第五章『火の掟』・第三話『銀色の光・放たれた力』Part1
「サラ!!“守護”だ!」
テイムは全体を水のレーザーで全体攻撃を仕掛けながら叫ぶ。
小さくサラは頷いて一歩後ろに下がり、綾乃達戦闘員を確認して結界を張った。
守護が発動して不可視の膜が形成されていく中、綾乃の腕に抱かれた湊生は見上げるようにして綾乃を見た。
必死に前を見据え、敵の数に恐怖する綾乃はその視線に気づく訳も無く。
湊生は綾乃の手から伝わる震えを直に感じ、少し悲しげな表情を浮かべた。
恐怖もある。
加えて綾乃の目につくのは、テイムの魔法。
魔法が使われる様は湊生との分離の際に見た―――というか体験?したことはあったが、守護神の使う魔法を見たのは初めてのこと。
とにかく命綱はテイムの魔法だ。
人数的に不利としか言えないが、どうしようもない。
サラに攻撃系の魔法はなく、レウィン、綾乃、湊生、リフィアは非戦闘員。
そうなれば・・・・・・・・。
「水よ、俺に従いて・・・・その力、顕現させん!!」
紡がれた呪文が、テイムの足元から水を召喚し、上空に集うとそこから大量の水が降り注ぐ。
テイムの頭上に水球は浮かんでいるのだが、その外見とは比にならない量が流れていた。
ポーン達はその水に翻弄されていたように見えた・・・・・・が、その都度姿勢を立て直す。
もしかしたらあまり効果は無く、一方的に疲労させられているのではないだろうか。
不意にディライテが不敵な笑みを浮かべた。
「確か水星国守護神、お前はDランクだったな」
「それがどうした」
「言わなかったが、聞いて驚くなよ」
「早く言え」
魔法発動中に加え、立て続けに行使して魔力が消耗し、それが体力にも影響を及ぼし掛けている。
そんな状態で、テイムはイライラし始めていた。
「ここにいるポーン、最低はFランクもいるが・・・・平均はEランク、勿論Dランクの奴もいるんだ」
その言葉に、テイムは眉を顰めた。
「Dランク一人に対して、あんなに多くの敵・・・・・しかも、ランクは同等、ディライテに至ってはそれ以上として・・・・・・勝ち目ないですね・・・・」
サラの織り成した結界の中。
綾乃の傍らに立つレウィンが歯噛みして言った。
「ランクって何のこと?」
「あ、このことまだ綾乃さんには説明していませんでしたね。状況が状況です、手短に言いますね」
守護神達魔力持ちには、魔力のレベルで最低ランクFから最高ランクSまで7ランクに分けられている。
たった1ランク違うだけで、魔力の差は半端でないという。
そのランクが、テイムはDランクということだ。
「じゃあ・・・・・」
「はい、かなりまずい状態です」
「ごめんなさい、私が戦力になれればよかったのに・・・・・」と、サラが自己嫌悪に入ってしまう。
「守ってくれてるじゃない。気にしないでっ」
「うん、ありがとう・・・・・」
とはいえ、やはり一人でも戦える人がいてくれたら・・・・・と、思わずにはいられない。
サラには申し訳ないけれど。
目の前、結界の向こう側ではテイムが必死に戦っているのだ、手助け出来ないのはサラ同様綾乃だって歯痒い。
魔力の無いことが。
自分が、守護神でないことが。