俺、盗撮犯は友達という距離が苦手のようだ
「ええっと、その…色々ごめんなさい」
いつの間にか日が暮れていて、さすがに夜道を女子を帰らせる訳にもいかないので、俺は熊谷を送っていた。
「うーむ、熊谷。こういう時はごめんなさいじゃないぞ」
「えっと、…ありがとうございます?」
いやなんで疑問形なの。別にいいけど。
「と、ところで、その、か、紙袋を何でおぶってるんですか?」
「…こっちが軽い」
「な、なるほど…」
いくら熊谷とはいえ、肩に掛けたらいいものをわざわざ背負っているのだから不自然に感じるのも無理はない。
もちろん軽くなるわけないし、持ちやすいわけじゃない。むしろ持ちにくい。
これはあくまでカモフラージュだ。背中で寝息をたてているお嬢様を隠すための。
「すやすや」
やれやれ。さんざん人の体で泣いた後すぐ寝るとかお子様かよ。
「こどもじゃないです~」
「痛い!痛い!」
こ、こいつ。寝たまま俺の心読んだのかよ。いよいよ俺のハーフタイム無くなってきたじゃねぇか。
「ふふふ、北川先輩は面白いですね」
頬をさすっている俺に熊谷が初めて自然と話しかけてきた。
「あ!面白いっていうのは顔が面白いってわけじゃなくて。その、雰囲気とかお話とか面白いということで」
「うん、熊谷。多分、そのフォローいらない」
「え…。えっと、その、ご、ごめんなさい」
「…まぁ別にそれはいいが。盗撮は駄目だぞ。あんなのにも一応人権があるからな」
「……はい」
熊谷は若干うつむき、小さく頷いた。
しばらくして、俺達は少し大きめの一軒家、熊谷の家に着いた。
「そ、その先輩…ゆ、夕飯は」
「いいよ。どの道姉さんが何か作ってるだろうし」
何かと言ってもカップラーメンかカップ焼きそばなのだが。
もしかしたら変化球でカップのうどんかもしれない。どれでもいいけど。
「それじゃあまたな」
方向転換して歩き出そうとした時、クッと服の端を後ろから引っ張られた。
「せ、先輩。と、盗撮はいけないことですよね」
引き留めた少女は同意を求めるように問う。
「そうだな、盗撮は犯罪だ」
「じゃ、じゃあ、その、ちゅぎからは…つ、次からは」
噛んだところを訂正して彼女は再度同意を求めるように言った。
「次からは、き、北川先輩のことをと、隣で撮ってもいいですか?」
「………ん?」
イマイチ理解が追い付いていない俺なのだが、とりあえず。
「あぁ、変な写真じゃないならいつでもいいぞ」
背中越しにそう伝えると、服の先端から彼女は手を離して。
「……えっと、そそそその、おおおおおやすみなさいまし!」
と風のように自分の家へ入っていった。
「……」
さっきの質問の意味はわからなかったが、まぁ一件落着?のようだ。
「キザいですよ~、きたがわせんぱい~」
「いや、キザくないだろ」
俺は夜道で寝言にツッコんだ。
【三章 友の悩みと盗撮犯 END】




