俺、変人たちを俺の策にハメる
『さあ!第1走者がスタート、おおっとこれは!?』
アナウンスの実況の声により、観衆の注目が一点に集まる。
『黄組が赤組の足を引っ掻けたぁ!今のは反則ではないでしょうか、解説の北川さん?』
『セーフだな。勝つために手段を選ばないのは至極当然なこと』
『審議を仰ぐ人間違えたぁ!現在、トップは青組、少し開いて黄組、赤組と続きます!』
『……』
『おや、どうなさいましたか、北川さん?』
『…いや、何でもない』
『おおっと!黄組!赤組にべったりとガードし抜けさせないぃ!』
『………』
どうやらテントの下の姉さんは気がついたようだ。まぁ今走ってる黄組の連中もわかってやっているのだろう。
黄組が赤組の邪魔をする。これで一番得するのは青組だと。
数分前――
「黄組の方々には赤組の妨害をしていただきたい」
「「「はぁ?」」」
言っている意味がわからんという顔で黄組の走者たちが俺を睨んだ。
「実は青組の千里駆がリタイアしましてね。このままじゃ赤組の独壇場になわけですよ。ですから協力していきたいんです」
「でも、それやって得するのはお前らだろ」
黄色いゼッケンのアンカーがそう言った。
「千里駆がいないのは確かにデカいが俺らが手助けして何かリターンがあるのか?せいぜい敵が減ってラッキーってことだ」
さすが頭脳派。ぐうの音も出ない正論だ。
…やれやれ。できればこれは言いたくなかったが。
俺は黄組に背を向けて、とっておきの切り札を切った。
「これは姉さんの指示です。聞かないならどうぞご自由に」
と、こうゆう感じで青と黄はチームプレーを発揮しているわけだ。
…我ながら悪どい作戦だな。輪廻のが移ったか?
俺が走る時にもその陣形は崩れておらず、青組、黄組、赤組だった。
前走者からバトンをもらい走り出す。
伊達に毎日輪廻を追いかけ追いかけられていたわけではないようで、心持ちか、少し速くなった気もする。
『ついに赤組が黄組を抜いたぁー!』
誰もいない前を見ながらアナウンスと歓声だけが耳に届いた。
さすが、神崎といったところか。想定内であるが。
ラスト直線。アンカーが思いっきり手を振っている。
よし、このまま一位を……。
俺はその時驚愕せざる得なかった。
いつの間にか横のレーンを走っている神崎の姿に。
神崎はラストスパートを切るようにグングンとペースを上げ、ついに。
『抜いたぁー!最終局面で赤組怒涛の走りを見せたぁー!』
………。
あぁかっこいいな。畜生。
俺の小細工も全部無駄で、はなから勝ち目がなかったようだ。
…ま、認めよう。帰宅部と運動部だし、俺には勝ち目なんてなかった。ただ。
俺は最後の力を振り絞り、アンカーへとバトンを繋げた。
今度はこの言葉の本来の意味で使おう。
リレーは個人の力じゃなくてチームプレーだ。
「行ってこい…ヒカル」
ゼッケンを着て走るヒカルは赤組のアンカーをぶっちぎりで走り抜けた。
…千里駆くん…。あれの二倍速とかレーシングカーかよ…。
『青組ゴール!優勝は青組です!』
ゴールしたヒカルが他の連中にもみくちゃにされるのを横目に幽霊の待つ席へ戻った。




