俺、幽霊少女と出会う
俺が目を覚ましたのは事件から三日もあとの夜だった。
最初に起き上がった時、あの姉さんから抱きつかれたのは驚いたものだ。
どうやらあのあと俺は気絶して、病院でずっと寝ていたらしい。
事故の原因は高齢者のブレーキとアクセルの間違いと姉さんから聞いた。
そして、たまたまその車が突っ込んだところに彼女がいたわけだ。
ちなみに彼女は....命を落としたらしい。
世界から見たらよくある話かもしれない。
だが、こうも簡単に命が消えていくものとは思っていなかった。
なにより彼女の横顔ろ血の色が脳裏に焼き付き、その夜はまったく眠ることができなかった。
次の日、いつもの通学路のあの十字路で俺は驚愕した。
確かに色々なところが普段とは違っていた。
赤と青と白が目まぐるしく回っていた床屋のポールは回っておらず、店内もまだ修理しきっていない様子だった。
いつも落ち葉ぐらいしか落ちてない歩道にも誰が置いたのか色とりどりの花束がいくつも置いてあった。
しかし、そんなことはどうでもいい。
あんな事故があったのだからこの程度の変化は別に驚きはしない。
変わった物には驚かなかった。むしろ変わってない物に驚いた。
この事故の一番の被害者で一番の中心で一番変わっていなければならない物、いや者がそこにいた。
あの日と同じ厚手のコートを見に纏い、黒色の髪をなびかせながら少女は佇んでいた。
正直、鳥肌が止まらなかった。
ただ俺は歩みを止めることはなかった。
もう一度あの日続きを――
徐々に近づいくと彼女が独り言を言っていることに気がつき、俺は我にかえった。
そうだ、あの子は死んだんだ。
もし、仮に、今ここにいるということはそれはいわゆるオカルト的なヤツで怨念とか恨みとかで成り立っているこいうことではないにだろうか。
となるとこの独り言も「恨めしや~」的な呪いの言葉ではないだろうか。
恐る恐る近づいていき、そして、コートの少女はこう言葉を発した。
「か、神崎先輩を毎日授業休んで拝めるなんて…!おなかもすきませんし、幽霊ライフも悪くないですね、じゅるり」
「ある意味怖いわ!」
あ、しまった。いつものノリでおもいっきりツッコんでしまった。
周りの人の視線がグサリグサリと刺さる。
痛い。むしろ、客観的に見て俺の行動がイタい。
俺は視線を回避するために下を見おろすと、そこには三日前に見た彼女が真っ赤な瞳で俺を見上げていた。
唖然としている俺に対して彼女は一言ずつしっかり聞き取れるようにこう言った。
「あなた、私のことが見えるんですか?」
俺は、今日、三日前に死んだ少女と出会った。
止まってしまった血色の初恋が歪な形で動き始める瞬間だった。




