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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第十五章『光の掟』
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第十五章『光の掟』・第二話『終焉の歌・二分された記憶』





「無駄と知りながら倒そうと思うのか。愚かな」



「無駄かって・・・・?無駄じゃない。俺はこの真実を史実として残す。お前の野望を実現させはしない・・・・・!!」



「うおおおおおおおおお!!!」

 アレンの怒りに伴って、魔力が比べ物にならない程に膨れ上がる。

 呪文なく弾けた光が、呆気無く、その戦いに終止符を打った。







「小父さ・・・ま」

 虫の息だったリフィアが上体を起こし、呟くように言った。

 先程の光が、僅かに回復を齎したのかもしれない。

「ふっ・・・・・私を、倒して・・・・・それ、で、済んだなど、夢々思うなよ・・・・」

 サフィールも、アストレアも床に崩折れ、苦しそうに呻く。

 仮にも裏世界に来たばかりの頃からいろいろと世話を焼いて貰った人だから、後味が悪い。

 今のサフィールは、催眠状態じゃなかったのか?

 シャルテと同じく。

 後悔が過る。

 でももう・・・・遅い。

 が、催眠状態ではないことを証明する普段と変わらぬ瞳が、アレンを見つめる。

 その瞳には、何故か先程までの殺意は感じられなくて・・・・・。

「このままだと・・・・・・異変が・・・・起こ・・・る・・・・何せ、私はこの身体を好き好んでいた・・・・だから、“データ”もまだ・・・・ここにある。・・・・このまま、だ・・・と、この世界が崩壊するぞ・・・・・・」

 何を言ってるんだ!?

「それは、どういう・・・・」

 敵に、耳を貸してはいけない。

 そうは思えど、床に這い蹲っている様なヤツの前では気にならなかった。

 けほっと血を吐き、無理矢理サフィールは呼吸を落ち着けようとする。

「データ・・・・・記憶を二分し、一方は裏世界の中枢に保存・・・・・・もう一方は自分の生まれ変わりの中に入るように操作したって、さっき言ったな・・・・・・。そのデータと、裏世界の存在はリンクしているのさ・・・・・」

「な、何だって!?」

 皆が青褪めた。

 この世界の消滅、だと・・・・!?

「私が死ねば・・・・・・二つとも・・・・データが失われる。さすれば、消えるだろう・・・・・」

 震える手が、アレンに向かって伸ばされる。

 出会った当時のサフィールそのままで、思わずアレンは手を取ってしまう。

 あんなに憎らしいのに。

 許すことなど、絶対に出来はしない相手なのに。

 サフィールと、冥王星王が一致しない。

 させたくない。

「これで、私の一番の野望は・・・・叶えられてしまった・・・・・アレン、すまなかった・・・・・」

「一番の野望って・・・・・!?魔力を取り込んで、支配者になる事なんじゃなかったのかよ!?」

 驚きに、アレンは目を見張る。

「違うな・・・・・・そんなものじゃない。確かに昔は、元の世界に戻りたかったのに戻してくれないこの世界の平和さが許せなかった。でもいつしか・・・・・この世界が・・・・自分を媒体にして成り立っていることを知ってしまった・・・・・・・・。帰れないのは仕方がないのだと・・・・・・。私が死ねば、この世界は終わる。だから私は物理的には死んでも・・・・・その存在は死なないようにした・・・・・それが、次第に苦痛になってきた。死にたい、そう思った頃には、死ねなくなっていた・・・・・・」

「死んでもまた、次の王となる者として命を与えられるからか・・・・・?」

「そうだ・・・・・・。唯一、死ねる方法があるとわかった・・・・・それが、お前に殺されることだ、アレン」

「お、俺に!?」

「だが、ただ普通に殺されるのでは死なない。今までの繰り返しだ・・・・・・・だから、一回のチャンスに賭けた・・・・・今この時、天麒麟の力を有し、怒りを爆発させ・・・・・無呪文の、太陽大命神の最高魔法で死ぬという条件を・・・・・・・」

 だからもう、以降の太陽王は冥王星王にはならない。

 何故太陽国守護神ではなく、太陽大命神と呼ばれるのか。

 ホリスがいた頃は、まだ『死ぬ』方法が分かっていなかった。

 強過ぎる力を持つ息子が、驚異になりそうで怖く感じた。

 ホリスの時からいくつか代を重ねた頃、その方法を知ったのだ。

 その時、太陽王じぶんの命を奪ってくれる者として、名を太陽大命神としたのだった。

「私の代わりに・・・・この世界の依り代と・・・・・な・・・れ・・・・・・・・」

 ついに息絶えたサフィールの胸から、フェトがアイシャの中に戻る時の光のような形の、でも半分に欠けた闇色に揺れる球が浮かび上がる。

 これが“データ”か、とアレンは思った。

 ガラガラという音を立て、建物が、空が、何もかもが崩れ始める。

 視界がぐにゃりと揺れる。

 足元が不安定な感覚に陥る。

 世界が崩壊、しようとしているのだ。

「きゃ!?」

 サラの小さな悲鳴に、皆振り向く。

 すると、サラからも同じように闇色の、半分に欠けた球が浮かび上がった。

 どうしてサラから?という質問は、誰もしなかった。

 記憶を二分し、一方は裏世界の中枢に保存して。

 もう一方は自分の生まれ変わりの中に入るように操作したのならば。

 生まれ変わりはサフィールのこと。

 ・・・・・そして、裏世界の中枢・・・・それが、レイトだったと解釈するしかなかった。






 二つの球は、自然と近付き、一つの球となった。

「俺・・・・・・依り代を担う。この世界を、消滅させることは出来ない。させたくない」

 皆が頷くのを見て、アレンはその球を手に取った。

「お父様」

「・・・・・・フェト」

「次は、僕が継ぎます。その次は、また別の誰かが」

 そうして、受け継いで行きましょう。

 微笑むフェトに、アレンは「頼む」と微笑み返すと、迷いなくその球を自らの中に入れた――――






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