第八章『氷の掟』・第一話『国の責・涙す少年の秘密』Part2
ヴン・・・と音を立て、フェンを挟んだ向こう側に黒い物が浮かび上がる。
ワープホールだと、サラとレイトはすぐに分かった。
はっきりとしてきたその中から、綾乃、湊生と次々に出てくる。
そして、彼らはサラとレイトの姿を瞳に映した途端に嬉しそうな顔をした。
同様にサラもレイトも口元に笑みを浮かべたが、それは本当に僅かだった。
会えて嬉しい。
無事だと知って本当に嬉しい。
でもタイミングが悪かった・・・・・・・・。
「立会人のご登場だな」
「お前は・・・・・・・フェン!!」
案の定敵と遭遇していたか・・・・・と、湊生は苦虫を噛み潰したような顔をしてフェンを睨み付けた。
湊生の肩に乗っかっている綾乃は、周囲の状況に驚愕した。
ここは・・・・・・。
《お兄ちゃん、ココ空中だよ!!》
「何っ!?」
レイトは、何の立会人として旅の仲間が呼び寄せられたのか考えた。
と、綾乃達が駆け寄ってこようとしたが何かに阻まれているのに気が付いた。
一種の結界だろう・・・・・とは思われるが、中から出ることが叶わないタイプらしかった。
「さて・・・・・始めよう」
フェンのその言葉に、皆身構えた。
「戦う気はない・・・・・・話したいことがある」
「お前と話すことなど何もない!!」と食って掛かる湊生に、お前に話すのではないから黙って聞いてろ、とフェンは言い放った。
黙った湊生に替わり、レイトが問い掛ける。
「何の、ことでしょうか」
「レイト、オマエの真実だ!仲間に黙ったままじゃいけないことくらい、天才様はご存知だろう?」
「・・・・!」
その言葉に、レイトの顔が引き攣った。
何のことだ、と皆首を傾げる。
「それはっ・・・!また改めて自分で言います!ですがまだ、今はまだ・・・その時ではありません!」
「え・・・。レイト王子・・・・・・?」
サラがレイトの顔を覗き込む。
その表情はどこか不安げで。
注がれる視線の圧力に押され、レイトは完全に沈黙する。
「サラ、知りたいだろう?そやつの真の秘密の数々を。太陽大命神もそうではないのか?」
「まあ・・・」
レイトは自身について、いろいろ話してくれた。
けれど・・・・・何か隠していた・・・・・・?
「やめて下さい・・・お願いします、言わないで下さい!」
懇願するレイトの姿を見て寧ろそれを見たかったんだと言わんばかりに嬉しそうに笑う。
レイトのことが、嫌いで嫌いで仕方ない。
そんな彼にとっては、それこそ・・・・・・。
兄がどうしてレイトをそこまで嫌うのか、傍に居ながらもずっとサラには分からなかった。
自身を使って、自らの手を汚さずにレイトを殺そうとまでして・・・・・。
「オマエを傷付ける手段としては、それを言う必要があるだろう?」
「やめて下さい・・・!」
フェンはニヤリと笑って、レイトは半泣きになった。
レイト以外は興味を示して聞き入ってしまっている。
「2006年、冥王星が太陽系連盟から外された際―――海王星は冥王星を裏切った。レイトの曾祖父がそれをしたのだ。激怒した冥王星王は他国を滅亡させた。つまり、海王星が原因でこの地球を含む四国の何億人もの人々が死ん・・・」
「やめろオオォォォォっ!!」