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第一話 竜騎士アルトリア

 人間が暮らす世界またの名を「ポジアース」その裏側には、人と同じ姿を持ちながらも、その身に精霊や幻獣と言った、人知を超えた生命の力を宿す民「聖獣」が暮らす、通称「ネガアース」が広がっている。

 それなりに平和だったネガアースだったが、ある時、各地で噴火しないと言われていた、所謂「休火山」が次々と噴火する出来事が続発した。幸いにも死者やけが人は出てこなかったが、これを単なる偶然と見なかった者が一人…

「まさかこれは、予言にあった大いなる天変地異の前触れ?」

 発生した火山の噴火、そして、ネガアース全体に広がるとある予言を頭で反芻しながら、その者は思った。因みに、広がっている予言とは、数百年前に高名だった占い師が唱えたもので、

「一つ、静まった者が怒りだし。二つ、愛の総算たる者が愛想を尽かし。三つ、見守る者が岩の涙を流し。最後に、滅獣の名の元に全ての民は滅び去る。これ全て、この世の民が積み重ねたツケの代償である。」

 と、言うものである。

 この予言が唱えられた当時は、その意味不明な文章と突拍子もない内容から、誰もが本気にしなかった。しかし数百年後、噴火しない火山の大噴火によって、予言は後に再び世に流れる事となった。

「こうしちゃ居られない!!」

 火山の噴火を偶然と考えなかった何者かは、大慌てで自身の住む里を飛び出した。





 ネガアースには東西南北の方角に大陸が点在し、それを治める大きな国があり。大国に属している複数の国によって秩序が保たれている。

 西の大陸の国に存在する国の一つである「ブリテン」この国は他の国に比べて小さい国ではあるが、他の国に負けない繁栄を誇っている。この国に、この物語の主人公は暮らしている。

「ふぅあぁぁぁ。」

 朝も早い時間に、ブリテンの街の一角にある一軒の家で、一人の少年が目を覚ました。彼は見た目こそ、人間界(以降はポジアースと呼称する)に住んでいる人間と同じ姿をしており、短く揃えられたブロンドの髪や、青い瞳が特徴である。しかし、彼の両腕の肘の下や首筋、足首と言った、体のあちこちに黒みがかった赤い鱗が生えている。この鱗は、この少年が「ドラゴン族」と呼ばれる、読んで字の通り「ドラゴン」の力を持つ種族の少年である証拠である。

 ドラゴンの少年である「アルトリア」は、目覚めると同時に自分の寝ていたベッドから出ると、自身の寝相の悪さゆえに乱れたシーツや布団を整えると、洗面所に赴き、顔を洗い歯を磨くと、寝癖を直した。

 その後、水色の寝巻から水色のシャツとズボンに着替えると、金具でロックを掛ける事で勝手に抜ける事が無いように工夫されている「霊子大剣エクスカリバー」を手に取ると、家を出て行った。彼は騎士になる事を夢見ているので、朝の早い時間から訓練を行っているのだ。





 一方、アルトリアの向かう先とは違う方角にある山の中では、同じように騎士を目指す少年が訓練を行っていた。彼もアルトリアと同様に、ポジアースに暮らす人間と同じ容姿をしており、赤い髪と赤い瞳が特徴で、全身に赤い服を着ている。彼もアルトリアと同じように、体中の至る所にドラゴン族の証である鱗が生えている。ただし彼の鱗は、穢れの無い純粋な赤色である。

 ドラゴン族の中でも、最もスタンダードな存在とされる「レッドドラゴン」の少年「ガウェイン」は、自身の愛用する剣であり、自身の家の家宝でもある「陽光の剣ガラディーン」を構えると、

「太陽のマナよ、燃え上がり、我が剣に宿れ!!」

 と、言った。その結果彼の剣の刀身には、太陽の周りで燃え上がる「プロミネンス」を思わせる炎が現れた。

「はぁぁぁ!!」

 そして、その剣を目の前の岩に目掛けて振り下ろした。その結果、剣に発生している炎が岩にぶつかり、そのまま弾け飛んだ。少なくとも、彼の親が同じことをすれば、岩は粉々に砕け散るのだが、ガウェインは実力が足りないのか、こうして炎を保つ事が出来ない。

