俺、バカの前でピエロを演じる
数分後、というか輪廻が予想していた時間きっかりに神崎は現れた俺は作戦通りに、神崎が通る歩道で待ち伏せした。
俺の役目は神崎の足止めだ。
神崎と止めることができれば必然的に盗撮犯のほうも止まることになる。
その間に鎖を出来るだけ長くした輪廻が建物ガン無視の最短距離で盗撮犯を見つける、というのが俺達(まぁほぼ輪廻)が考えた作戦だ。
電柱にもたれ掛かり、指パッチンとタップを鳴らして、数世代前のラッパーを装う。
俺はラッパーだ、俺はラッパーだ、俺はラッパーだ。
神崎が目の前の歩道を通るまで自己暗示をかけ続ける。
あと数メートル…。3、2、1、Go!
「Yo!そこのニーチャン、暗い顔して何処に行くんだい?」
グラサン越しに神崎の顔を見ながら、予め考えていたセリフを言い放った。
「あー、家かな?」
「いや、俺に聞かれてもわかんないYo…」
「あれ?アンタ、俺とどっかで会ったことあるか?」
「ギクッ」
マズい。神崎の勘の良さが働き始めたか。
「お、俺は君のことなんて知らないYo」
「んー。あ!もしかして」
くっ。ここまでか。
「この前、テレビに出てた人か?」
…まさか、そうくるとは思わなかった。
誰と間違ってんだよ。今時、こんなコテコテのラッパー出ないだろ、テレビ。
と思ったが都合が良いので。
「そ、そうサ!この前、テレビの取材が来てたネ !」
乗っかってみた。
アドリブが過ぎて口調がラッパーというより中国人のようになる。
「お~!芸能人と会ったの初めてなんだよ!握手してもらってもいいか?」
そう言って、毎日一緒に駄弁ってる友人の手を強く握る。
「アンタの天気予報、毎朝見てるよ!」
「それニュースキャスターじゃねえかYo!」
ホントに誰と間違ってんだよ。何処の国にラップ刻むキャスターがいるんだよ。
えー。今日の天気は雨。お出かけの際は、マサカとは思いますが、カサをサカサで差さないようにしましょう、ってやかましいわ。
「あとあれもやってるよな、生中継!」
「だからそれキャスターじゃな」
ツッコミかけたとき、離れた所におる輪廻がこちらに大きく手を振った。
そう、これは怪しい人物を見つけた時のサインだ。
「悪いな神ざ、ニーチャン!グットラック!」
バックしながら別れを告げて、俺は輪廻の元へと急いだ。




