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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第二章『水の掟』
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第二章『水の掟』・第二話『絶えた血・朽ちた王座』Part3

『お前には、もう王たる資格は無い』大切な人を次々に失くした少年王から、残ったその王権までもが奪われ、新たな王家が立って早二十年。未だに、新王家は旧王家の支配を受け続けていた。その国の守護神・テイムは、綾乃達を大いに巻き込んだ復讐計画を立てていて・・・・・・!?






「何だかお互い励まし合いみたいな感じだね」

 苦笑する綾乃に釣られ、レウィンまで口元を緩ませた。

 ・・・・その時。

「!・・・・うう、頭痛い・・・」

 急に綾乃が頭を抱え込んで、悲鳴のような声を上げる。

 その頭痛はどんどん酷くなって、刺すような痛みから、頭が割れてしまうような感覚に襲われた。

「頭・・・・割れそうっ・・・!」

「大丈夫ですか!?」

「痛い痛い痛いっ・・・・・!」

「あ、綾乃さん・・・・!」

 その痛みを変わってあげられたら、とレウィンは思う。

 綾乃の痛がり方は尋常ではなかった。

 目尻に涙を浮かべ、ただ悲鳴交じりの言葉を漏らすだけ。

 何か出来ることはないか必死な顔で周囲を見回したところ、室のドレッサーの上に大切そうに置かれた小箱に目を留めた。

「もしかして・・・・・!」

 立ち上がって手に取り、開いたその小箱の中には、レウィンの予想通りのものが入っていた。

 それはあの城下町に行った時、自分が綾乃にプレゼントしたもの。

 革紐で作られたそれの先端には、直径1㎝くらいの大きさの透明の硝子に包まれた虹色の石が付いている。

 各国の宝石の廃材を重ねて接着し、丸く削ったもので、因みに手ごろな値段で手に入るものだ。

 このペンダントは大変な人気商品で、その売りは一回だけ魔法が持ち主を守る時に発動するかもしれないという半伝説的な商品。

 自分の見立てによると、今自らの手の中にあるペンダントは珍しくどれか分からないけれど、十層の内三層が魔力を秘めた物。

 もし、第三層目の金星国産出の石が魔力を持つものであれば。

金星国守護神が持つ“癒し”が使える。

 その可能性を・・・・・!

「綾乃さん!これ、首に掛けて下さい!もしかしたら・・・・・!」

 痛みに耐えるので精一杯の綾乃はペンダントを受け取るどころではなかったため、レウィンがペンダントを綾乃につけた。

 レウィンの手が、ペンダントから離れたその刹那。

「・・・・・っ!?」

 その虹色の石が閃光を帯び、やがて収束した。

 あまりの眩しさに思わず目を閉じたレウィンが恐る恐る目を開けると、綾乃の身体がぐらりと傾き、ベッドに倒れこんだ。

 ピシッ

 音を立てたのは、綾乃の胸元で輝くペンダントの先端。

 虹色の玉の一部にヒビが入っていた。

 あともう二回使えば、球の部分は綺麗に砕けるだろう。

 でも、取り敢えずは。

「良かった・・・・・。“癒し”あったみたいですね」

 倒れた綾乃の顔色は、先程までとは明らかに違う。

 苦しみ始めて青白くなった彼女の顔の、その頬に赤みがさす。

 瞼が閉じられてはいるが、規則正しい寝息が聞こえる今、彼女はただ寝ているだけだろう。

「無力にも、僕には貴女を守る力はありません。その代わりに、この石が綾乃さんを守ります。だから・・・・・だから、安心して眠って下さい」

 乱れた綾乃前髪を両脇に払い、布団を整える。

「頼りないかもしれませんけど、僕ここにいますから」

 安堵したレウィンは、気が抜けてベッドの傍に膝をつき、突っ伏すような形で眠ってしまった。





《おーい、レウィン、交代・・・・・って、んん?》

 一時間ほどして、綾乃の看病を代わろうと室に入ってきた湊生は、そこに広がる光景に目を細めた。

《二人とも気持ち良さそうに寝てんな。しかも、呪いが解かれてる》

 そして、綾乃の首に掛かったペンダントに気付く。

《これの・・・・・・お蔭、か》

 何だそのペンダント、と太陽城を立とうと準備していた時湊生は綾乃に聞いた。

 綾乃は丁寧にペンダントについて話してくれた。

 その時点で、湊生は気付いていた。



 なぁ、綾乃?お前―――レウィンのこと、好きなんだろ?