「……一体何が問題だ?」

 ガウェインは、炎の消えたガラディーンの刀身を、指で軽く叩きながら呟いた。その瞬間である、どこからか蜂のような虫が飛んできて、ガウェインにまとわり付いた。

「な、何だこいつ?」

 ガウェインはこう言うと、剣を振り回して蜂を追い払おうとした。結果蜂は、ガウェインに一矢報いるつもりでか体当たりを仕掛けると、そのままその場を後にしていった。

 一方のガウェインは、

「ただ逃げるだけならともかく、体当たりして行きやがって。」

 と言うと、逃げた虫を追って行った。





 ガウェインの居る場所とは少し離れた場所にある道。そこを、腰に二振りの刀を携え、左手に鞄を持った少年が歩いていた。彼も先ほどの二人と同じように、短い銀髪が特徴の人間の姿を取っているが、小柄で細い体躯の割に全身の筋肉が鍛えられており、動きの一つ一つから力強さが感じられる。

 彼はドワーフと呼ばれる「妖精族」に属する聖獣である。因みに妖精族と言うのは、人間に近い姿と生態を持ちながらも、科学では解明できない不思議な現象を起こす力を持つ種族であり、同じように人に近い姿を持ち、生まれつき力の強い巨人族と正反対の特徴を持つ。その中でのドワーフとは、妖精族に属するも巨人族に匹敵する力を持つと言われている種族なのである。

「えっと、今日はチャーリーさんの所に包丁を届けてから…」

 ドワーフの少年「ベイリン」は、自身が言いつかったお遣いの内容の書かれた紙を見ながらこう言った。すると、彼の目の前にガウェインの元から飛んできた虫がやって来て、彼にまとわり付いた。

「な、何だ?」

 ベイリンはこう言うと、左手に持った鞄を地面に置いて、腰に携えた刀の一振り「帯一」を抜き放つと、

「食用じゃないけど、それっ!!」

 と言って、刀を一閃し虫を吹っ飛ばした。因みにこの世界では、従来の家畜の他に、食用限定であるが虫を食べる文化があり、家畜の一つとして虫が重宝されている。

 一方の虫は刀の一閃で落下するも、頑丈な外殻の為に斬られてはいなので、すぐさま飛び立つとベイリンに体当たりし、そのまま逃げて行った。

「痛ぁ~。」

 ベイリンは体当たりされた頭を抑えながらこう言うと、刀を手にしたまま追って行った。





 同じ頃、朝の特訓に向かっていたアルトリアの元に、ガウェインやベイリンの元より逃げてきた虫がやって来て、彼にまとわり付いた。その際、何故か後ろから体当たりをお見舞いして行った。

「痛た、何だ?」

 アルトリアはこう言ったが、虫は何も言わずにただ彼の周りを飛び回っている。そんな虫に対し、アルトリアは、

「あー、もう!!」

 苛立ちでこう叫んで、持っている剣を鞘に入ったまま振り回し始めた。結果、適当に振り回された剣は偶然虫に激突し、虫はその一撃で吹っ飛んで行った。

 その後、炎を纏った斬撃と共にガウェイン、居合切りの態勢になったベイリンが現れ、吹っ飛んだ虫をそれぞれ斬りつけた。それにより、虫は二つの太刀傷を刻んだ状態で地面に落ちた。この際、虫の死骸が残るはずだが、なぜか光の粒子となって消えてしまった。

「消えた?」

「倒したのか?」

 ガウェインとベイリンが、虫が消える瞬間を見るや否やこう言うと、互いとアルトリアの存在に気が付き、

「あ、どうも。」

「おはようございます。」

 ベイリン、ガウェインの順に挨拶を交わした。

「あ、俺は仕事があるんで。」

 その後、ベイリンは刀を腰の鞘に戻してその場を離れ、

「僕も、これで。」

 ガウェインもこう言い残し、その場を離れて行った。

「? 誰?」

 一人残されたアルトリアは、こう呟いた。





 その後、気を取り直して自身の練習場としている大きな川の前に来たアルトリア。持ってきた大剣の鞘のロックを解除し、銀色に光り輝く刀身を鞘より抜き放つと、下から振り上げる形で一閃した。

