俺、平和な夏休みライフは揺れる
8月。
小中高夏休みシーズンである。
俺らの通う高校も例外ではなく、今現在の俺は。
「…至極快適」
冷房の利いた素晴らしいリビングで、ソファーの上でアイスを食べるという最高な夏休みライフを送っていた。
やっぱり夏休みといえばこれだな、うん。
無駄に体を転がしていると壁の奥からぬるりと少女が現れた。
「先輩……暇です。どっか連れてってくださいよ」
小学生のようなことを言っているのは俺にとりついている幽霊少女、春日井輪廻である。
ちなみに輪廻は最近、家にいるときは体操服みたいな短パンと真っ白Tシャツだ。
まぁ暑さは感じないらしいからイメチェンみたいなものだが。
「無理だ。他をあたりなさい」
と話を戻して父親風にツッコむ。
「えー。いいじゃないですかー。せっかく夏なんですから海とかスイカ割りとか神崎先輩観察日記とか、夏っぽいことしましょうよ~」
「最後のは年中無休じゃねぇか」
輪廻が俺の体を揺すってねだり始めた時。
「ピンポーン」
俺の家のチャイムが鳴った。
「あ!もしかしたら神崎先輩が遊びに来たのかもしれませんね!見てきます!」
輪廻は壁をすり抜け、玄関へ向かったようだ。
……現在昼の一時。こんな蒸し暑いなかそこそこ遠い俺の家にわざわざ神崎がくるか?
アイスのハズレ棒を捨てた後、俺は玄関のドアを開いた。
やかましいセミの声とムッとする熱気。
その中に日傘を刺して彼女はそこにいた。
涼しげな色のワンピースを身に纏った、桃色髪の少女。
「ふふふ。一週間ぶりですね~北川くん~」
姫ヶ岳夏希は陽炎のなかで笑みを浮かべていた。
「お邪魔するのですね~」
「……あぁ」
とりあえず外は暑いのでリビングへ通す。
「北川先輩。いつ、この雌と知り合ったんですか?」
「…まぁ色々あったんだよ、色々」
「へー、そうですか。ふーん」
明らかに納得いっていないような返事をする。
然し、これは輪廻には言えないことで――――。
体育祭終わったあと。
「もし協力してくれたら~あなたに憑いてる幽霊ぐらいは祓ってもいいのですね~」
「………え?」
30秒ほどの沈黙。
「お、お前、輪廻のことが見えるのか!?」
「背中に背負っている幽霊のことを言っているならはいなのですね~」
……俺は驚愕した。俺以外で見えるヤツがいたとは。それも。
「祓うことが出来るのか、幽霊を」
「それもはいですね~私のお家の神社に祓いの札はいっぱいあるのですね~」
ふわふわと浮き沈みする口調は俺の核心へと迫ってくる。
「もし協力してくれたら~明日にでも成仏は可能なのですね~」
「……少し考えさせてくれないか」
「はい~。気長に待つのですね~」
体育祭の後、桃色の少女は俺に新しい選択肢を残していった。




