絶望と希望の狭間で
【希望】
将来によいことを期待する気持ち
【絶望】
望みの絶えること。 希望が全くないこと。
まるっきり正反対の二つ。 共通点を探せと言われても、同じ[望]という字が入っていることぐらいである。
その二つが合わさったときに起こる化学変化。 それが━━━━『奇跡』なのかもしれない。
ある日、ひょんなことから、針に糸を通したくなった。 自分の手先がどれだけ器用なのかを、確かめたかった。
どうせやるなら、ルールを決めてミニゲームみたいにしようと思い、以下の規約を制定した。
[ルール]
チャンスは10回。
10回の内、上手く通せた数に応じて、自分の器用さを決める。
糸の先を切ったり、整えたりすることは自由。
そして始まる自分の挑戦。
このとき、確かな『希望』があった。
一回目、糸は大きく逸れていった。 まあまだ練習程度だ。 気にすることはない。
二回目、糸は空を切った。 まだ慣れていないだけ。 気にすることはない。
三回目、糸はしなり、うなだれた。 そろそろ成功する。 気にすることはない。
四回目、糸は針に通されなかった。 このとき、俺の心に『絶望』が芽生えていた。
それから5、6、7、8回目と、全て外した俺には、もう『希望』なんてものは殆ど存在していなかった。
9回目、次入らなかったら、もう無理だろう。 そう思い、糸を針に向かって動かす。
━━━━が
「終わった……」
入ることはなかった。 もう、ダメだ。
それでもやってみようと、心の隅にあるわずかな『希望』に賭けてみようと、俺はまた糸を構えた。
糸が、腕が、針が。 重く感じる。 震える指先。 額から頬を伝う汗。 いつもより多く分泌される唾液。 高鳴る心臓。
極限の状態から、最後の、一回..........
「は、はいったあああぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
込み上げる涙。 満たされる心。 今まで心を支配していた『絶望』が、一気に消え去った。
『奇跡』 僅かな、ほんの僅かな『希望』が生んだ、『奇跡』
少しでも、諦めない気持ちがあれば、『奇跡』は起こる。
『絶望』と『希望』の狭間に生まれた『奇跡』が、また一人の心を救った。