 自分の知る限りでは、きっと綾乃はこれが初恋。

 優しく見守ってやりたいところだが。

 その恋が、成就する筈もないことを、湊生は知っている。

 レウィン側ではない、そう、今まさに彼に恋する綾乃、その人自身の問題で。

 この旅を、続けるのならば。







 まだ朝にしては少し早い時間。

 そのタイミングで綾乃は目覚めた。

「よく寝た・・・・・・もう体も大丈夫みたい・・・・・あ」

 軽く反対側に寝返りを打った綾乃は、隣でベッドに突っ伏した形で眠っているレウィンに顔を少し赤らめた。

 不意に、レウィンの身体が僅かに揺れ、バンダナで隠れてしまっている目が開いた。

「ん・・・・」

「おはよう、エスティ君」

「お・・・・・おはようございます」

 寝ぼけた声で挨拶をしたレウィンは、自身の体に掛けられているものを見て、僅かに驚いた素振りを見せた。

「あれ・・・・・タオルケットがどうして・・・・・もしかして、綾乃さんですか?」

「ううん、違う。私、今起きたとこだもん。多分・・・・」

 言って、綾乃はレウィンの頭上を指差した。

 そういえば、何だか重い気がする。

 自分では見えないため、レウィンは手を伸ばして触れてみた。

 ぬいぐるみ?

「湊生さん・・・・・?」

「じゃないかな?」

「そうかもしれないですね」言って、レウィンが笑う。

「エスティ君」

「はい?」

「看病してくれて、ありがとうね?」

「はい。綾乃さんは、もう大丈夫ですか?」

「大丈夫。元気一杯だよ。だから、今日はお城に謁見しに行こう!」

 元気が有り余っているかのようにガッツポーズを決める綾乃に、若干レウィンは不安げな顔を向けた。

「病み上がりですよ?」

「うん!遅れを取り戻さなきゃ!」

 飛び起きて、室内に取り付けられた洗面台で顔を洗う。

 フェイスタオルで顔の水分を拭った後、またベッドの方に戻ってきた。

 着替えますか?と、部屋を出ようと腰を浮かせようとするレウィンに動かないよう言い、その頭の上の物体のヒレを摘まむ。

 が、摘まんだくらいで反応する訳もなく。

 彼の偉大な睡眠力には閉口する。

「お兄ちゃん、起きて」

《あと五分~》

「起きてってばー」

《あと十分~》

「起きろ―」

《あと十五分~》

 なかなか起きず、次第に増えていく時間に綾乃は大きく息を吸い込んだ。

「寝るな!!起きなさ―いっ!!!!」

 湊生は即座に覚醒し、動いたレウィンの頭から転がり落ちた。







「謁見の申し込み?」

 書類に目を通し、印をつくテイムは、めんどくさそうに反復した。

「はい」

「ヤツらか?」

「その通りでございます。あの娘も」

 ワーム秘書の言葉にテイムは目を鋭く光らせた。

「通せ」

「あの呪い・・・・・無事に解けたみたいですねテイム様」

「でなければ困るんだよ。でなけりゃ、駒として使えないだろ」

 また一枚印を押し終えて横の山に乗せる。

 その手を不意に止め、ワーム秘書の方を見る。

「さあ、これから始まるぞ・・・・アイツへの復讐が」





毎回毎回書いていますが、活動報告を是非ご覧下さい。



次は第三話に入ります。

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