 彼はドラゴン族の中でも、空や高い山と言った高所を住処にする「スカイドラゴン」その中でも感情や意志、知識を司り、この世の力全ての源となっている「霊力」を自在に操る能力を持つ「エンテラドラゴン」と呼ばれる、希少種中の希少種の一族に生まれているのだ。霊力を操れると言う事により、彼はこの世に存在するあらゆる物質に影響を与えられる。今の斬撃は、彼の得意とする遠くに離れた相手を斬る「次元斬」と言われる技なのだ。

 彼がまだ幼く、今は失踪している三人の姉と一緒に暮らしていた頃は、姉達の指導もあってか大きな川を数分間両断する事も出来た。しかし今は、心に迷いがあるのか、それとも別の理由でか、川の水面に一本の線を数秒引くのが限界になってしまっている。

「……どうして?」

 アルトリアは、エクスカリバーの刀身に映る自分の顔を見ながら呟き、姉が居た頃を思い出した。

 姉の名前は、一番上の姉が「モルゴース」次の姉が「エレイン」アルトリアの一つ上が「モーガン」と言った。アルトリアに対し、姉としてまともに接していたのはモーガンくらいで、モルゴースはアルトリアに良く意地悪(今考えればただのセクハラ)を行っており、エレインに至ってはアルトリアと口をきくことさえも無く、姉弟仲はお世辞にも良かったとは言えない。

 それでもアルトリアが、姉と暮らしていた時期が楽しいと感じていたのは確かで、三年前に三人揃って居なくなって以来、彼は彼女たちの行方をずっと探している。

「そんなんじゃダメだ!!気張れ、アルトリア!!」

 だが、姉が居なくなった事を嘆いても始まらないと気が付き、顔を両手で叩くと同時に剣を構えなおした。それと同時に、アルトリアの体にも変化が訪れた。

 全身の筋肉が発達して今までの四倍近い大きさとなり、体も何回りも大きくなった。体の一部に生えていた赤黒い鱗は全身に広がり、手足の形状も変化すると鋭い爪が生え揃った。背中からは巨大な蝙蝠を思わせる翼が生え、顔もトカゲを思わせる形状になり、鋭い牙が生え揃った。

 エンテラドラゴンであるアルトリアの「聖獣形態(この世界の住人のもう一つの姿)」になったのだ。

「行くぜ!」

 アルトリアは剣を構えてこう言うと、再び剣を振り上げた。結果、筋力が上がったためか斬撃は先ほどより鋭くなり、川の水を大きく両断し水の壁がそそり上がった。

「この姿になると、力が制御しにくくなるな。」

 アルトリアがこう言った瞬間である、

「キャア!!!!」

 上空から誰かの悲鳴が響き、やがて川から巨大な水しぶきが上がった。どうやら、アルトリアの斬撃を受けた何者かが、川に落ちたらしい。

「大変だ!!」

 アルトリアはこう言うと、竜の姿のまま助けに行った。





 アルトリアが助け上げたのは、松明を思わせる杖を持った長いブロンドの髪が特徴の女性である。耳が異様に長く尖っている事から、妖精族の中でも上位に位置する種族「エルフ」である事が理解できる。

「あの、大丈夫ですか?」

 アルトリアは女性に呼びかけるも、女性は返事をしない。試しに胸やら尻やら、体中をぺたぺたと触れてみたが、反応は無い。落ちたショックで気を失い、川に落ちた事で水を多く飲み込んでおり、呼吸もままならないのだろう。

 なのでアルトリアは、以前姉に習った救命法を試した。顔を上げる事で喉を広げると、胸部を圧迫して飲み込んだ水を吐き出させる。それをしばらく続けていると、女性は口から大量の水を吐き出して覚醒した。その際、水以外の物も吐き出したが、気にはしない。

「あの、大丈夫ですか?」

 その様子を見ながら、アルトリアは改めて同じことを訊いた。

 一方の女性は、自身の青い瞳でアルトリアをまじまじと見ている。アルトリアの体のあちこちに生えた鱗に、彼の特徴である短く揃えられた金髪、そして彼の持つエクスカリバーに目に行った時、彼女は、

「良かった、やっと見つけた。」

 と言って、アルトリアに抱き着いた。

「え、えぇぇぇ!!?」

 まだまだ幼い部類には入るが、アルトリアも一応は年頃の少年である。そんな彼が、いきなり見知らぬ女性に抱き着かれたのだから、驚くのは無理はない。

(え、えっと、こういう時はどうすれば?)

