俺、いい話が睡魔によって掻き消される
「ふぁ~」
「せ、先輩、ね、寝不足ですか?」
「ああ。さっきから妙にな」
太陽の照りが最も強い昼時。俺は涼みにいつもの石階段へ向かうといつもの先客がいた。
「というか親と食べなくてよかったのか?」
「え、は、はい。えっと、頑張ってこいって」
何を応援されたのだろう。
「えっと、その、どうぞ」
「おう、いつもありがとうな。えっと、アレだ。熊谷はいいお嫁さんになるよ、うん」
「そそそ、そんな!お嫁さんだなんて…」
赤面する熊谷の隣でこれまたいつものように岩塩を食らう。
最近、この塩っ気の多さに慣れてきて人間の適応能力の高さを思い知らされた。
そういえば。
「熊谷ってどうしてここでいつも昼飯食ってるんだ?」
「そ、それは……き、北川先輩が来てくれるから…です」
「あー質問の仕方が悪かったな。俺と会う前もここで食べてただろ?」
「それは……リンちゃんと初めて会った場所に似てるからでしょうか」
「初めて会った場所?」
「はい。私とリンちゃんは中学校からの知り合いなんですけど、ひとりぼっちで今みたいな木の下でおにぎり食べてた私に声を掛けてくれたんですよ…『おにぎり一個頂戴』って」
「………そうか」
「次の日も、その次の日も来てくれて、私のことを親友って言ってくれたんです」
「………うん」
「リンちゃんは恥ずかしがり屋の私を変えてくれて、今も恥ずかしがり屋ですけど…。それでもリンちゃんは私の親友で憧れでもあるんです。い、今の憧れの人は、ち、違うんですけど…」
「………」
「せ、先輩?だ、大丈夫ですか?」
「ん?あぁ、悪い悪い」
後半はよく聞いてなかったが、なるほど、いい話だ。…しかし、こに異様なまでの睡魔は何なのだろうか。
何か考えがまとまらないというか。視界がぼやけているというか。
頭の中のクラクラする。
「た、体調が悪いなら、よ、横になったほうがいいんじゃないですか?」
「…そうだな、うん……」
脱力して重力の赴くままに俺は横へと倒れた。
ちょうどいい高さの柔らかい何かの上に頭が乗った。
…いい寝心地だ。
何かが燃えてるようなシューという音が聞こえるがまぁ気にしない。
俺はただ、すっと眠りへ落ちていった。




