表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第三章『砂の掟』
28/155

第三章『砂の掟』・第二話『少年の憂い・再会の祝詞』Part3

『――――ねえ・・・・今、アナタはどこにいるの?”レウィン”――――』  砂漠の国である金星国は、不可触賤民出身の王(通称”奴隷王”)によって治められている。  その娘であるサラ(サラネリア=ノーリネス)の、護衛兼遊び相手として彼女に仕えていた使用人の息子が、突如行方不明になってしまった。  二年後。久々にサラは彼と再会することになったが・・・・・・!?






 金星城の、東塔の一室。

 そこに眠る金の姫の指が、僅かに動きを見せた。




 一方、シンメトリーを重視した金星城の普段人気のない反対側の塔―――西塔に、ゆらりと影が螺旋階段を上って行っていた。

 ぶつぶつと、その影は独り言を発する。

 時々、苛立ちから興奮しているらしく語気が荒げられていた。

 

 そうか・・・・・くそ、死んでなかったか


 あの日、あの時、レウィンは俺が殺した筈だ・・・・・・・それなのに・・・


 どう考えても、このようなことをするのは冥王星王、あの人を覗いて有り得ない。


 レウィンが生きていると知って・・・・・平生を保つのがやっとだ・・・・・どうする、手に掛けるか、一旦は様子を見ておくか。


 だがまず、聞いておかなければならない。



 言って取り出したのは、一枚の手鏡。

 影が、“冥王星王、冥王星王”と名を呼べば、自身が映っていたその鏡は怪しく光り、そこに別の情景が映る。

 一人の男がすぐ前に立っており、その後ろには何かの研究所のような装置が無数に設置され、画面 端には、凄く気になる青色の少し粘り気があってドロドロした液体の入った縦長のチューブがあった。

 チューブは見える限りで三本。

 床から天井までずっと繋がっているようだった。

 チューブの中には、蹲った人の姿が見える。

 だが、何分その場所が薄暗い上に、端っこに少し見える程度であるから、やっと人だと認識出来る程度だった。


 どういうことだ、冥王星王!!


 確かに、俺はレウィンを殺した!!


 なのに、何で奴が生きている!!答えろ!


(ハハハ・・・。そいつには、まだ使い道があるんでな。そう易々と死んでもらっては困るのだ。)


(そもそも)


(これは、お前が独断で行ったことだぞ。ふざけるな、と言いたいのはこちらだ)


 ぐっ、と歯噛みして影は押し黙った。


 何度でも。


 何度でも、俺は殺す


 アイツが存在する限りは。


(まあ、待て。いいことを教えてやろう)


 何だ、そのいいこととは?


(殺してしまえば、それで終わりだろう?それでは、お前としても楽しくなど筈だ。それよりも、嬲り、苦痛に泣き叫ぶ姿を見て楽しむ方がいいとは思わないか)


 わかったから、言え。


 何だ、そのいいこととは。


(言うが、行動を起こすのはまだ先にしろ)


 いつならばいいんだよ


(そう―――、二つ条件がある。一つ目は・・・・・、そして二つ目は・・・・・だ。理由については干渉を禁ずる。それくらいは待てるだろう?せっかちなお前でもな。なに、理由はお前に損を齎すことではないとだけ言っておこう)


 分かった。待つ。


(ならば言う。それは―――)


 影の、息を飲む音が響いた。





「姫様の部屋は、こちらです」

 翌朝。

 国王夫妻の許可を得、案内を買って出てくれた女官の後をついて行く綾乃、レウィン、テイム、そしてまたしてもぬいぐるみのふりをしている湊生は、東塔の階段を上っていた。

 城全体としては三階建てであるが、塔限定では六階にもなる。

 階段の方も急な造りになっていて、段数も生半可なものではないからぬいぐるみとしていつも通り レウィンの腕の中にいる湊生以外は息が上がり、膝が笑っていた。

 当然男の人の方が体力がある為、疲れ度合いはいくらか少ないが、上るのに適していないとしか思えないその階段では流石に辛そうだった。

 唯一ついい点があるとすれば、灼熱の太陽の照りつける中、その建物は異常なほどにひんやりとして心地いいことだ。

 上るのに苦しんで汗をかいているので、結局のところ変わらない気がするが。

とにかく慣れているらしい女官の足取りは軽かった。

「おお・・・・・やっと着いた・・・・・」

「そうですね・・・・ちょっときつかったです」

「俺もだ・・・・・」

 全員完全にぐったりとしている。

 その様子に苦笑しながら、女官がその部屋のドアを開いた。

 途端、綾乃は“何か”を感じた。

 気配、と言えばいいだろうか。

 見えないが、部屋の端に置かれたピンクの天蓋付きベッドで眠っているであろうサラ以外には誰もいない。

 いないが、いるのだ。

 表世界のサラ、こと鈴木砂羅の姿が脳裏を過る。

 ここに、今は見えないけれど・・・・・いるという。

(来たよ・・・・・目覚めさせてあげられるか分からないけれど・・・・・)

 心の中で呟く。

「姫様。皆様がいらして下さいましたよ」

 天蓋を捲り、中を覗けば。

 金色の、ウェーブのかかった長い髪が可愛らしい姫が、横たわっていた。

 綾乃は、驚いた。

 湊生曰く、表世界と裏世界の容姿は似ているという。

 二人の違いは、きっとその年齢による身長差と、髪の毛の長さではないだろうか。

 鈴木砂羅は、セミロングよりももう少しだけ長い髪を、顔の左右に一房だけ残して頭の高い位置で一つに束ねている。

 打って変わって、サラの髪は寝ているためか束ねられてはおらず、長さ的には腰くらいまであるのではないだろうかというくらいだった。

「この人が・・・・・金星国の守護神の・・・・・サラ」

 ひょっこりと女官に気付かれないように身を乗り出してサラを見ようとする湊生のため、レウィンは見やすい位置に移動した。

「はい。そうでございます」

 項垂れる女官は、サラが眠りについた後にサラの世話係に任じられたらしい。

 今まで、様々な手段で起こそうとしたのだろう。

 最後の希望が綾乃達であると目が訴えていた。

 でも、起こせる絶対的確証などない。

 可能性があるだけ。

 綾乃は、その期待が少し負担に感じた。

 それは、他の三人も同じで。

「姫様は、もう半年も目覚められておりません。王様からお伺いしましたが、貴女方は太陽国から使わされた太陽大命神様の関係者御一行だとか。それでしたら魔力を持っていらっしゃるのでございましょう?お願い致します、姫様を・・・・・!!」

 何度も何度も、頭を垂れる。

 綾乃は女官の背中を支え、顔を上げさせた。

「私共も、サラ姫が目覚め、旅を共にして貰うことを目的としています。何があっても、この裏世界の命運の為、彼女自身の為・・・・・方法を探します。何としても」







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