 アルトリアは抱き着かれながらこう考えていた時である、かつて姉のモルゴースに同じような事をされた時、最も多く使用した脱出方を思い出した。

 彼はまず相手の割と豊満な胸に触れた。これは相手の注意を一部に集中させるための行動で、相手の注意がそちらにそれたところで、足を使って相手の女性を蹴り飛ばして自分から離した。モルゴース相手にはこれで良かったが、今回は違う相手に行ったため、女性を大きく吹っ飛んで、再び川に落ちてしまった。





 再び女性を救出したアルトリアは、蹴り飛ばした事を謝ると、彼女に訊いた。

「あの、所で貴女は何者ですか?」

 相手の女性は、蹴り飛ばされて川に落ちた事は気にしていないのか、服装を整えるとアルトリアにこう言った。

「私は大魔道士マーリン、見て分かる通りエルフだよ。」

 その後マーリンは、アルトリアにこう言った。

「実は私、貴方、正確には貴方みたいな力を持つ人を探していたの。」

「僕を?」

 アルトリアがこう訊くと、マーリンは彼に説明した。

「最近、休火山が次々と噴火する事態が起こったでしょう。実はこの出来事は、何百年も前に予言されていた事なの。分かるかな?」

「何百年前の予言と言うと、あれですよね。静まった者が怒りだし、愛の総算たる者が愛想を尽かし、見守る者が岩の涙を流し、滅獣の名の元に全ての民は滅び去るって。」

 アルトリアがこう言うと、マーリンはこう言った。

「その予言には、あまり知られていないけど続きがあるの。選ばれた騎士達が、最後の希望だと。」

「つまり、僕がその騎士の一人ではないか、と言う事ですか?」

 説明を聞いていたアルトリアがこう訊き、それをマーリンが肯定すると、アルトリアはこう言った。

「でも、僕はそんな大層な者では無いですよ。」

 そして、エクスカリバーを持ってその場を後にしようとした。その背に向かって、マーリンはこう言った。

「でも、さっき私を落とした斬撃は貴方の放った物でしょう。私が飛んでいた350フィート(およそ105m)の高さに届く斬撃、十分に凄い……」

 しかし、言葉の途中で彼女は倒れてしまった。

「え、どうしたんですか?」

 彼女の体に何か異常が発生したのか、こう思ったアルトリアは慌てて駆け寄った。容態を見ようと近寄ると、マーリンはこう言った。

「お腹、空いた…」





 アルトリアは自宅にマーリンを連れて帰ると、とりあえず家にあった食べ物をマーリンに与えた。マーリンは食べ物を前にすると、物凄い勢いで口に放り込み始めた。彼女曰く、

「何日も自分の仲間になってくれる人を探して、西の国中を回っていたので、まともに物を食べるのは久しぶり。」

 との事である。

「あまり急いで食べなくても。」

 アルトリアはこう言ったが、マーリンはその言葉を聞くことなく、食事を楽しんでいる。

 やがて、アルトリアの用意した食べ物は、綺麗に無くなった。

「おかわり有りますか?」

 食べたりないのか、マーリンはこう訊いてきた。アルトリアは困った表情を浮かべると、

「すいません、もう無いんです。足りませんでした?」

 と、言った。この言葉に、マーリンはしまったと言いたげな表情になると、

「ああ、いえ。これだけ頂ければ十分です。」

 と、言った。しかし、体はまだ足りないと訴えているのか、お腹から低い音が響いた。

 マーリンが恥ずかしそうな表情を浮かべると、アルトリアは財布の中を見ながら、こう提案した。

「今から今日の夕飯の食材を調達に行くんですけど、外で一緒に昼食にしませんか?」

「え?良いの?」

 マーリンは驚いた表情を浮かべ、アルトリアにこう訊いた。

「ええ、そちらが良ければ。」

 アルトリアはマーリンにこう言うと、買い物袋を持って自宅を後にした。マーリンも、昼食を奢ってもらえるなら損は無いので、彼に付いて行った。





 この後、普通に買い物を行い昼食にありつけた、訳では無い。街の中心街にたどり着くより前に、アルトリアとマーリンの前に三人の小人が現れた。

