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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第六章『木の掟』
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太陽系の王様書庫1

この太陽系の王様、正しい正式名称は”太陽系の王様THE KING OF SOLAR SYSTEMⅤ”。

それまでのⅠ~Ⅳの一部をここで公開!!

また今までの活動報告(追記大幅に有り)もここで再掲載していきます。


まずはⅡの冒頭です。(Ⅰは本編が残っていないので、ストーリーを書きます。書庫2以降にて。)



※注意:今後下記の小説から謎に関係の無い部分は引用することがあります。特に儀式のカットなど。本編では儀式のカットを先延ばししています。







「湊生、ご飯出来るのにまだ時間がかかるから、宿題早く終わらせときなさい!」

 階段下から母・明日香の声がして、湊生あつきこと篠原湊生は、部屋から「わかった――!」と、声が届くように大声で言った。

 もうそろそろ六時半、お腹が空いてくる頃である。

 湊生は中学二年生の十四歳、サッカー部に所属しているアウトドア派の少年である。

 因みに、ポジションはミッドフィルダーだ。

 制服をハンガーにかけて私服に着替え、バッグの中身を漁り始めた。

 置き勉はどちらかと言うとしない方で、おかげでいつもバッグはパンパンかつ重い。

 英語のノート、数学のプリントを四枚取り出して机の上に置き、ベッドに倒れた―――と、その時、ドクンと心臓が変に脈打った。

「・・・っ痛!」

 また数分してドクン、とまた大きく脈打って、それからすぐ、連鎖するようにして脈打ち始める。

 やがて呼吸が困難になって、だんだんと気が遠のいていった。




「・・・!」

 冷たっ! 目を覚まして一番に思ったのは大理石か何かの床が冷たいことだった。

 その床には、大きな魔法陣が描かれており、その中心に湊生はいた。

『・・・―――召喚は成功だ。この二十歳にも満たない少年が、かの者だということなのだな?』

『この儀式は神聖で正確なものだ。そうでなければ意味がない』

『そうだ』

 所謂白装束が湊生を、魔法陣を取り囲んでいた。

 白い帽子は縦長で、帽子に付けられた布で顔を被い、足先までしっかり隠しているマントも当然のように真っ白であった。

『・・・安心せよ、予言の君。我が名はサフィール。ここ“太陽国”の王である。・・・そなた、名を何という?』

 白装束の一人が言った。

 どうやら、その予言の君、というのが湊生のことらしい。

「俺――いえ私は、篠原湊生ですが・・・」

『し・・・はら、あつ・・・き?  変な名だな。』

 いや、アンタの名前から察するにここは俺のいた日本と違って、漢字圏の国じゃないから変だと言うんだ。

 変という言葉で剥れた湊生はそう思った。

「・・・では湊生、私の説明を聞いてくれるか。まだパニック状態であろう」

 サフィール王は帽子を脱ぎ、顔を見せた。

 少し髭が目立つ、凛々しい王様の顔だった。

 顔を見たことで少し安心感が出たのか、湊生はすぐにコックリと頭を垂れた。

「おお、この服ではいけないな。話は着替えてからにしよう。ソロン神官、湊生を応接間に」

「承知しました」と、王の隣にいた細身の男も帽子を脱いだ。

「さあ、こちらへ。王が来られましたらお教えします。」

 案内された部屋は儀式の間と呼ばれる先程の部屋からそう離れてないところにあった。

 神官が部屋を去って、一人になってみるといろいろと考えてしまう。

 太陽国って・・・?

