第一話 五幕 セリシアの対応
ジーザスが倒れた後のセリシアの対応は、存外に素早かった。
地に伏した相方を見るや否や、彼女は早々に降参の白旗を揚げた。
「醜態を晒すくらいならば、潔く敗北を認める」とは彼女の言葉で、その言葉は推測でしかないが、おそらくパートナーに掛かるものだろう。
その言葉に初めはおや、と感じたが、どうやらキツいのは言葉だけらしい。率先して気絶したパートナーの介抱を行うあたり、彼女なりに想いは寄せているようだ。
そのうえ、彼女は勝利した俺らに嫉妬する訳でも負けた事を悔やむなく、ただ、賛辞を送ってくれた。
善い人だな、俺はその様子を見ていて思ったが、ただ一つ疑問に思った事があった。
それは、雅紀が歯をがちがちと噛み合わせ、白い顔面を更に蒼白にし、目は焦点を定めず、絶えずガタガタと震えていたのだ。
事情を訊ねたが、奴は首をせわしなく横に振るのみでその場では一言も言葉を発しなかった。
暫く時間を置くと落ち着いた様子を見せたので後で事情を聞くと、
『なにも聞くな。我が輩にだって言うべき事と言わぬべき事は理解している』
と尤もらしい事を言っていた。
あの様子から察するに何かに脅えていたのだろうが、一体何に脅えていたのか…。
ぞくり。俺は一瞬得体の知れない恐怖感に襲われた。
これ以上気にしてはいけない。そう思い、思考を止めた。