 皆が赤い装束と、赤い帽子を被っている為、皆からは「赤帽子」と呼ばれている。問題なのは、彼らが警備などをしている者では無く、ただの賊であると言う事である。

「よおアルトリア、今日はエルフの姉ちゃんとデートでここに来たのか?」

 武器として金槌を持つ赤帽子の一人は、アルトリアの傍に居るマーリンを見ながらこう言った。

「彼女じゃ無いよ。」

 アルトリアがその事を否定すると、ナイフを武器にしている赤帽子がこう言った。

「それはともかく、俺達の言いたい事は分かってるよな?」

「これを渡せって?」

 アルトリアはこう返すと、背中に背負ったエクスカリバーを見た。

「そう。訊く所によると、折角世界三大刀剣職人の作った、武器として使うには勿体ない程の代物なのに、お前それをロクに抜いた事が無いんだろ。」

 リーダーなのだろう、大きな赤い帽子を被り、片手斧を手にした赤帽子がこう言った。これを単純に言いかえると、

「エクスカリバーはアルトリアが持っていても宝の持ち腐れだから、俺達に寄越せ。」

 と、言う事である。

「かのエクスカリバー、オークションに出せば数千万はくだらねえ。下手すれば、一生遊んで暮らせるかも。」

 赤帽子の一人がこう言うと、

(エクスカリバー?それって、あの人の?)

 マーリンはこう思った。彼女がまだ里で暮らしていた時代、一人の騎士に出会い彼に弟子入りした事があった。彼とはとある事件で別れ、それ以来会っていない。しかし、彼女は思い出した。彼の使っていた剣の名前はエクスカリバーであり、彼の持つ剣と瓜二つの姿をしていたと。

(そういえばあの時、自分に子供が居ると言っていたけど)

 別れ際に彼の言っていた事を思い出したマーリンは、アルトリアがあの騎士の子供なのか、と考えた。それでも、今の状態で分かるはずも無く、目の前の赤帽子の言う事、エクスカリバーを奪い大義の為に使うのならまだしも、売って自分たちの利益にしようと言う考えに腹が立った為、

「ちょっと!いくら何でもそんな事の為に!」

 と、赤帽子に文句を言った。アルトリアは止めようとしたが、マーリンはそれを制して言った。

「この剣は世を平和にする事を望んで作られたの!貴方達の利益の為に放り出して良い物では無い!!」

 一方の赤帽子は、こう返した。

「平和?ただの殺しの道具が?笑わせるぜ。」

 三人でマーリンの言葉をせせら笑うと、こう言った。

「大義だ何だ青臭い事を言う時代は何百年も前に終わったんだよ。今はどうやって毎日楽しく暮らすかの時代なんだよ。」

 そして、驚くほどの鮮やかな手並みで、マーリンをアルトリアの傍より引き離し、彼女の首筋にナイフをあてがった。所謂、人質にするつもりなのだろう、赤帽子はアルトリアにこう言った。

「取引だ。お前がエクスカリバーを渡すなら、このエルフの女は返してやる。」

 赤帽子は、アルトリアが取引に応じると思ってるのか、ニヤニヤと笑みを浮かべている。一方のアルトリアが、背中のエクスカリバーに手を掛けた時である。マーリンはなぜか笑顔を浮かべ、軽くうなずいた。

(大丈夫、君なら出来るよ)

 彼女はアルトリアの得意技を知っているので、無言でこう伝えたのだろう。アルトリアはエクスカリバーを手に持つと、その場で大きく振り回した。

「………?」

「………?」

「………?」

 赤帽子三人は、最初はアルトリアの行動に驚いたが、

「何やってだ?!抜きもしない剣を素振りしたって意味ないだろうバカ!!」

 大笑いしながらアルトリアにこう言った。しかし、アルトリアとマーリンは、この瞬間ニヤリとした表情を浮かべた。

「………?」

「………?」

「………?」

 赤帽子三人が、二人の行動に疑問を覚えた瞬間である。赤帽子の服や帽子に次々と切れ目が現れ、やがて切れ目に沿って服が切れると、赤帽子たちは揃って一矢纏わぬ姿になってしまった。

