俺、盗撮犯をお縄に掛ける
物陰に隠れていた人物は俺が意図的に近づいて来ていると気づいたようで、その場所にはいなかった。
しかし、これは想定内。
先に見つけていた輪廻が犯人を追い掛けているため、俺は彼女と繋がった鎖を頼りに後を追う。
だが、いくら物がすり抜けられるとしても鎖の長さにも限界がある。
故に俺が今取るべき行動は…。
ゴチャゴチャ考えずに最短距離を走る、だ!
少し高めの柵を乗り越えて、おそらく正規ルートではないだろう草木を掛けわけながら進んだ先は…!
「いらっしゃいませー」
「………」
学校近くのコンビニだった。
「あ、先輩。こっちですよ!」
角で身を潜めていた輪廻がこちらに手招きをする。
お前は隠れなくていいだろ、と思ったがどうせ雰囲気でやっているだろうしツッコまなかった。
「あれですよ。ホラ、今印刷機でカラー印刷してる」
見つからないようチラッと見ると、確かに怪しい服装の人物が印刷機の前にいる。
頭にはチューリップハット。目は緑色のサファー的なグラサン。口元はピンク色のマスクで見えず、どう考えても暑いであろうコートを着ていた。
首からはカメラをぶら下げていて、むしろ周りに自分が盗撮犯であるとアピールしているようにさえ思えてくる。
…これ程までに不振な格好をした人物を俺は見たことはない。
背丈は少し遠いためはっきりとはわからないが、多分輪廻と同じぐらいだろう。
印刷が終わって、こちらを振り向き、一瞬目があった気がした。
マズい。バレたか。
一歩一歩近づいて来ている盗撮犯と俺の鼓動がリンクしている。そして。
「ぎゃふ!」
目の前で盗撮犯は転けた。
「………」
まさかとは思いつつも、チューリップハットを取ると見覚えのある茶髪が出てきた。
「…お前だったのか、熊谷」
考えてもみれば簡単な話だった。
あの歩く鈍感こと神崎創始が盗撮されてると気づくなんぞ、その鈍感さが同等かそれ以上の杜撰な追跡に決まっている。
「えっと…北川先輩?でいいんですよね?」
「うん?ああ」
ザ・ラッパーな俺と輪廻はあの後、ザ・不審者な熊谷にとある場所へ連れられていた。
「そこに行けばお前がこんなことしていた理由がわかるんだな?」
「はい…。ちょっと口では言いにくいので…すみません」
いつも以上に小さな声で彼女はそう言った。
「…と、ところで先輩」
「何だ?」
「えっと、その、な、何のかは忘れましたが、ニュースの人みたいですね」
「………」
どうやらラッパーなキャスターは存在するようだ。
まぁ統計したのが天然二人だから0に等しいか。
「……」
「どうした、輪廻」
「あ、いえ、何でもありません」
「そうか?」
「そうです」
輪廻のこのときの顔は、雨上がりの空には似合わないとても感傷的な顔のような気がした。




