第八章『氷の掟』・第二話『狂わせる笛音・影を落とす絆』Part1
「俺はオマエが憎い・・・。冥王星王と組んだのは同志だったからだ」
「利用、されて・・・る、・・だけです・・・!」
「そんなのはどうでもいい!利用されてるとかしてるとか・・・っ!俺は、オマエさえ処分出来れば、それでいいんだ!」
「処分って・・・!」サラの顔が真っ青になった。
「殺す、それ以外に意味があるか?」
でもただ殺すのでは楽しくないだろう?楽に死ねると思うな、と付け加えた。
「オマエが五歳になって金星城に来た時・・・見た時から気に食わなかったんだ。サラや民衆や兵達の前ではただの庶民のガキだったが、どうだ?裏側では一国の王子扱いで、両親含むオマエの世話役からは何度比べられたことか・・・!それがどんなに嫌だったか・・・八歳も年下のヤツに、だぞ!」
―――レイト様のような国王でしたらよろしいのに。
―――言うな。フェン様がお聞きになっていたらどうする
―――でも・・・・フェン様が我が国の国王なんて・・・・・
―――どうせ国王なんて形だけだろ。守護神が国のトップなんだから
―――そうね・・・・サラ様は、本当にお可愛らしいわ。サラ様がトップというのは嬉しいことだわ。
フェンの脳裏に、使用人たちの言葉が浮かび上がる。
どれほど惨めだったか・・・・・誰にも分かるものか・・・・・!!
ずっと立派な国王になろうと努力してきていた、その頑張りが誰にも認められなくて。
もう、国のことなどどうでもよくなった・・・・・・
打って変わって、自分を引き立て役に仕立てた十歳も年下の他国の王子が憎くなった。
「お兄様、そんな、レイトは・・・!」
「うるさい!黙れ!!」
「きゃあっ!」
駆け寄ったサラがフェンの平手打ちを受け、何メートルも離れたところにある空中庭園の壁に叩き付けられた。
それに素早くレイトが反応して、胸倉を掴むフェンの手を払いのけて駆け寄る。
レイトはゆっくり体を起こすサラの前に仁王立ちし、再度来るフェンの攻撃に備えた。
不意にフェンはズボンのポケットに手を入れ、5cm程の小さな笛を取り出した。
それをゆっくり口元に当てる。
ピュ~ルル、ピュルルルル~
湊生やサラ、綾乃は何がしたいのだろうと小首を傾げた。
どくん・・・・・ドクン
「・・・く、・・・あああっ」
と、突然レイトが悲鳴を上げた。
サラが駆け寄って心配そうに見つめる。
「それは・・・・!!」
「これは海王星の守護神を操る笛!これがこっちにある以上、レイトは俺の支配下だ・・・!」