私、第1回対北川先輩作戦を決行します
「うぅ…どうしましょう」
私はただうなり声を溢しながら中庭へ続く通路を歩いていた。
セミが喧しく鳴いている
―――――。
「どどど、どうして、先輩の、すすす、好きな人聞かなひゃいけないんですか!」
あまりの動揺に噛みつつも、私は精一杯声を上げてツッコミみました。
「面白そうだから」
「………」
…。私の知っている佐々木先輩はこんなにお笑いに固執してませんでした。
「でも、聞くことが出来たら熊谷さんに取ってはいようがいまいがプラスになるのよ」
「…えっと、ど、どうゆう意味ですか?」
「いなかったら突撃可能性だし、いたらいたでその人を真似れば北川君の理想の女性近づくじゃない?」
「………確かにそうですね」
「そう決まればゴー!ゴー!」
「え、あ、ちょっと、ま!」
――――――。
中庭の木の影からいつもの石階段をそろ~りと見ると、北川先輩が座っていました。
そういえば体育祭の時、あそこで膝枕を……。
そこで思考が止まり、頭がグワングワンなってきました。
収まるまで物影に隠れます。
……うぅ、こんなんじゃ聞けっこないよぉ。
再度先輩の方を見ると、いつもなら独り言を言っているのに今日は何か思い耽った表情でした。
「せせせ、先輩…おおお、お待たせしました…」
「……ん?あ、おう」
どうやらさっきまで上の空だったようで、曖昧な返事でした。
私は先輩と同じ段の端に座って、鞄からタッパーを取り出します。
「…え、えっと。どうぞ」
「ああ。いつもありがとな」
北川先輩は、私が作ったおにぎりを一つ掴んでかじりつきました。
やっぱり男の人はいっぱい食べるだろうし、最近は量多めで作ってます。
一口、一口味わうように…先輩はおにぎりを食べていました。
そんな先輩の横顔を私は凝視してしまいます。
ただ、北川先輩の目線は遠くの方を見つめていました。
騒々しく鳴くセミ。何処かから聞こえる男子生徒の声。北川先輩の額から流れる汗。頬に付いたご飯粒…。
「先輩って好きな人、いるんですか?」
………ほあああああああ!?
思わず飛び出た自分の言葉に、遅れて心の中で絶句しました。
ななな、何聞いてるの私!?もし、いたらどうするの!?
でもいなかったら…嬉しいな、じゃなくて!!
自己嫌悪に陥ってる中、北川先輩は食べる手を止めて周りを確認したあと、こう応えました。
「ああ。いるよ」
…………しゅ~。
私の心から空気が漏れたような音が聞こえました。
「……因みに何年生ですか?」
昇天しつつも佐々木先輩に言われた通り詮索してみました。
まぁ三年生だと思いますが…。男の人って大人っぽい人がいいって言うし…。で、でも私も同級生の中では、ば、バストは大きいって言われるし、まだ頑張れば。
しかし、返ってきたのは想定外の解答で。
「……一年生だよ」
………………ほあああああああ!(2回目)
せせせ、先輩が好きな人が一年生!?わ、私が撮ってる中で一年生と話してる写真はなかったから、つつつ、つまり、わわわわ。
「…おい、大丈夫か。熊谷?」
「ワワワワワワワワワ」
「お、おい!」
私は熱中症で倒れました。
なので後のことは覚えていませんが、少し気がかりだったのは、先輩が好きな人を言うとき、いつもの眠たそうな瞳に雲がかかった気がしました。




