俺、今年は頭がおかしいのが多い気がする
体育祭当日。黄組テントにて――。
「副団長!こちらがプログラムです!」
子分っぽい人が今年の体育祭プログラムを親分っぽい人に渡す。
「な、何ぃ!?二人三脚にフォークダンスだと!?団長の会談は失敗したのか!?」
「そんな~」
「ぼ、ぼくたちの努力は…」
一人ずつうなだれ始める、その時だった。
「我が同胞たちよ、案ずるな!会談は成功している!」
絶望の淵に一筋の光が差し込む。
「あ、あなたは…北川団長!」
漆黒の髪を黄色のハチマキで束ねて、目はゾンビのように死んでいた彼女は、威風堂々とテントの中心部へと歩を進めた。
ちなみにこの学校に北川姓は二人しかいない。一人は二年B組の北川真人、もう一人は。
「パトリック・ヘンリーはこう言った。『自由を与えよ。然らずんば死を』と。自由というものは命と等しいぐらいの重いものなんだ」
北川真人の実の姉であり、三年学年首席 北川冬子である。
「そう理事長に問い詰めてみたところ、今年の体育祭で黄組が勝利できれば『あのこと』が正式に認められるらしい」
「ま、まさか本当にあのことが…」
「し、しかし今年の体育祭ってことは先輩たちは…」
「ふっ。次のお前たちの世代に私、いや私たちは贈り物をするだけさ。後輩に物を奢ってやるのは先輩として当然だろう?」
姉さんは俺にも見せたことのないような神々しい表情で子分っぽい人の肩をポンと叩いた。
「~北川団長!」
「一生付いていきます!」
「恩に報いるために絶対勝つぞー!」
活気づいていくを後押しするように姉さんは続ける。
「ウォルト・ディズニーは言った!『夢見ることができればそれを実現できる』と!私たちは今まさにスタートラインに立ったばかりだが、『あのこと』を達成するという共通の目的を持ち、勝利の栄冠を手に入れるのだ!」
「「「おおおおおおお!」」」
…さて。
「何してんだ、姉さん」
「ん?どうした、青き我が弟よ。カメラマンを連れて敵情視察か?」
「違うよ。ほら、姉さん水筒忘れてただろ」
「わ、私は、えっと、その、アルバムとかに使う写真を…」
「そうか、そうか。それは大義だったな。ゆっくりしていってくれ」
「いや、別にいいよ。これ渡しにきただけだし」
あと後ろの連中の目がやたら怖いし。
「そうか?まぁいい。競技が始まったら敵同士手加減は…せんぞ?」
「はいはい」
少年漫画のようなセリフを言う姉さんを軽くあしらい、俺達は敵意の目から脱した。
正直、体力ゴミ以下の姉さんが団長すると聞いた時は天変地異の前触れだと思ったが、何か裏があるようだ。
あの人は自分の脳ミソをマシな方向に使えないのだろうか。
俺はできれば雨になってほしかった快晴の青空をただ見上げた。




