俺、幽霊の策にハメられる
うちの学校の校庭には小さなサッカーのコートみたいなのが設置されている。
そこは運動部などの体力の有り余った連中が退屈しのぎにくるようなところで、帰宅部日陰男子の俺とは無縁の場所だ。
だから実際にその輪の中に入るのはさすがに気恥ずかしく、俺と春日井(幽霊)は影でこっそりと見ていた。
「ほら、神崎先輩ですよ!」
声を荒くする春日井の指した方向では、神崎がゴールへシュートを決めていた。
「か、カッコいい~!」
そんな神崎のプレイを見て彼女は陶酔しきっている様子だった。
…まぁ神崎がカッコいいことは認めますよ。
けど、昼休みなのに、ベンチに数名、女子が見にきているのはさすがにどうかと思う日陰男子の俺である。
「……何なんですかね、あの人たち」
さっきの陶酔していた時とは打って変わって、まるで妬むように彼女はコートの方を見ていた。
「誰のこと言っているんだ?」
「あの人たちですよ、ベンチに座ってる。今、昼休みなのによっぽど暇なんですかね」
「いや、お前も同類だろうが」
一片、鏡見てこいと言おうとしたが、幽霊なので鏡に写らない可能性があるのでやめておいた。
「あ、いいこと思いつきました。北川先輩、首輪の左側のとこ触ってみてください」
「なんだと、いいことって…」
「まぁまぁ何だっていいじゃないですか~とりあえず騙されたと思って触ってみてくださいよ~」
春日井があんまりひつこいので言われるがままに左側を触れると二つほど小さな凸凹があった。
「それの上の方を押してみてください」
「こうか?」
言うとおり凸凹の上の方を押すと俺らを繋いでいた半透明の鎖が掃除機のコードのように巻き取られていった。
「そのままずっと押して、あと目をつぶってください」
鎖は徐々に短くなり、ピンっと張るようになると彼女ごと首輪同士がくっつき、俺たちは背中合わせの形になる。
ゆっくりと目を閉じると微かに聞こえてきたのはどちらかの鼓動の音だ。
「はい!オーケーです!」
「……まったく、何が変わったってん、だ!?」
目を開くとそこには先ほどまで見ていたコート、ではなくよく見ている、白い校舎の壁だった。
ガバッと後ろを振り返ると、そこにいたのは首輪からジャラジャラと鎖を出す春日井、ではなく北川真人、つまり俺がいた。
とっさに肩やら顔やらを触ってみると妙にプニプニしていて俺の体の感触ではない。
ニヤける目の前の俺の顔。変わった体の感触。
そこから導き出される答えは1つ……!
「『入れ替わり』成功!やっほーい!」
「あ!ちょ、俺、じゃねえ、とにかく待ちやがれ!」
俺(春日井)はそのままコートのほうへ直行し、俺も後追いかけてみるが…。
「くそっ!足が短くて走りづれぇ!」
まるで長いブーツでも履いているような感覚だ。
そんな状態で追いつけるわけもなく、徐々に差が開いていった。




