俺、いつもの日常は崩れるようだ
「眠い…。」
「久々に学校学校に来たと思ったらすぐこれだよ」
昼休み。新しい二年生の教室の机の上でふて寝している俺に隣の席の少年が声を掛けてきた。
コイツの名前は佐々木輝。クラスに一人はいたであろう馬鹿だけど運動できる奴の二年B組代表格だ。
俺は名前で「ヒカル」と呼んでいる。
何でわざわざこんなことを言うのかというと。
「…佐々木君、そこは私の席なんだけど」
「あ!ごめんね、光ちゃん!」
「…二年になったのだからちゃん付けはやめてくれないかしら」
ヒカルと入れ替わって座ったのが、こちらも一人はいたであろう口先のやたら上手い女子、佐々木光である。
別にこの二人は双子とか親戚とかそういったものではない。
たまたま近所に同じ佐々木姓の家があって、偶然小・中・高と同じクラスだっただけだ。
控えめにいって感嘆する程の偶然だが、俺は一年程度つるんできて、生活面で不便なことが多々あった。
そういうことで俺は男のほうを「ヒカル」、女のほうを「佐々木」と使い分けている。
「そういえば北川君、あなたテスト受けた?」
「テスト?」
「始業式の次の日にテストがあったのよ、ねぇ、佐々木君」
「え?そんなのあったっけ?」
「あったわよ、三教科」
「あー、そうそう。僕、その時寝てたんだった」
「…本気で留年するわよ、あなた」
「夫婦漫才なら他所でやってくれ」
「誰が夫婦漫才だ!」
「誰が夫婦漫才よ!」
と佐々木コンビお得意のハモりツッコミが炸裂する。
やれやれ、コイツらがいるせいか学年が一つ上がった上がった実感がまったく湧かない。
しかし、前の席の机で息を荒くしている幽霊の姿を見て、あの頃の平和な日常ではないことを思い出した。
「こ、これが神崎先輩の机ですか…ゆ、幽霊ですし触ってもバチは当たらないですよね?」
彼女は机に触れようとしたが、手が机をすり抜け、その後、大きく肩を落とした。
「……なあ」
「なんですか!これは私の机と椅子だから先輩は触らないでください!」
「いや、それは神崎の机と椅子だ。あと好き好んで触る気もねぇ」
厚手のコートを脱ぎ捨てて、うちの一年の制服姿になった少女は心なしか、若干、半泣きしているようだった。
また、今朝とは違い、少女の首もとには半透明の大きな首輪が付けられていた。
首輪にはこれまた半透明の鎖が付いており、その姿は飼い犬を彷彿とさせる。
可愛い少女が首輪付けているというこの絵面は色々問題がありそうだが、それより。
その鎖が繋がっているもう一つの首輪が俺、北川真人の首もとにも付いているこの状態に平和的生活が危険信号を示していた。




