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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第十章『水の掟』
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第十章『水の掟』・第二話『枯渇した湖・形だけの称号』Part2






「さーて。行っきますかぁ」

 やけにテンションの高いテイムが自信満々にこれから乗る乗り物を見せた。

 ・・・・小型潜水艦?

《なあ、テイム。普通水源って山とかじゃないのか》

「いや。水星国はそうじゃない。そもそも、山なんてないし」

 当たり前じゃん、とでも言わんばかりの顔をする。

《・・・・・。それで・・・・・・船・・・・》

「これはワイドシップっていってさ~」

《そこを訊いてるんじゃない。てか、どこがワイド!?比較的っていうか、寧ろ小型にしては狭そうじゃないか!?》

 湊生は船体を見回して、テイムに言った。

 同様に、リフィアや綾乃も船に目をやって、眉間にシワを寄せる。

「だからさ。狭いなら名前だけでも“広く”してやれって造ったヤツがな」

「・・・・。」

 なるほど。

 テイムがお調子者なのは、たまたま生まれ持った性格なんじゃなくて、国民性だったのか。

 それにしても疲れる。

《・・・・・・・もういい。水が減少しているのにわざわざ船に乗るのも、何か意味があるんだろ。言え》

「水星国の水源は地下にあるんだ。つまり、湖は相当深く、地下では全て繋がっているってことだよ」

 湊生は内心激しくイライラしていて、テイムは年上なのに文末が命令口調になっていた。

 これから起こるだろうことへの緊張を解してくれたと考えればありがたいものだが、精神衛生上極めて好ましくないので、少しでもいいからそのテンションを下げてくれ。

《水不足の筈だろ。地下には水はあんのか?》

「ある。辛うじてだけどな」





 城の使用人たちの手によって潜水艦が運ばれ、その後ろをついて行った後辿り着いたのは、水星城の一室だった。

「ここから地下に直接繋がるルートがある。水属性の守護神がいないとこの先には進めない仕組みだ」

 テイムが壁にある赤いボタンを押し、潜水艦がやっと通れるくらいのサイズのゲートが開く。

 乗るように言われ、狭いながら全員乗り込んだ。

 聞けば、それは二人乗りだったのだという。

 狭いのは、当たり前だった。

 湖が底なし沼的な感じに計り知れないほど深くまで続いている為に、水は完全に干上がり、魚の死骸もたくさん転がっていて、白骨化しているのも見られる―――なんてことはまずない。

 けれど、湖で溺れたら一巻の終わりという訳だ・・・・・・・足が付くなど有り得ないのだから。

 テイムの魔力が働き、潜水艦が前進、下降し、水に浸かった音がする。

 ぶくぶくという音が響く。

《なあ、テイム。雨とかってちゃんと降ってんの?》

「まだ辛うじて。でもはっきり言ってすずめの涙程度」

《それはまずいな・・・》

「原因と思われる洞窟はこの先にある。水星がこうなったのと同時期に発見されたのがそこで、変な・・・というか、殺気に近いものを感じるんだ」

 あまりに水量が無いために、地中深くまで根を伸ばす木々ですら水分が抜けてカスカスになり、上部の重さに耐えられなくなって半ばから折れているものが多い。

 本来ならば、小鳥達がさえずり、花が咲き乱れ、水の流れる音、木が風に揺らされる音がしているはずだ。その様子は何一つ見受けられない。

 水中を行く一行の目的地は、案外あっさり見つかった。

 前方深く、海底洞窟のような物が見える。

 そこからは確かに、ただならぬ気配がして。







 その頃、地上では。

 城下の方から大きな丸い球体が、1メートルほど空中に浮いたまま城に向かってやってきていた。

「・・・・・何あれ?」

「ああ、“海王星”の水のタンクさ」

 人々が声を上げる。

 水に関する仕事をする者にはよく知られたものだ。

 表世界にはいろいろな乗り物や化学が存在するのと違って、裏世界は中世ヨーロッパみたいな感じだ。

 だからか水の輸送には守護神の力が必要であって、海王星のタンクには風の魔法が使われている。

 どの守護神にも“浮遊”の魔法は使えるから、こういうことにおいて便利だ。

 因みに、潜水艦の動力源がテイムの魔力なのも、同様の理由である。

 城のあちらこちらの窓から神官や使用人達がその様を眺める。

「海王星のレイト王子、手配早いな」

「これでもあの国的には遅いほうだろう。“海の国”って呼ばれる反面、“予知の国”とも呼ばれている国だからな。急に水の減りが激しくなって数日経ってるし。本来なら、ゆっくりでも減ってるうちから見越して大量に水を持って来てくれてるだろうさ」

「王子の具合が悪かったそうだから、手が回らなかったんだろ」

 遠くで小さく水を嬉しそうに受け取っている人々が見える。

 あれだけあれば、十分な量がある・・・・・・と、城の者達は安堵した。








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