第五章『火の掟』・第三話『銀色の光・放たれた力』Part3
「ったく・・・・・・それより。お前、ディライテの言った通り・・・・・麒麟だったのか」
そこではた、と思い出す。
何かディライテが言っていたような・・・・・。
「“麒麟”って・・・・・・・」
《お兄ちゃん、これ》
近付いてきて差し出された羽に、湊生は何だそれと言わんばかりの顔をする。
「羽?銀色じゃないか。変わってんな」
「湊生さん、自分の・・・・・翼を。翼を、見てみて下さい」
「は?翼?」
ひょいっと大きく広げた翼に。
皆あんぐりとした。
視界を覆い尽くす銀色・・・・・。
《銀色になってる・・・・・・》
その翼から離れて尚シャラシャラと光の零れる羽とその銀色に輝く神々しい翼を交互に見ながら、見惚れたように綾乃が呟く。
湊生もあまりの変化に呆然としてしまっている。
「おそらく、力を解放したからでしょう。麒麟とは、そのように銀色の―――銀翼の持ち主のことを言います。麒麟の潜在的な魔力は、通常の羽である白翼の者の比ではないと聞きます。ランクはS~Cまであると考えられ、稀少にしてまず目に掛かることは無いと言われているのです」
「それが・・・・・この銀の翼」
湊生は自分の翼をばさばさと動かして、テイムはその翼をまじまじと見た。
「ああ・・・・・俺も、初めて見た・・・・・」
「僕もです。しかも、何といいますか・・・・・テイム様。これは”二段階覚醒”というオプション付きですね」
「そうだな。元々は白翼だったから・・・・・・」
《白から銀になるのが、二段階覚醒・・・・・ってこと、エスティ君?》
隣に立つレウィンの顔を覗き込むようにして問うと、僅かにレウィンは動揺したように見えた。
「はい。二段階覚醒の麒麟は、銀翼Sランクの上に位置します」
《じゃあ、訓練次第で十分戦力になるってことね》
「十分過ぎますよ・・・・・・って、あ、あれ?」
きょろきょろして、最終的に上空を見上げたレウィンに、皆の視線が集まる。
代表して湊生がどうしたのかと訊くと、レウィンは可笑しなことを言い出した。
「風だ・・・・・・」
「は?」
「微かなんですけど・・・・・・・上から、風が」
「お、ホントだ」と、湊生も風を感じたらしく納得する。
他のメンバーはは?と言った顔をしていた。
「気になることがあるからちょっくら上まで行ってくらぁ」
「はい、お願いします」
《どういうこと?お兄ちゃんは何しに上に飛んで行ったの?》
「先程の戦いで、上空に結界の穴が開いたみたいです。もしかしたらそこが薄いという結界の造りだったのかもしれませんね・・・・・・あ、湊生さん。どうです?脱出出来そうですか?」
大丈夫!!とジェスチャーで湊生が答える。
出られるなら長居は無用と言わんばかりに、翼を持つ者達はそれぞれ無翼者達を抱え込んだ。
テイムはレウィンを。
湊生はリフィアを。
そしてサラは魚のぬいぐるみ状態の綾乃をずっと抱えていたレウィンから受け取って、更に立ちウサギを腕に抱えて空に舞い上がり、遥か上空の結界の歪みから無事に火星国を抜けた―――――。