俺、第二ラウンドに絶句する
理性と決闘すること一時間。
「つ、着いたか…。」
ようやく山の頂に到着した。
「こ、ここが頂上!?や、やっと……ふふふ、おっほっほっほ!」
何かの枷が外れたように高らかに笑い出す佐々木。
まぁあの中で一番体力ないのは佐々木だったから狂うのも無理はない。むしろ。
「ねぇねぇ、二人とも~!あっちで集まってるから早くいこうよ~」
「お前は少しぐらい嘘でも苦し、ゲホ!ゴホ!」
さすがに今の状態での全力ツッコミは辛いようだ。
とりあえず全員いるか頭数だけでも数えておくか。
俺、輪廻、佐々木、ヒカル。確か出発するときも四人だったし、全員いるか。
「ふあ~」
大きなあくびをしながら輪廻が起き上がる。
まだ寝足りないのか目をゴシゴシ擦っている。
「……あれ?神崎先輩は?」
「かんざきせんぱい?」
…ちょっと待て俺。理性と披露が暴走して混乱したか?
また同じように一人ずつ整理してみよう。
まず現在進行形で輪廻をおぶってる俺、狂って爆笑する佐々木、いつもと変わらないヒカル。
そして…消えた神崎。
「ああああああ!あの野郎、何処いきやがったあああ!」
辺りを見回して見るも神崎の姿は何処にもなかった。
くそっ!どうする?アイツのことだからどうせ戻ってくるだろうが…。
【修学旅行生、山の中で遭難】
思わず明日の新聞の見出しを予感してしまった。
「北川先輩!神崎先輩を探しに行きますよ!」
「痛い、痛い、痛い!ちぎれる、ちぎれる、ちぎれる!」
輪廻が思いっきり俺の両耳を引っ張る。
「早く引き返しましょう!怪我してたり迷子になってたらたいへんです!」
「……行かないと駄目か?」
「駄目です!だいたい、先輩がしっかりしてたらこんなことにはならなかったんですよ!」
「う…。」
それを言われるとぐうの音も出ない。
「は~や~く~!」
「痛い痛い!ああ、もうどうにでもなりやがれえええ!」
俺の叫び声がコングとなって、山登りの第二ラウンド鐘が高々と鳴り響いた。