 少なくとも地球上にそんな国はないのは明らかだ。

 では、いったい・・・。

 俺はさっきまで自分の部屋にいたんじゃないのか?どっちが夢で、現実なのだ。

 考えても答えが出ない問題をクルクル、ただひたすらに考え続ける。

 それは王が入室するまで続いた。

 王は儀式の正装とは似ても似つかぬ、かつてのヨーロッパの一国の王のような服装であった。

 テーブルを挟んで向かい合って座った二人は、しばし沈黙した。

 その沈黙を破ったのは、意外にも王様の方であった。

「さて・・・何から話せばよいのだか。悪いが質問をそちらからして貰えぬか」

「太陽国・・・いえ、そもそも私はどうしてここにいるのでしょうか?日本は・・・」

「日本、それは何かは知らぬが、分かっていることはある。湊生、そなたは表世界から来た者であると」

 表世界、と湊生は口に出さずに心の中で王の言葉を繰り返した。

「一方、こちらは裏世界だ。まあ、重なって存在する以上、表も裏も無いがな。・・・その質問が一番に来るとなると、次は、《湊生が裏世界に来た理由》辺りだろう」

「はい。それもあります。あと、《予言の君》と呼ばれる訳、戻る手段に、その他諸々・・・」

「・・・順を追って説明する。その質問も含め、湊生の知りたいだろうことは欠ける事無く盛り込むつもりであるから、辛抱強く聞いてくれ」

 返事をする代わりに、軽く頷いてみせる。

「ここはそなたの住む表世界と平行して存在する世界だ。コインの表裏のようだが、交わることは決してない。裏世界には十の国があって、王家の魔力を持つ者が守護神となって統治している。事実上、王は形だけの存在・・・。そして今・・・魔力を持つ者は減り、守護神がいるのは数国のみ。私は予言を受け、それに従い、表世界で魔力を持つ者に守護神となって貰うために儀式を執り行ったのだ・・・。帰る手段は、今のところない・・・」

 守護神になってもらいたいから呼び出した、まではいいとしよう。

 なぜ、俺だ。

 なぜ、俺なんだ。

 魔力の《ま》の字も持ってないぞ?・・・当てが外れたな。

 それに、本当に帰る手段がないのか?引き止めるための嘘だったり・・・あるいは、王は知らないだけで・・・とか?

 湊生は、この世界を守ることよりも自分の世界に戻ることが最優先事項だと判断した。

「無理です・・・。帰るべき場所が私にはありますから」

「・・・こちらの世界が失われれば、君の世界も失われる。それでも戻ると、元の世界に帰ると言うのか」

 “戻れない”という事実は、湊生の気力を一気に低下させた。

 サフィール王は、「方法が見つかるまででいい・・・だから、頼む」と、湊生に気を使うような口調で言った。それはきっと―――王にとって、最後のチャンスであったに違いない。

