ご主人様とご対面…。
どうも、つい昨日、公爵家の皆さんの考えの軽さに驚き呆れた名無しの七歳児、男です。
皆さん、なんと今俺は…朝食を食べています!!
昨日旦那様(そう呼べと言われた)に「使用人専用の部屋があるからそこに住みなさい」と言われて自分の部屋があることにすら驚いたのに、朝食まで出してくれるなんて!
確かに俺がこの仕事を受けた理由の一つにまともな食事がしたいというのはあったが、正直俺は、ただの一使用人にそこまで面倒は見ないだろうと思っていた。せいぜい固いパンが出てくるのだろうと。
だがしかし!!公爵家の朝食は俺の期待を裏切ってくれた!いい意味で!
朝食の献立は、掌サイズの硬めのパンに、野菜とサイコロ状にカットされた肉が入ったコンソメスープ。
そして、シャキシャキとした感触のサラダにグラスに注がれた水一杯。
ご馳走だ!!パンがあるだけでもすごいのに…え?それでも少ないだって?うるさいな、俺にとってはとんでもないご馳走なんだぞ…!うわ、すげぇ…なにこれ超美味しい!あ、味がついてるぞ!!こんなに美味しいもんがこの世にあったのか!?スープには味がついてるし、水は泥水じゃなくて綺麗な水だ。どうしよう、なんか泣きそう…
まともなモン食ったことない俺には、一口一口食べるたび衝撃が走る。
大事に大事に噛み締めるように食べたからか、食べ終わるのに大分時間がかかってしまった。が、仕方ない。(開き直り)
さて本題だが、今日から俺はアラン様の側仕えとして働くことになった。とりあえず今日はアラン様と親交を深めてくれと言われたので、出来る限りやってみたいと思う。ただ、こんな粗暴な俺と箱入り息子のアラン様が仲良くなれるか、というか会話すら出来るか怪しいけど…。
時刻は午前9時を過ぎた頃。
そろそろアラン様も朝ごはん食べ終わっただろうし、行くか…!
いつの間にか置いてあった服に着替え、部屋を出る。
実はこの部屋、アラン様の部屋の隣にあるんだ。不測の事態にもすぐに駆け付けられるように、ということらしい。
だからすぐにアラン様の部屋の前に着くわけで。…あぁ、全っ然心の準備が出来てねぇよ!どうしよう…アラン様に嫌われたらどうしよう!?俺の仕事無くなっちゃうよ!?うおあああ、どうしよう!!
…よし、まずは落ち着こう。話はそれからだ。動揺してる姿なんてみっともないだけだからな。
…うん、ちょっと黙ろうか俺の心臓よ。さっきからドキドキしすぎてうるせえよ、黙れ。…いや黙ったら俺が死んじゃうじゃん。心臓さん、静かにしてて。というか平常運転に戻って!!ってこんな馬鹿な事考えてる時点でもう俺ダメじゃん。
もう、いいや!いっちゃえ!!行き当たりばったりでもなんとかなる!…多分!!
コンコンコン
ノックは確か三回だったよな?
「アラン様、失礼します。」
少しだけ待って、部屋の中に入った。え!?なにこの豪華さ!絨毯がふわふわしてる!靴脱いだ方がいいかな?
恐る恐る足下に向けていた視線をアラン様に向ける。と、何故か「びっくり!!」というような顔(そんな顔でも美しいってどゆこと)をしたアラン様が固まってこちらを凝視していた。
え、何ですかその顔…。物凄く気になるが、まずは自己紹介だ。何事も第一印象が大切だからな。まあ昨日で顔合わせてるから、第二印象か。
「おはようございます、アラン様。正式に側仕えとして働くことになりました。今日から宜しくお願いします。」
礼をしたあとにアラン様を窺ってみる。俺は主人の命令なしに動けないので、広い部屋には棒立ちの俺と固まったまま動かないアラン様の間に静かでそれはそれはもう痛々しい沈黙が広がる。
「…誰だ、お前っ!」
………この子人の話ちゃんと聞いてる?