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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第五章『火の掟』
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第五章『火の掟』・第二話『白衣の少女・碧き森のワナ』Part2





 もしかして、身投げ?

 そう考えて綾乃は焦った。

「ちょ、ちょっと!どこ行くの?」と綾乃が追いかけながら問うと、

「向こうに人がいるんです!・・・そんな報告は受けたことが無いのですが、話を伺うべきだと思うんです!!」レウィンは振り返りながらそう叫んだ。

 すぐに皆も米粒サイズに見えるほど遠くに立っている人の姿を捉えた。

「すみませーんっ!少しお時間よろしいですかー?」

 どこの口説き文句だ。

 レウィンがこの国の出身の方ですか、と尋ねると、綾乃やレウィンと同い年位の少女が小さく肯定の意を示す。

「何でここにいる!?火星国は危険だと教わらなかったのか」

 綾乃は男勝りな女の子と捉えたが、村娘としては普通の口調である。

「知っている上で、こちらを通らせていただきたいと思いまして」と、レウィンは苦笑した。

 少女は半ば呆れ顔で目の前のレウィンの手首を掴み、また近くにいる他のメンバーの服やら荷物の紐やらを引っ張って早歩きで立ち去ろうとする。

「アタシの名前はリフィア。木星国出身なんだけど、小さい頃“民狩り”に合ってこの国の牢屋に入れられてたんだ」

「じゃあ、貴女は逃げてきたの!?」

「そうだ!!なのにお前らはバカか!?わざわざこんなところに・・・・・。しかも、分かっているのか、一度この国に入ったら出られないってことだよ!!」

 引っ張られる力に抵抗するかのように、皆無理矢理立ち止まった。

 今、何て・・・・・・?

《オイ、今何て言った!?出られないだと!?》

「冥王星国国王の許し無しには、出ることは叶わない!」

「なら貴女は何で、出られないと分かっていて逃げ出したの!?」

「そうですよ。リフィアさん、どうしてそんなことを・・・・・?」

「それどころではない!!後で説明するから、あそこの森まで走れ!!」

 リフィアの焦りが相当なものと察し、全員頷いた。

 火星国と木星国の国境付近、木星国の影響か結構広い森があり、隠れるには格好の場所だった。

 広さで、例え森が疑われようと逃れられる可能性は高い。

 少なくとも、何も隠れられるようなものが無いところに突っ立っているよりはいい。

 皆一斉に駈け出した。

「帰られねェなら・・・・・自活か!?・・・カッコイイな」

 走りながら何故かわくわくしているテイムの頭を湊生が殴った。

 因みに自活がどうとか言っているが、木星国で既に一時的自活をしているのに気付いていない。

「テイムさん!そんな暢気な事を言わないで下さい!」

「すまん・・・」

 テイムが横でレウィンと湊生に叱られているのを聞きながら、帰れないことに綾乃は恐怖を感じていた。






《・・・・・。何だそれ?》

 湊生は、テイムが捕まえてきた生き物を見て呟いた。

 ウサギのような外見をしつつも、二足歩行をしていて、その顔はあまりにもキモい。

「え?・・・何って、食用ウサギさ」

 ウサギなんだ、やっぱり・・・。と、まじまじと見る綾乃にサラが説明しようと近寄ってくる。

「これはね、立ちウサギ科のオクタヴィアヌス。金星は砂漠の国だからいないの―――だから私、実物見たの初めて!」

「綾乃さん、湊生さん、この食用ウサギは太陽国でも養殖されているんですよ」

《こんなの養殖すんの!?わざわざ!?》

 食用ウサギの長い耳は一つに束ねられ、しっかりとテイムに掴まれてしまっている。

 既に抵抗することをやめ、荒んだ目をしているその姿はなんとも言い難い。

 美味しくなさそう・・・・・そう、食べたことも見たことも無いメンバーは思った。

《今日も野宿だな。しかも見つからないようにハンモックもダメだな。地べたに寝ることになるが・・・・・俺はいいとして、皆は一応一国の王子・姫だが大丈夫か?》

「うい」「大丈夫です」「いいよ」と、それぞれ了承した。

 ただ、テイムが一応という言葉に過剰反応していたが。

《皆タフだなあ。・・・・・綾乃もいいのかぁ、お肌の曲がり角》

「ちょっと黙っといて」

 低空飛行中なのをいいことに、一言多い湊生を綾乃は踏み付けた。

 潰れた湊生を無視して、綾乃は森の中でもより安全な場所を探し始める。

 幼い頃から木登りを遊びとしてよくやっていたので(ハンモック愛用)、それゆえ木の上で見張り役を引き受けようとした綾乃に、先程の冗談の詫びか飛行能力のある湊生が見張りを買って出た。

