プロローグ
かなり昔に書いた作品なので、最近投稿した作品に比べると拙い部分が多く目立つと思います。
「やっとテスト終わったぁーっ!」
「いつもながらこの開放感は最高ね、緑ちゃん」
五月も半ばを過ぎたある日の正午前、神戸市内に佇む私立橙陵女子中学校三年二組の教室で、魚田緑と花見小夏は喜びを分かち合っていた。
一学期中間テスト二日日、最後の教科終了後の出来事である。
緑は面長ぱっちり瞳。ほんのり栗色な髪をメロンのチャーム付きシュシュで二つ結びにし、肩より少し下くらいまで伸ばしている。
小夏は丸っこいお顔で広めのおでこ、濡れ羽色の髪をアジサイ柄リボンでポニーテールに束ねている。
そんな歳のわりにはあどけなく可愛らしい特徴を持つこの二人は幼馴染同士。中学では三年生になって初めて同じクラスになることが出来た。
他のクラスメート達も友達同士で集まって、わいわいがやがや騒いでいたところへ、
「皆さん、早く席に着いてね」
クラス担任の持丸先生がやって来る。彼女は英語科担当の、まだ二〇代半ばの若々しい女性教師。背丈は一五〇センチをほんのちょっと超えるくらいのやや小柄。ぱっちり瞳に丸顔。さらさらした濡れ羽色の髪はリボンなどで結わずごく自然な形で肩の辺りまで下ろしている。実年齢よりも十歳ほど若く見え、制服を着ていれば生徒達に紛れても違和感ないほどだ。
今から帰りのホームルームが行われる。持丸先生は学年だよりのプリントを配布した。見出しが二つあり、一つは学習面について。この学校は中高一貫教育が行われており、中学校を卒業すると併設されている高校へエスカレータ式に進学出来るため、ほとんどの生徒は高校受験への意識を全く持っていない。だからといって学業を怠けないようにという旨が記載されていた。
そしてもう一つは、六月上旬に三泊四日の日程で行われる修学旅行についてだった。