第七章『火の掟』・第三話『刃交えぬ戦・交差せし表裏』Part3
綾乃が説明をしようとした時、何かが割れる音がした。
見れば、敵軍の絶え間ない攻撃によって湊生が作った結界が崩れ去っていっていた。
「ちっ・・・・・・時間稼ぎにもならんな。やっぱり俺は援護系魔法はむかねェ」
舌打ちして肩を竦めてみる湊生に、だからって攻撃系魔法も向いてる訳では無いんじゃ・・・・・と練習風景を見ていた綾乃は思った。
やはり僅かに慣れた感は最終段階では見られたが、それでもいざという時でないと本気の力は出せず、Dランクながら特殊能力を自在に使いこなすテイムに惨敗であった。
あくまでそれは経験が大きいので、別に湊生が向かないと言いたいのではないが、まだ向いてる向いてないを決めつける段階に無いということが言いたいのである。
要するに、綾乃やリフィア、そして表世界の住人と入れ替わってしまったサラとテイムの非戦闘員4人を庇いながら、しかもまだ訓練生状態の湊生とFランクのレイトでは、勝ち目は・・・・・。
「右前方8、直撃弾来ます!!」
レイトの声に一斉に振り返り、指定された場所から遠ざかる。
次の瞬間、綾乃の居たところに魔法球が飛んで来て破裂した。
「次、5秒後物理攻撃!!湊生さん後方二歩以上後退を!!」
僕は、役に立てるほど力は強くない・・・・・せめて、飛んでくる矢の勢いを風属性魔法で弱め、回避の可能性を高めることが出来るくらいでしょう。
けれど、僕にも強みはあるんです。
魔力が少ないからすぐに倒れてしまうとは思うけれど・・・・・・僕には予知という特殊能力が・・・・・!!
でもそんなに時間は稼げない・・・・・
「湊生さん!!ワープホールを!!ワープホールを、早く!!」
「でも、テイムが・・・・・」
「渋っている場合ではありません!!あと二分後、集中攻撃が来る筈です」
「わ、わかった」
もしもの時に、とテイムから使い方を聞いていた湊生がワープホールの媒体となって、そのゲートが開かれた。
黒い球体が平らで大きな円となり、その中央は渦を巻く。
本来の所持者であるテイムのコントロールが無い以上、どこに飛ぶかは分からない。
もしかしたら、全員別々の場所に落ちる可能性だってある・・・・・・・。
それでも・・・・・また再び会えるなら・・・・・今は。
綾乃、リフィア、砂羅・・・・・と順にワープホールに入っていく。
湊生が最後にそのゲートを閉じ、掻き消えたその刹那、銃撃や魔法球、弓矢・・・・さまざまな武器による攻撃がその地点に降り注いだ。