 テイムもレウィンもサラも綾乃が見張りをするのを反対し、湊生とテイムとレウィンがその順番で見張りをすることになった。

 次第に日が暮れ、オクタヴィアヌスがテイム所持のロープで縛られ、焼かれそうになっていた。

 確かにお腹は空いたけれど・・・・・。

「兎、まさに食われんとす」などと綾乃が冷静に述べ、それを聞いて青褪めたサラはそれを引き止めて、

「ね、やっぱりやめましょ?可哀相よ」と言った。

「でも暗いし、食料他には手に入らないと思うぞ。それにコイツ美味いんだよなあ」

《俺もサラに賛成。そんな生き物口に入れたくない》

 テイムは異議を唱え、湊生は眉間にしわを寄せてウサギを見つめる。

 と、そこら辺をうろうろしていたレウィンが嬉しそうな顔をして戻ってきた。

「やめましょう。木の実が意外と近くにあるそうですよ。そっちを食べましょうか」

 その提案を聞いて喜んだのは湊生とサラだけでなく、ウサギもであったようで、サラとレウィンに急激な懐きを見せる。

 一方湊生は酷いことを言ったために嫌われ、勿論テイムも嫌われてしまった。

 木の実はすぐに見つかり、量もあったので腹一杯食べ、森に入ってすぐに眠ってしまったリフィアの分をハンカチに包んでとっておいた。

 まだ九時にもならないうちに一本の巨木の下に並んで寝転んだ。

 端からテイム、レウィン、ウサギ、綾乃、サラ、リフィア。木の上に湊生といった感じである。

「この子私が飼う」と、ウサギを抱き締めてサラが言った。

「そっか。じゃあ名前を決めないとね」

 隣に寝転がる綾乃は、気持ち良さそうに眠っているウサギを撫でた。

「うん、考えてみる」

「にしても―――火星も夜は冷えるね。砂漠も夜は寒いから似ているなぁ」

 湊生はその会話を、興味津々かつ楽しそうに耳を傾けていた。

 どうやらテイムやレウィンは早々と寝てしまったようだ。

 それも仕方がない、交代の見張りであるから寝られる時に寝ておいて貰わなければならないし。

 じゃあ、と夜空を見上げていたサラが綾乃の方を見た。

「表世界は?寒いの?暑いの?」

「いろいろ、かな」

「綾乃が住んでいたところは?」

「春夏秋冬があって・・・」

「シュンカシュウトウ?」

 サラが首を傾げ、知らないことを示す。

「春、夏、秋、冬の四つのシーズンがあるんだよ。夏になれば暑いし、冬になれば完全に川の表面が凍ってしまう」

「それは、地球国や海王星国の気候と似ているわ」

「そうなの?にしても、裏世界の国境線を跨いだ環境の変化は本当に面白くない?」

「見慣れてるから、面白いとか珍しいとかは特に思わないかも」

「国を越えることで、体が変化に適応出来なくて体調を崩す人・・・・・っていない?」

 いるいる、と答えるサラにやっぱりと綾乃は苦笑交じりに言った。






「・・・マグマに満ちた大地に生まれた森・・・」

 綾乃達が眠って暫くして。

 さっさと眠ってしまった筈のレウィンがその場にいつの間にか座っており、呟くように言った。

「気のせいで、あればいいのですが・・・・・・・」

 その言葉を、木の上の湊生はしっかり聞き取っていた。

 見張りをしなければいけないのにも関わらず、湊生はあまりの眠気に微睡み始めながらその言葉の意味を考え始めた。

 確かに金星の砂漠にはオアシスがある。

 しかし、マグマだらけのこの火星には水は一切無く、そもそもこんな場所に森があることがおかしい。

 そういえばこの森に入る時、先程謎の言葉を発したレウィンが渋っていたなあ、とふと湊生は思い出した。

 それは―――この森の存在を疑わしく思ったからではないのか?

 レウィンの独り言から少しして、どうやら本当に寝てしまったらしい。

 静まって、そろそろ次交代予定のテイムを起こして自分は寝ようか、なんて考えていた時、ハッキリ何を言っているのか分からない感じの寝言が聞こえてきた。

 多分、綾乃だ。

 下を見ると、四人がまるで芋虫のように丸くなっている。

 湊生はフッと鼻で笑って目を閉じた。




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