういっぽうのほう」
「あー光ちゃんね!なんか女の子は時間がかかるんだって!」
「ふーん」
ヒカルは短パン、半袖で正に健康優良児そのものだ。
それからしばらくして。
「待たせたわね」
現れたのは上下ジャージの佐々木と、この前買った浴衣に身を包んだ熊谷だった。
ふむ……。横に並ぶと差がはっきりわかるな。
「うわぁ」
隣で輪廻も言葉を溢す。
「何だかとても馬鹿にされた気がするわ」
「気のせいだ」
そして、次に来たのは紫陽花の入った浴衣を纏った姫ヶ岳だ。
見るからに気合いが入っている。
「お待たせしたのですね~」
「ゲッ。この雌も来るんですか」
「あたりまえだろ。姫ヶ岳から誘ってもらったんだから」
あとは神崎だけかと確認した時、誰かの着信音が鳴った。
『べ、別に電話じゃないんだからね!べ、別に電話じゃないんだからね!べ、別に』
「はい、佐々木です」
「……………」
このところ、佐々木がツッコミ放棄してると思うのは俺だけか……。
「まぁ神崎先輩さえ来てもらえたらオールOKですね。無駄に乳房に栄養がいってる雌が空気を濁してますが」
「はぁ~最近、肩凝りがひどいのですね~ホント、
胸の小さい方は羨ましいのですね~」
「コロス」
「落ち着け」
姫ヶ岳も見えない体なのに煽ってるんじゃないよ。あ、コラ。ちゃんとこっち見なさい。
「ええ、わかったわ。お大事にね」
席を外していた佐々木が電話を切る。
「では行きましょうか」
「ん?神崎がまだ来てないぞ」
「さっき電話があって神崎君。急な発熱で来れないって」
多くの屋台が立ち並ぶ中、俺らは6人で歩いていた。
にしても。
「……そもそも何で佐々木先輩が神崎先輩の電話番号知ってるんですかね。もしかして狙ってるんですかね。ここに来てまさか乱入体制に………」
「………ふふふ~…どうしましょう、どうしましょう。気晴らしにすれ違ったカップルを呪うのはどうでしょう。いいですね~そうするのですね~…ふふふ」
「…………」
怖い。隣の二人から不穏な発言とオーラが溢れてるんだが……。
「り、輪廻!金魚すくいやるか?」
「…アレ、そこそこ難易度高いんですよね。取った金魚は家に帰ってどうしようもなくなって、結局、他人に押し付けるのが関の山ですしね」
「…。ひ、姫ヶ岳!あそこで綿菓子売ってるぞ、食うか?」
「…わたがしって~食べ始めは美味しいんですけど、思った以上に量が多くて、徐々に甘さに飽きてきて食べきれないからやめとくのですね~」
「……。輪廻、お面でも買うか?」
「高校生でお面ですか。いや、いいんじゃないですか、うん。私は透けるから出来ませんけど」
「………。姫ヶ岳。じゃあかきごお」
「あ、知ってますか~?かき氷の味って~染料が違うだけで全部一緒なんですね~」
「…………」
この現代っ子め。せっかく俺の方から珍しく金だそうって言ってるのに…。
まぁ神崎がいなくて落ち込むのはわかるが、今日のメインは俺だろう。
「北川先輩がお金を出すのはあたりまえです」
「私にとって~神崎君はメインもサブもないのですね~」
「……………」
エスパー二人が怖いので俺は黙って無心で歩き続けた。




