第六章『木の掟』・第三話『正された道・本来の姿』Part3
さて、レウィンがレイトだと判明しました(やっとかー。)
これから糖度高めの恋愛が動き始めます。
「そいつ、非常食になるんじゃねえ?」
テイムが横目でサラに抱かれて食事中のウサギを見た。
立ちウサギ科の、オクタヴィアヌス。
某国のお偉い方の名前が悪用されたような名を持つそのウサギは―――
「ダ、ダメぇっ!リリアンはっ・・・・」
オスなのに、リリアンと名付けられていた。
「エサ代もバカにならないし」
「エサ代!?私のご飯を分けてるじゃない!問題無しよ」
「そりゃそうだけどさ、結局のところレウィン・・・・・・じゃなかった、レイトにご飯譲って貰ってんじゃん」
「テ、テイムさん!!僕はいいんですよ」
テイム様、ステア様と呼んでいたレイトだが、同じ守護神同士ということで”さん”にするように言われ、呼び方を変えることになった、
それはいいけれど、どうもレウィンがレイトだと信じ切れていない、いや信じても、癖は簡単には抜けないというものだ。
レイトはそれを苦笑しながら流している。
レウィンがレイトであると判明し、暫く話してからステアは城に戻って行った。
何ともあっさり残り二人の協力が得られ、早々に太陽国に引き返すことになった。
まだ一日二日は帰国準備(食料の調達等)で木星国に留まるつもりだが。
太陽国へ向かいながら、金星国ではサラ、水星国ではテイムと別れることも決定している。
火星国で出会ったリフィアは、もう身寄りがないらしく一緒に太陽国へ行くことになった。
「レイト、お前、いろんな噂あんだろ。あれ、どーなんだよ」
《噂って?》
「五歳にして海王星の城の書物を全て読み、一字一句間違えずに暗唱出来た超天才児。知能面では素晴らしい才能を持ち、何ヶ国語も操れる・・・・・などなど」
「そうですね。一応は全て本当のことです。ですが、僕は武芸やスポーツは不得手なんです。海王星出身だけあって、泳ぎだけは得意ですが」
自慢することが滅多に無い彼の情報は定かでないところが多い。
修飾されているところも多いのであるが、それでもその噂は一応全て本当の事であった。
「あとさ、金星国王とかはお前の正体知ってたとして、他は?」
「少なくとも私は知らなかったわ」
「そうですね。ご存じだったのは、国王陛下と王妃様、フェン様もです。あと・・・・僕の世話をしてくれる数人くらいでした。・・・・・・僕が金星国に初めて行った時、凄かったんですよ。庶民風に表では扱ってくれたのに、城の皆さんってば―――姫様のいない所で土下座なさってああ言ってすみません、こう言ってすみませんって。僕は全然気にしていませんと言っても聞いて下さらないし」
他にも、金星城でのさまざまなエピソードをレイトは皆に言って聞かせる。
サラがその天才少年について知ったのは八歳の時で、興味を持ってどんな人であるかを城中の人に尋ね回ったことがある。
自分のことを褒めるサラを、レイトは照れくさそうに見ていた。
城の人々は、そんな彼らを微笑ましげに見ていたものである。
それも数多いレイトの語ったエピソードの一つだった。
一方、綾乃には気になることがあった。
”レイト”、その名が。
嘗てどこかで聞いた名だった。
そこで視界に入ったサラに、彼女を思い出す。
そして彼女の想い人である、十七歳の少年を。
「桜井、麗人・・・・・・」
もしかしたら。
もしかしたら、彼が――――、レイト、その人の表世界の姿ではなかったのだろうか。