 これ以上十四歳の少年を崖に追いやる行為は出来ないと思ったからだ。

 湊生は答えることが出来なかった。

 頼みを聞くしか選ぶ道はないと頭では分かっているのに、どうしても承諾することが出来ず、一日考えさせてもらうことに決めた。

 そして湊生の決めた答えは・・・

「協力・・・してくれますか、私が元の世界に戻るための」

 答えが意外だったのか、王は固まった。

 やがて、それは満面の笑みに変わっていく。

「神官!例のアレを・・・」

「はい!どうぞ、こちらに」

「うむ」

 ソロン神官が赤い表紙の書物を王に手渡した。

 何だか不気味で、表紙には手を象った凹凸がある。

「湊生、こっちに来て、表紙の手形にそなたの手を押さえつけよ」

 おずおずと王の前へ近づき、差し出された本に手を重ねた。

 その刹那、本は光り輝き、湊生の背に白い翼が現れた。

「やはり、魔力をお持ちだ!儀式に狂いはなかったのだな!」などと、遠巻きに見ていた兵達が騒ぎ出す。どうやら、本は魔力の有無を調べるための物のようだ。

「湊生・・・これから表世界へ帰還を果たすその日まで、我が息子となれ」

「分かりました・・・それで、あの・・・」

「何だ?申してみよ」

「名前・・・ここのものとは違っています。裏世界での名前が別にあった方がいいのではと」

「そうだな。気付かなかった。では、これからはアレンと、アストレイン=サン=クラウンと名乗れ」

 よろしくな、王はそう言って微笑み、

 翼の存在に戸惑いつつも、皆に期待されるのは嫌じゃないかな、とちょっと湊生は照れて王を見返した。



「アレン様!世界史のお時間でございます!」

 男のようにゴツイ宮女のスパルタ教育が始まった四日目。

 アレンは勉強用のテーブルに腰掛け、書物を読み耽っていた。

 一通りの歴史を学ぶためである。

 それほど学力に問題がなかった湊生、いやアレンは歴史や魔法についての勉強が主になっていた。

 アレンの服は約数十万円という超セレブ状態となっているが、それは当たり前、実の息子のいない王にとって彼は第一王子、つまり後継ぎだからだ。

 その意味を分かっているつもりになっていたアレンは、何もわかってなかったと目を細めた。

「ねェ、クィルさん。“魔力”て、具体的に何?」

 宮女・クィルは、そうですねぇ、と言って少し考え、

「魔力を持つ者・守護神には属性と特殊能力がありますね。アレン様の場合は、属性は光、特殊能力は制御、時間を司ります」

「セイギョ?」

「他の守護神達の暴走を止めるためのモノですよ。・・・ただ、多くの条件があるので、有効とは言えませんけど」

 魔法とかって実際には無いというのは常識。

 漫画やアクション映画での話は別として。

 だが、超真面目で知識が多い宮女クィルまで言うのだ、嘘である訳ないだろうとアレンは頭を抱え、この理を超越した国々の歴史書を見た。

 確かに、第一次魔法大戦と第二次魔法大戦というのがある。

 それは、元の世界でかつてあった第一次・第二次世界大戦と同じ年にあったことであった。

 どうやら本当に二つの世界は連動しているようだ。

 他にも、革命、紛争、条約締結、大陸発見など・・・表世界であった“世界を揺るがす出来事”は、この世界で何かしらの大イベントがあった年と一致している。

 二〇〇六年のところを見た時―――アレンは数秒固まった。

《冥王星、太陽系連盟を脱退。》

「太陽系って連盟だったんだ・・・?」

「はい。あなたのいた表世界で冥王星が太陽系の一つというポジションを失くした事で―――惑星の守護していた国の一つである冥王星国を外すしかなかったのです」

 アレンは、立ち上がって窓の側に寄り、窓ガラスに手をついて下を見た。

「ずっと・・・」

「はい?」

「ずっと、思ってた。兵見て、軍備強化中っぽいなって・・・それってつまり、冥王星が敵に?」

 クィルは深く頷いた。

「守護神の役割の一つが、言っていませんでしたが―――表世界の惑星の守護なので」

 勉強嫌いのアレンも、さすがに異世界の学問や魔法だらけの歴史には興味を示す。

 クィルはそれから今年・・・二三四〇年までの冥王星国の悪事について語り出した。

 太陽への圧力、他の国々を支配下に置くなどし、今や、地球、火星、土星、天王星は冥王星によって王族を失って敵となっていることを。

「アレン様は二日後、継承の儀を行います。その場に、残った国―――水星、金星、木星、海王星の守護神様がいらっしゃるのです」

 アレンは、大変なことに首を突っ込んじゃったなァ、と半ば王子となることを後悔し、深い溜め息をついた。



「初めまして、アストレイン様。私はスティリア=トルドールと申します。ステア、とお呼び下さい」

「ああ・・・、初めまして・・・」

 アレンはあまりに礼儀正しく、いかにも一国の姫と言った感じのステアに気後れして思わず後退ってしまう。

 ステアは木星の王家・トルドール出身の守護神。

 黒いセミロングの髪が特徴だ。

 式の前に一通り顔を合わせるのが習わしであるため、アレンは来客用の控え室に向かうことになっていた。

 そして指定された部屋に入ると、待ち侘びていたのが目に見えるほどに四人の守護神が集まってきたのだが―――その中でステアがまず初めに挨拶してきた、という状況だった。

 次に、一番背の低い少女が、

「私はサラ。サラネリア=ノーリネスですわ。よろしくお願いしますね」

 サラは金星の王家、ノーリネス家の守護神。

 一輪の花に例えられる可憐な姫である。

 ふわふわなブロンドのウェーブ髪が特徴だ。

