第五章『火の掟』・第一話『宝玉の意味・湧き満ちる溶岩』Part2
「・・・・・・っ」
突然テイムの背中に負ぶわれているレウィンが身動ぎをした。
その身を支えるテイムが逸早く気付き、「レウィン!?」と声を上げる。
聞こえた名前に、仲良く会話中だった綾乃とサラも、そして優雅に泳ぐ湊生もパッと振り向いた。
「レウィン!!」
「エスティ君!?」
《レウィン・・・・!!》
何度も名を呼ばれて完全に覚醒したレウィンは、自分がテイムにおんぶされていることを知って頬を急激に赤らめた。
「わっ!?す、すみませんテイム様!!僕・・・・!!」
「いい、気にするな。それより大丈夫か」
「はい、もうすっかり」
元気そうで皆心底安心して、それから矢継ぎ早に質問が繰り返される。
「何があったの!?」
《どうした!?》
「えっと・・・・その。急に立ち眩みしてそのまま意識を失って気付いたら今でした・・・・」
自分でも訳が分からないと言って苦笑いする彼は、ゆっくりとテイムの背から降ろされた。
支えを失った途端、レウィンの身体がふらつく。
すぐさま綾乃が彼の背に手を回し、転倒を防いだ。
「エスティ君、足が・・・・」
「はい・・・・申し訳ありませんが、足に力が入りません・・・・」
《ちょっと休むか。オイ、テイム。あの辺安全そうだぞ》
溶岩が噴き出す地帯から少し離れたところに、比較的安全そうなところがあった。
皆今まで休み無しに一日歩いてきたので、すぐさま座り込んでしまった。
「ひ、膝が笑ってる・・・・・・」
「私も・・・・・こんなに歩いたの初めて」
《足場も良くないしな、そりゃキツいだろ》
うんうんと腕―――ではなく、胸鰭を組んだ湊生が頷く。
それに関して綾乃は気になる点があった。
空を飛んでる湊生には足場なんて関係ないんじゃ・・・・・。
だが疲れ切っていて言う気も起らない。
寧ろ、無駄な体力の消費は控えさせていただきたい、ということで無視。
「火星国の入り口だからこそ問題はないが、木星国付近には陣が張られている。休めるのは今だけかもしれないから今のうちにゆっくりしておけ」
「うん、わかった」
「はい。そうします」
《ほい》
綾乃だけは、返事をしなかった。
自分のバッグの中を漁り、必死に何かを探している。
そうして取り出したのは、一つの木箱。
「綾乃?それはなあに?」
「これにはね、サラちゃんやテイムの表世界のもう一人の自分が入っているの」
「もう一人の私・・・・・?」
「そう。お父様が信用に足る人物だと判断したなら、これを渡しなさいって」
木箱のふたを開けると、中には五つの玉が入っていた。
それぞれ色が異なっていて、綾乃はサフィール王から教えられた色の宝玉をそれぞれに渡した。
水色は水星国の色。これを水星国守護神であるテイムに。
黄色は金星国の色。これを金星国守護神であるサラに。
緑色は木星国の色。それを木星国守護神であるステアに。
青色は海王星国の色。それを海王星国守護神であるレイトに。
最後の紫色は冥王星国の色。これは誰の手にも渡らぬよう、守り抜くように、と。
見せられた木箱の中の五つの玉。
何て言うか・・・・・どれも寒色なのが何気に悲しい。
黄色は一応暖色に含まれるけれど、ちょっと微妙だ。
他の国のイメージカラーだが、
太陽国は橙色。
地球国は白色。
火星国は赤色。
土星国は茶色。
天王星国は紺色という感じになっている。
綾乃は黄色の宝玉をサラに、水色の宝玉をテイムに差し出した。
それを受け取った二人は、直径十センチの玉を凝視する。
くるくる回しながら見ていたサラが不意に声を上げた。