転校初日~HR~
4月8日
この街は暖かい。
前に住んでいた街はこの街より夏は暑く、冬は寒かった。
今日は転校初日。
不安はあるけど、期待の方が大きかった。
1時間目は始業式で、私は2時間目のHRからの参加。
いざ正面玄関へ進むと、数人の生徒からの視線を受けた。
そのとき学校の先生が来て、
「美木森さん、職員室へ」
と言って職員室へ案内してくれた。
「今日からお世話になります、美木森そらです」
先生方に挨拶を済ませ、HRがすでに始まっている教室へと案内された。
「美木森さんは1組です
担任は光井亜紀先生ね」
そう言ってその先生は職員室へと戻って行った。
「ありがとうございました」
私は先生にお礼を言って、教室のドアの前で待っていると、中にいた担任の光井先生らしき人が気づいてドアを開けてくれた。
「みなさん、転校生の美木森そらさんです」
私が恐る恐る中へ入ると
「わぁー!ウワサ通り可愛い!」
「ヤバい!」
という声が聞こえてきて、私は思わず顔を手で隠した。
それでも騒ぎは止まらず、見かねた先生が
「美木森さん、簡単に自己紹介を」
と言って生徒たちを静かにさせた。
「え…っと、○○県から転校して来ました、美木森そらです。一昨日この街に来たばかりで何も分からないんですが、よろしくお願いします」
ペコッと頭を下げると一番前の席の女子生徒が
「そらちゃんだってぇ、名前も可愛いね。私咲希!よろしくー!」
と言って右手を出して私に握手を求めてきた。
どうしていいか分からなかったものの、私も右手を差し出して握手した。
「やったー!私が握手1号だ!」
「こら鈴原、あ、美木森さんは廊下側の後ろから2番目の席ね」
先生に言われて席へ着くと、HRの時間は私の歓迎会になった。
「それじゃあ質問がある人は順番に質問していってね、先生はプリントを持って来ます」
先生が教室を出ていった瞬間
「そらちゃんは前に出て!」
と言われ、無理矢理黒板の前にあった椅子に座らせられた。
「美木森さん、誕生日は!?」
「7月7日です」
「七夕だぁ~、血液型は!?」
「A型です」
…………
しばらく普通のやり取りが続いたが、次の質問で空気が変わった。
「趣味は!?」
「星を見ることです」
「えっ!?」
ほとんどの生徒が一人の男子生徒へ視線を向けた。
「祐希っ、良かったなー、同じ趣味を持つクラスメイトが出来たぞ!」
「趣味っつってもたまに窓から眺める程度だろ?」
その男子生徒の言葉に思わず
「違いますっ!」
と叫んでしまった。