俺、狂った体育祭の幕が降り、そして
かくして、今年の体育祭は組別対抗リレーによって青組が逆転勝利を収めた。黄組は姉さんを中心に何やら青春していたが 、めんどくさそうなのでスルー。
あと、鞄の中に注射器が入ってたので中身だけその辺の草むらに捨てておいた。
そして。
「はぁ。テント片付けが優勝したチームってどうゆうことだよ」
「北川君。口じゃなくて親指を動かしなさい、親指を」
「親指で何しろと」
「いいね」
「やかましいわ」
キリッとした表情で親指を立てた佐々木にしっかりツッコミを入れる。
「真人~言われた通り石灰持ってきたよ~」
「…お前は今から体育祭でもする気か?そんなもん俺は頼んでねぇ」
カラカラと石灰を持ってきたヒカルをさっさと押し返す。
「やれやれ。佐々木劇団の相手も楽じゃないぜ」
「誰が佐々木劇団だ!」
「誰が佐々木劇団よ!」
と、お決まりのハモりツッコミが夕焼けの空に高く響いた。
テントの片付けが終了し、体育祭の影は跡形もなく消え去る。
青組だったメンバーもバラバラと散って帰宅し始める。
俺はとりあえず目の前の。
「すやすや」
眠ってしまった幽霊を背負った。
今日は席でごろごろしてただけに見えたがずいぶんと疲れていたみたいだ。
輪廻は眠りながらギュッと握り、寝言をこぼした。
「私は…忘れられても…だいじょーぶだから…」
「………」
俺は輪廻を背負ったまま、いつも変わらない校庭を見て。
「忘れないよ。俺は絶対にお前を忘れない」
ただ、そう呟いた。
帰り道。俺は同じ方向で帰る知り合いがいなかったので、いつも一人で(輪廻を合わせると二人)帰っているが、今日は思いも寄らない人物が待っていた。
「北川くんでしたよね~?方向一緒なので一緒に帰りましょう~」
まさかここで姫ヶ岳夏希が現れるなんて誰が予想できただろうか。
というか近所だったのか。全然知らなかった。
「でも何でまた急に帰ろうなんて言ったんだ?」
「帰り道なら~誰もいないと思ったのですね~」
掴み所のない口調で隣を歩く彼女は続けた。
「実は北川君に頼み事があるのですね~」
「頼み事?」
「はい~私~神崎君、神崎創始君のことが好きなのですね~」
「お、おう」
何だ、その唐突なカミングアウトは。あと「ですね~」は口癖なのか?
「けど、神崎君はど!が付くほど鈍感だから困ってるのですね…」
「…なるほど、それで?」
「だから、北川君には~私のアプローチのお手伝ってほしいのですね~」
…面倒そうな匂いしかしないな。
「あ、今、面倒とか思ってるのですね~」
…図星である。
「で、でもそれやって俺にメリットあるのか?」
しどろもどろになりつつも発した言葉に、彼女は思いがけない返答をした。
「もし協力してくれたら~あなたに憑いてる幽霊ぐらいは祓ってもいいのですね~」
「………え?」
優しそうな笑みを浮かべる姫ヶ岳に対し、俺は硬直せざる得なかった。




