私、心中作戦その2と恋心を天秤に掛ける
中庭の石階段に寝ている彼を見て私はニヤリと笑った。
フフフ、最近はナリを潜めてましたがついにこの時がきましたね…。
第二回にして最終回!神崎先輩心中しよう大作戦!
修学旅行のときは北川先輩のいらぬお節介でおじゃんになってしまいましたが、今日はしっかりと注射器を私のと神崎先輩の二人分あるので大丈夫です。
水筒に入れておいた睡眠薬も効果抜群のようですし。あとは計画通りに…
そろりそろりと私は近づき、彼の首輪のボタンを押した。
ゆっくりと目を開き、辺りを見渡すと、横になっている中庭の風景に。
「シュ~」
煙を吐きながら私(北川先輩)に膝枕している親友の故障音が重なった。
起き上がって顔の前で手を振ってみる。気がついていない。
「お~い、熊谷~」
返事がない。ただの恋する乙女のようだ。
しょうがないのでぷにぷにとした頬っぺたを思いっきり引っ張る。
「いたいいたい~!ってあれ?先輩、もう大丈夫何ですか?」
「え、あ、あぁ」
しまった。いつものノリで秋ちゃんを起こしてしまった。
そのまま、普通に校庭へ向かえばよかったのに。
『二人三脚に出場する生徒は入場ゲートに集合してください』
アナウンスの声が中庭に響く。
「秋ち、熊谷。わた、俺次だから。じゃあな」
競技のほうは少しぐらい待ってくれるかもしれないが、『入れ替わり』は待ってくれない。
私はできるだけ時間をロスしないために駆け出した、が。
「ま、待ってください!」
親友が私(先輩)の腕を掴んだ。
「何です、だ?他に用事でもありま、っか?」
口癖を押さえようして、訳のわからない方言のようになったが、秋ちゃんは理解したようだった。そして。
「え、えっと…何故か、本当に何でかわからないですけど…せ、先輩がどっかに行ってしまうような気がして…」
「………」
「えへへ、変ですよね…でも、私は、もう、先輩までいなくなったら…」
親友は不安そうにうつむきかける。
彼女にとって北川先輩は唯一の心の支えなのだろう。私がいなくなったところを埋める唯一の…。
ああ、もう。そんなこと考え出したら。
「…心中なんて、出来るわけないじゃないですか…」
私は小さくそう呟き、首輪のボタンを押した。
『お前、あの子に対して優しすぎないか?』
前に北川先輩から言われた言葉だ。
けれど、しょうがないじゃないですか。世界でたった一人の親友なのだから。初めて私の言葉に耳を傾けてくれて、初めて私の思いに同調してくれて、初めて友達って言ってくれた彼女なのだから。
目をつぶる。視界が、世界が暗転する。
「ドサッ」と何かが倒れた音、その後故障音が続く。
もう心中はしない。彼女の想い人を殺すなんて出来ない。それじゃあ私はずっと成仏できない?
それでもいい。別にそれでも。
生きてる時にしてもらったように、今度は私が彼女の恋を応援するんだ。
私はそっと目を開き、再度故障気味の秋ちゃんに。
「頑張って」
と聞こえない声を告げた。




