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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第七章『火の掟』
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第七章『火の掟』・第二話『少年の一人語り・再来せん彼の戦』Part2






 綾乃達一行には、いくつか問題があった。

 ギクシャクし始めた特定のメンバー間でのギクシャクとしたものも、まあそれなのだが、それも除いてギクシャクの渦中の人物と蚊帳の外の人物、それぞれ一人ずつ関係していた。

 正確に言えば、全くの無関係であるリフィア以外の全員も関わってくるそれ。

 火星国で突発的な戦闘が開始された為に、流れてしまったその話。

 木星国に入ってから綾乃は二人にこう尋ねた。

《結局・・・・・宝玉を体に取り込んで、何か効果あったの?》

 問われた二人―――サラとテイムは首を傾げた。

 まるで心当たりが無いと言いたげな表情をして。

「さあ?」

《テイムお兄様、特に変化なんてありませんわよね?》

「ねェな」

 結局やっぱりねーって感じに流れたのだ。

 タイミングを逃し、未だ渡せていない海王星国守護神と、木星国守護神の表世界の人が入った宝玉は、まだ綾乃の手元にある。

 ステアには、あの日以来会えていない。

 それは忙しいからであるらしく、明日早朝木星国出発予定の一行と接触することは叶わない。

 だが、常に傍らにいるレイトには、いつでも渡せるのだ。

 サフィールは、信頼がおけると思ったら渡すように言っていた。

 たとえ記憶が違えようとも、レイトはレウィン。

 信頼していない筈が無かった。

 けれど、どうしてか渡せずにいて・・・・・・・。

 綾乃は――――無意識に―――彼に対して恋をしているが故に、本当に無意識に正しい道を選択していたのだった。





 サラとテイムの体の中に取り込まれた、宝玉。





 その効果は。




 最も最悪な形を取って。






「じゃ、出発するぞ」

 そう仕切るテイムの隣には、最近彼と共にいて魔法の特訓をし、親友のポジションを得始めた少年は今はいない。

 その代わりに、ここ一月近く姿を見せなかった少女の姿がある。

 当初の目的・魔法の特訓を終え、綾乃、湊生共に元の身体に戻ったのだった。

 つまり、今、綾乃は自分の人間の身体に、湊生は魚のぬいぐるみの中に入っている。

 まずテイムが飛び立ち、次にサラが飛ぶ。

「じゃ、綾乃さん。僕らも行きましょう」

 レイトにお姫様抱っこ状態の綾乃は、恥ずかしさに俯いたまま小さく頷いた。

 そこに、邪魔をするかのように湊生が泳いでくる。

《魚でも綾乃の身体に入ってても、どっちでも飛べるから楽だな》

「あーはいはい、守護神っていいですネー」

 軽くあしらう綾乃に、肩にぶら下がる湊生は尾びれで綾乃の頬を攻撃する。

「い、痛い痛い。でも確かに、その中に入って初めて空を飛んで・・・・・感動はしたかな」

《じゃ、まだ戻んなくてもよかったじゃねーか!!一人でも空飛べた奴が多い方がいいんだよ!!》

「分かってるけどー!!でもー!!」

 魚のぬいぐるみが飛ぶのは、まあ、守護神たる湊生が一時的にでも入ったことで魔力が一部移り、綾乃も魚の状態で飛べた訳なのだが、それ以前に裏世界の魚は飛べる。

 何故火星国にまで空を飛ばなければならないのに二人が元の身体に戻っているのは、昨晩一悶着あったためだ。





 ――昨晩――

《そろそろ身体返してー!!》

 ここ三日間くらいずっと言い続けている綾乃に、湊生は嫌そうな顔をする。

「なっ、バカ野郎!!出発は明日だろ!?まだ魔法使えねーと困るんだよ。お前飛べねーから誰かが運ばないといけないし」

《でもエスティ君がレイト君だって分かったからいいでしょ!じゃあ必要な時に代わるから身体返してー!》

 約一月、綾乃はずっと魚に入っていた。

 いい加減戻りたいと考えても、戻るには湊生の力が必要で。

 こうやって訴えるしかないのだ。

 いつもはハイハイ、と湊生が流して終わりだが、流石に流されるのにも腹が立ってきた綾乃は怒りを露わにして怒鳴り散らした。

 何と言っても、湊生は魔法の特訓とか言っていた筈なのに、最初の辺りでもう特訓をして自己満足をしてしまった為か練習量が著しく減少してきていたのだ。

 寧ろ、綾乃の身体で人間生活楽しんでます、的な感じがしている。

 魚で我慢している綾乃からしたら、ふざけるなという世界だ。

「そーだよなー、人間バージョンだったらお前飛べないからレイトにお姫様抱っこでも何でもして貰えるもんなー」

《え!?・・・・あっ》

 そんな考えなど全くしていなかった綾乃は、それに気付いて顔を茹蛸のように真っ赤に染めた。

 綾乃の気持ちなど余裕で知っている彼からしたら、面白く、使えるネタである。

「いいぜ、返してやる。ついでにお姫様抱っこの件についてもレイトに―――」

《言わんでいい!!》



「お姫様抱っこ、って何のことです?」




「きゃあああっレイト君!!いたの!?」

 この前サラの様子がおかしいという話の時も、レイトは綾乃の死角から現れた。

 驚いた綾乃は、悲鳴を上げて固まってしまった。

「お二人の姿が見えなかったので、夕食の準備が出来ましたとお呼びしようと思って」

「なーなー、レイト」

「何でしょう?」

「綾乃が、元の身体に戻りたいってうるさいんだがな」

 レイトは僅かに目を見開いて、小さく溜め息をついた。

「当たり前でしょう。そう思うのは自然なことです」

《だよね!!》

「ああ。それで、今から戻してやろうと思うんだけど、そしたら明日・・・・・」

「綾乃さんを、その・・・・・・お姫様抱っこして飛んだらいい、ってことですか?」

 やや照れながら、先程聞こえた単語を繰り返す。

 綾乃はあまりの恥ずかしさに、頭を物凄い勢いで左右に振るが、湊生が何ともあっさり肯定してしまった。

 本音を言えば、心臓が壊れそうになるのは簡単に想像出来るが、それでもレイトのことが好きだからして貰えたら嬉しい。

 だから綾乃は、レイトがどう言うのか気になって視線を外しながらも常に視界に入るようにして見ていた。

「いいですよ。綾乃さんがお嫌でないのでしたら、僕と一緒に行きましょう。いかがですか?」

 綾乃の方へ歩いてきて、その間の距離を縮める。

 ますます綾乃の頬に熱が籠った。

 レイトが「ね?」と恥ずかしさで少し困ったような笑みを浮かべ、綾乃は頷いた。

 そうして、現在に至るのである。






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