俺、熊谷秋奈の悩みを聞く
熊谷と知り合って数日後のある日。俺はいつものように昼休み、中庭にいる熊谷が作ってきた岩塩をかじっていた。
てか、日に日に塩が増えているように感じるのは気のせいか…。
「あ、あのホモ川先輩…わ、私の悩みを聞いてくれませんか?」
「…それは別に構わないが、俺はホモ川じゃない」
「え!ご、ごめんなさい!…えっとホモ何先輩でしたっけ?」
「何でホモのほうを残す。北川だよ、きたがわ」
「きたがわ先輩…。ちょ、ちょっと待っててください。メモしますので…」
人の名前をメモるとは、本当に几帳面な子だ。
ただ、俺は『北側』じゃなくて『北川』なのだが。
あともう一つ言うと『側』が『測』になっているのだが。
「えっと…あれ?な、何のは話でしたっけ?」
「…悩み」
「そ、そうでした!…こうゆうところなんですよね。私が友達出来ないのって…えへへ」
眉をひそめて愛想笑いをした彼女に少し心を痛める。
「…リンちゃんの代わりを探してるってわけじゃないんです…。ただ、私と心から共感してくれて、色んなとこに、色んな遊びに、引っ張ってくれる人がいて欲しいんです…。えへへ…何言ってるかわからないですよね」
俺に合わせるように笑う熊谷に、とりあえず俺は岩塩を食い終えてこう応えた。
「それじゃあ俺がなってやるよ、友達に」
いままで聞いてきた話じゃ輪廻以外に友達いなかったみたいだし。あんまり大勢でっていうタイプでもないだろ。
「休みの日にでもどっか行くか?俺も特別詳しいってわけじゃないからデパートとかで買い物とかになると思うが」
帰宅部だから土日は暇だしな。写真部がどうかは知らないが。
そんなことを考えていると熊谷は赤面し、うつむきながら。
「…えっと、き、北川先輩はと、友達というか、あお、その…」
…あれ?もしかして俺、地雷踏んだか?
どんな暗いエピソードがきていいように心の蓋を閉じ始める。
「あ!そそそ、そういえば私、次の時間た、体育でした!…えっと、そそ、そうゆうことなので…さようなら!」
彼女は頭から煙を出しながら、一目散に去っていった。
ふむ、どうやら地雷は踏んでなかっ。
「無駄にキザいですね、先輩」
「え?俺?」
石階段の上段にやけにひっそりと座っていた輪廻がようやく口を開いた。
「ええ。キザすぎて、悪寒がしました」
「そこまで言う!?」
「さっきの友達っていうのは同じクラスメイトとか同じ部活の部員とかを指すんですよ」
「…でも、お前以外に友達いなかったみ」
「あ、神崎先輩がいますよ」
「人の話ぐらい最後まで聞いてくれませんかね、輪廻さん」
そう言いつつも、指差す方向を見ると周りをキョロキョロと見渡す神崎がいた。
…ここ最近のあいつの行動はおかしい。
いや元から天然でおかしいところはあったが、そうゆう部類ではない。
まさかあの究極的な鈍感が治ったのではあるまいな。
「行ってみましょう、北川先輩」
手を引く輪廻に、俺はいつものように連れられ、神崎の元へ向かった。