 アルトリアは特技の「次元斬」で斬撃を飛ばし、赤帽子たちの服だけを切り裂いたのだ。彼の技は、物を斬れる物を振っているのであれば、鞘に入っていても発動するのだ。

 一方、人質になっていたマーリンは、赤帽子が驚きに包まれると同時に彼の元を離れると、アルトリアの元に戻った。そして、どこからか自身の持っている松明を思わせる杖を取り出すと、杖から炎を出して頭上に炎の玉を作り出した。その熱量はすさまじく、あたりに陽炎が出来ている。

「く、覚えてろ!!」

 赤帽子達は、大事なところを隠すと、一目散に逃げて行った。





 赤帽子が去る所を見ながら、アルトリアはこう訊いた。

「大丈夫でしたか?」

 一方のマーリンは、発生させた炎の玉を消すと、アルトリアにこう言った。

「やっぱり君凄いよ、あの状態で正確に目標を切り刻むなんて。やっぱり才能あるよ。」

 彼女の言葉を単純にすれば、凄くない事なんて無いんだから、私の仲間になっても良いのでは無いか、と言う事だが、アルトリアは、

「いいえ、僕はまだまだですよ。」

 と、マーリンに言って、彼女の胸を突いた。

「?! 何?」

 マーリンが顔を赤くし、アルトリアに訊いた瞬間である。アルトリアの斬撃が切り裂いていたのか、彼女の服の胸元がバラバラに切れてしまい、彼女の胸があらわになってしまった。

「な、何で?」

 マーリンが胸元を隠しながらこう言うと、アルトリアはこう言った。

「僕はその胸の周りを狙って斬撃を放ったんですよ。そしたら当たってしまって。」

 彼が言うには、自分の一番上の姉の意地悪への仕返しにいつもやっていた為に、今回も反射的にやってしまったとの事である。

「そ、それってセクハラ。」

 マーリンはこう言ったが、アルトリアは、

「何それ?」

 と、訊いた。

 彼は姉のモルゴースにしょっちゅうセクハラを受けており、彼もそれにセクハラで返していた。そのため彼の中ではセクハラと言うものは、単なる愛情表現の一環として認識されていたのである。

「はぁ~、誘っておいて言うのは何だけど、彼で大丈夫かな?」

 マーリンの中では、アルトリアの仲間入りは確実な物とするつもりらしく、ため息を付きながらこう言った。

登場人物紹介

アルトリア (エンテラドラゴン)

年齢 14歳

性別 男

出身地 西の国所属国「ブリテン」

部族 ドラゴン族

属性 炎、風、光、鋼

武器 霊子大剣エクスカリバー

得意技 次元斬

趣味 鍛錬、セクハラ(姉の受け売り。本人はセクハラだと気付いていない)

家族 姉三人(現在失踪中)

好きな物 冷たい、もしくは甘い物

嫌いな物 キノコ、茹でた鶏肉の皮


備考

 エンテラドラゴンは、ドラゴン族の中でも空や高い山を住処にする「スカイドラゴン」の一種。

 感情や意志、知識の源であり、この世のあらゆる属性の源でもある「霊力」を自在に操る能力を持ち、霊力を伝って実体の無い物(斬撃や衝撃等)を好きなように飛ばすことが出来る。


 この小説の主人公。騎士を目指す少年。髪の色は金で、全身のあちこちに生えている鱗の色は、黒みがかった赤。

 ある日修業をしていた時にマーリンに出会い、騎士団結成のためのメンバーになる事を誘われている。

 家族は自分と姉が三人であり、一つ上の姉の大人しい性格と同時に、一番上の姉のセクハラ癖、二番目の姉の無口を受け継いでいる。

 幼い頃に比べて力に低下の一途が見られ、竜形態になれば力は上がるが、制御が効きにくくなり危険である。





霊子大剣エクスカリバー

 アルトリアが持っている武器であり、世界三大刀剣職人の一人が作った、エンテラドラゴン専用の大剣。

 エンテラドラゴンの霊力を操る能力を増幅し、あらゆる物質は勿論、空間すら切り裂くことが出来る。また霊力を刀身に保存する機能もあり、剣を突き立てる事で相手に霊力を送る事も出来る。

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