俺、彼女の誤解を解きたいが
「……先輩。人の部屋に入るときはノックしてって何度も言ってるじゃないですか」
「ここは俺の部屋だと何度も言ってるだろ」
床でゴロゴロする輪廻を横目に俺は(俺の)部屋に入った。
「それで?ケダモノ先輩はいったい何のお勉強をしてたんですか?」
「待て。一旦落ち着け。それは誤解なんだ」
「嫌です。…あなたとはうまくやっていける気がしません。さようなら」
「何処の昼ドラだよ」
「おっと話がすりかわるところでした。さすがですね、先輩」
「俺の記憶が正しければ最初にボケたのはお前だ」
「私の記憶が正しければ今日の朝ごはんは目玉焼きでした」
「違う。俺が作ったカレーの残りだ。じゃなくて」
さっきから足踏みばっかで話が全く進まない。
なんなんだ?今日の輪廻のテンションは。
感情的になってるというか、考えた言葉をそのまま言ってるというか。(まぁいつも言ってるが)
やけに直球的な嫌味、というかボケが多い。
「それで私が何を誤解してるというんですか、ケダモノ先輩?」
「俺の名前がケダモノ先輩になってる件についてだ」
「あ、つい心の声が口に」
「お前、心のなかでケダモノ先輩って呼んでたのかよ!」
それはちょっと傷付くぞ。
「はいはい。では本題に入るとして、あの雌の声にはどんな理由があったんですか?」
「…マッサージだよ。勉強教えてもらう代わりにな」
急に本題がきたが、俺はあらかじめ用意していた理由で応えた。
ただ、これだけで引き下がるわけもないし、本番はむしろここか。
「へー、そうですか」
「…………ん?」
……あれ?思った以上に納得している様子。
「やけに聞き分けがいいな。変なものでも食ったか?」
「変なものといったら、今朝のカレーですかね」
おい。それどうゆうことだよ。
「ま、ヘタレで甲斐性なしな先輩が何かするわけもありませんし。マッサージ一回で手を打ちますよ」
おい。俺はヘタレで甲斐性なしじゃない。保守的で悲観的主義なだけだ。
あとしれっとマッサージ足すな。
と色々ツッコミたかったが、誤解よりマシかと妥協して、最近まったく使っていないベットの上に座った。
「先輩。人のベットに勝手に座らないでって、ん?何ですか、これ?」
輪廻は転がるのをやめて、足元に落ちたらチラシを眺めた。
「夏祭り?何ですか、先輩。どうゆう風の吹き回しですか。やっぱり今朝のカレーに何か」
「違うわ。姫ヶ岳からさっきもらったんだよ」
「先輩がですか?」
「他に誰にやるんだよ」
「……なるほど。あの雌もたまにはいいことしますね」
その時、輪廻の頭から正解したような音が鳴った気がした。
「先輩、いいこと思い付きました。明日、デパートにいきましょう」
「おいおい。何がどうなったらそこまで飛躍する?」
「だって先輩、夏祭りですよ?フェスティバルですよ?そんな時にダサいジャージなんて私が許すわけないじゃないですか」
「なんだその、その上から過ぎて天につきそうな目線は」
何だかんだ抵抗を試みるも、結局はデパートに行くことになる、いつもの俺であった。




