俺、不本意なあだ名が学校中に広がっているらしい
「えっと、2年のホモ川先輩ですよね?」
「……。」
純真そうな女子生徒を眼前に俺は困惑し、言葉を失った。
遡ること数分前。
いつものように通学していた俺だったが、俺を見る周りからの視線が少し違っていた。
よそよそしいというか、なんか避けてるみたいな…。
「なぁ、輪廻。俺の顔になんか付いてるか?」
そう俺が声をかけたのは長い髪に陶器のような白い肌、深紅の瞳の幽霊、春日井輪廻だ。
「そうですねー。あ、目が死んでます」
「それは先天性だからどうしようもないな」
違和感を抱きつつも教室へ向かっていると。
「あ、あのっ!」
背後から少し上ずった声に引き止められる。
振り返ってみるとそこには輪廻と同じぐらいの背丈の茶髪でショートヘヤな少女がいた。
その少女が次に発したのは。
「えっと、2年のホモ川先輩ですよね?」
「………」
数十秒の沈黙。
一年生女子の声が耳に届く。
「ヘタレ受け」「神崎×北川」「ホモが嫌いな女子はいない」
「…北川先輩。目だけじゃなくて顔も死んでますよ」
「その、も、もしかして、ひ、人違いしてますか!?」
「あー、いや。多分俺だろうけど…名前、誰に聞いた?」
挙動不審な彼女に対して、できるだけ冷静に問いかけた。
「わ、私が聞いたのは、さ、佐々木先輩です」
佐々木か…。まぁこんなちょっと考えられたボケはあっちの佐々木だな、うん。
「情報提供感謝する、では」
「あ、いえいえ、ど、どういたしまして…って、ちょっと待ってください、ホモ川先輩!」
「…俺の名前は北川だ。で、何か用か?」
「…えっと、いえ、やっぱりやめときます…」
「…?そうか?」
歯切れの悪い返事だったが俺はとりあえず最優先事項があったので掘り下げなかった。
「輪廻?どうした、行くぞ」
「え、あ、はい」
「ん?お前も珍しく歯切れ悪いな。伝染でもしたか?」
「えー。そうですかね」
いつになく適当に言葉を返した幽霊は何故かショートヘヤの少女を名残惜しそうに見つめていた。