 そしてサラの後ろに立っていた少年はレイト(本名はレトゥイル=シェイレ)と、一番身長の高い青年はテイム(本名はテイスラム=ニコレット)と名乗った。

 レイトは男の子と言えないほど女顔で、いかにも頭脳明晰そうな子。

 テイムはノーテンキというか、お調子者らしかった。

「ステアさんは十七歳、テイムさんは二十歳。サラは十二歳、僕は十四歳です。アレンさんも十四歳だそうですね?」

「コラっ!レイト、“アレン様”だぞっ!“様”を忘れんなよ」

 コツンとテイムがレイトの頭を拳で突付いた。レイトは痛い、痛いと悲鳴を上げている。

「いや、レイト―――俺は臨時で同い年だし、アレンでいいよ。あと、敬語はやめろよな」

「臨時って・・・やっぱりいなくなっちゃうの?」

 サラが目に涙を溜めて、縋るように見つめてくる。

 対応が早いようで、もう敬語のカケラも存在しない。

 返答を誤魔化したアレンは、四人と共に儀式の間へ向かった。

 その後、四人は席へ、アレンは衣装室に行って正装に着替える。

 純白の服で、宝石がいくつかアクセントに付いている。

 いかにも神っぽい服だ。

 クィルが遅い、と連呼しながらやって来たのは着替えて間もない頃で、彼女によると入り口付近から儀式の間を除いて人が多く、聞いたアレンは緊張し切ってしまう。



「これから太陽の守護神、太陽大命神の任命式及び王子・アレン様の歓迎式典を執り行いたいと思います。まず、太陽王サフィール様より―――」

 プログラム・・・式典の内容はまず、王サフィールの挨拶、アレン入場、各国からの祝いの言葉、呪文の詠唱となっている。

 その呪文の詠唱がメインの式であるが、アレンはその呪文を知らなかった。

 サフィール曰く、自然に浮かんでくる、とか。要するに、王自身も知らないのだ。

 実際、ここ長年太陽大命神はおらず、皆伝承的にしか分からないのである。

 挨拶が済むとクィルはアレンの背を押し、民衆の前に出るように言った。

 しぶしぶの入場であったが、姿を現すなり人々は歓声を上げ、大拍手を送る。数万人もの拍手の音は、儀式の間がよく響く造りになっていたのもあってとても大きく、アレンを感動させた。

 学校の校長先生の言葉を思わせるような長々しい各国の言葉に、うっすらと眠気を感じるほどまでに緊張の糸は解けていく。

 そうなると、余裕が微かに出てきて―――会場全体を見回し始めた。

 アレンや各国の王といった身分の高い者達は二階席、一階席の民衆の衣装はバラバラで、正装の者や民族衣装っぽいものやらを着た者もいる。

 十国のそれぞれの領土はその名の順に緯度分けされていて、各国をエスカレーターみたいなものが一直線に繋がっているので、最も遠くから来ている海王星の人々でも三時間くらいで来れる。

 海王星と言えば、とアレンは海王星の守護神であるレイトの方を見た。

 アレンから見て、およそ―――レイトの席は真向かいにあたる。

 レイトが時々チラっとサラの方を見てはしょんぼりとしているのが目に付いた。

 クィルから二人は幼馴染みだと聞いていたわりには、何だか余所余所し過ぎる気がしていた。

 控え室で二人は離れた椅子に座っていて言葉も交わさず、顔も合わせなかったのだ。

「今日のメインイベント、呪文の詠唱を行います。アレン様、前へ」

 呪文の詠唱、その存在を忘れかけていたアレンは、一気に青ざめた。

 そろそろと立ち上がって一階のステージへ行き、中央に立つ。

 油汗が一筋伝って行った。

「出来ないんじゃないか?」

「いや、ただ単に適さないだけでしょ」

 「そもそも魔力ゼロとか?」

 民衆がざわめき始めた。

 見兼ねてクィルが、「王様、このままでは・・・」と耳打ちする。

「大丈夫だ。あの子なら―――アレンなら、きっと」

 王サフィールは少しも疑わず、ステージのアレンを見た。

 その言葉は、まるで自分に言い聞かせているようにもとれる。

 サラやレイト、ステア、テイムらの顔にも焦りの色が浮かぶ。

「ですが、このまま呪文が言えないということになれば・・・アレン様を選ばれたのは王様です。王様への国民の信頼にもしものことがあれば・・・!」

「それは、まあ・・・そうだが。そうなったら私の責任だ」

 一生懸命説得を試みるクィルを手で制し、王は断言した。

 一方、アレンの方は無言で四分経過しそうになっていて、人々も同様に動揺している。

 突然アレンの手を誰かが握った。

「えっ?」

 思わずたじろいたアレンの横には同年代の、半透明の少女が立っていた。

『大丈夫。大丈夫だから。・・・私と一緒に』

 他の人々には少女の姿は見えていないようだった。

『トゥルス・ノア・ドービル・ネアレス・シェーダ』

「トゥ・・・ルス、ノ・・・ア、ドービル・ネア・・・レス、シェーダ・・・」

 所々、つまり、アレンが言えなくなったら少女が教える、その繰り返しだった。

 だが、真似でも呪文を唱え始めると足の下に魔法陣が浮かび、翼が現れる。

 民衆は皆黙り、ことの末を案じた。

『クラッセ・ジャスティアーノ・・・え?』

 少女がアレンを驚いたような目で見た。それは、隣でアレンが彼女よりも先のフレーズを言っていたからだった。

「――――・・ケルト、ラージア・・・シャルノーラ!」

 言い終え、振り返るとそこに少女の姿は無かった。



 こうして儀式は無事終焉を迎えたのであった――――・・・






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