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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第十四章『闇の掟』
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第十四章『闇の掟』・第三話『三つの命・二つのセカイの真相』Part5






 リフィアが、少しだけ目を開けた。

「ごめ・・・・・な・・・さい・・・・・もう、身体が・・・・・動かなっ・・・・・」

 痙攣する体を無理矢理に動かして、その手を床に押し当てて体を支えようとするが、少し体が持ち上がった時点で崩れ落ち掛ける。

 慌ててアレンがその身体を抱き抱えるようにして支えた。

「大丈夫か!?」

 リフィアは苦しさから汗を浮かばせながら、薄く微笑んでアレンの服をきゅっと掴んだ。

「すみませんアストレイン様・・・・・・」

 冥王星王はチャンスながら、アストレアの動きを止めさせてくっくっと腹立たしい笑いを向ける。

「全守護神が揃うことなど滅多に無い。どこか必ず欠けるものなんだけどねェ、時間と空間、それぞれを司る太陽大命神と冥王星国守護神はセットで絶対に欠けないものなんだ。でも、私がホリスを殺してしまったからサ~」

「太陽大命神が、欠けたってことか」

「そっそ。それでバランスが悪くなったのさ。何しろ次期太陽大命神を殺すなんて初めての試みだったからね、予想外なことが起こって。初めはただそのバランス補正の為にリフィアの身体と魂を分離させたんだよ。そして分離したことでリフィアは不老不死となったようだった」

 リフィアのアレンの服を掴む手が緩み、そのまま外れてだらんと垂れた。

「リフィア!?」

 頭はアレンの胸元に凭れるような形になっており、目は僅かに開いているだけ。

「あ・・・・・ああ・・・」

 リフィアの口元から声が漏れる。

 リフィアを失うことは、アレンを精神的に狂わせるだけではなく激しい戦力の喪失を意味する。

 アレンは強い。

 魔力の強さは勿論だけれど。

 それだけでなくて、一行のメンバーのメンタル面を一人で支えられるくらいの器の大きさがあった。

 だが、ここ最近のアレンを見ていたら無敵そうな彼に大きな弱点が現れ始めていたのだ。

 それが、リフィア。

 両想いなのは明らかで、アレンも好意を表に出してはいた。

 一見好きではあれど、命を懸けてまで、といった感じは無かった。

 それほどの「淡い」想いのようだったのだ。

 レイトとは違い、恋愛には奥手なのか興味が薄いのかと思われていた彼だが、意外と内では情熱的なタイプだったのだろうか。

 でもあくまでもアレンはアレン、敵の動向には常に注意を忘れない。

「助けるには・・・・・どうすればいい」

「お父様の力があれば」

「そうです!シャルテ、以前お母様が言っていたこと覚えてますね?」

 うん、とシャルテが答え、フェトの手を掴んでアレンの元へ駆け寄る。

「お父様、お母様は・・・・・一度、死にます。でも、助けられる。その為には、アストレアさんからお母様の身体を取り戻し、時間を巻き戻すことが必要になるんです」

 勝って、下さいと言い、フェトはリフィアをアレンから受け取って離れた。

 非戦闘員をサラが纏めて守護で守り、戦闘員はアストレアの次なる攻撃に備え陣を組む。

 ただ気になるのは囚われたままのアイシャ。

 人質が無くなったと思えば、また囚われる。

 たとえ何らかの方法で彼女を救い出したとしても、また誰かが人質となるのだろう。

 もう、アレンには無駄な戦闘をしている余裕は無かった。

 リフィアは死ぬ。

 助けるには、時間との闘いなのだ。

 誰でも死体を生き返らせられる訳では無い。

 彼女が、肉体を離れた魂だから。

 身体が他の魂によって生かされているから。

 だから、助けられる訳だが、時間がかかればかかるほど生き返らせる時にアレンの体力を奪い、不完全な蘇生となる可能性が有り得るのだ。

 少しでも早く、この戦いを終わらせる・・・・・・!

 未来で教えて貰った、あの方法。

 綾乃が、その身を捧げる・・・・・・方法を。

 無理強いは出来ない。

 例え、その未来を必ず辿らされるのだとしても。

 アレンは、ゆっくりと綾乃の方を振り返った。

 びくりと綾乃が震えたのが、距離があっても分かった。

 いいんだ、そんなことしなくても。

 アレンは微笑んで、それを声無しに綾乃に伝える。

 でもそれが、綾乃を決心させた。

《お兄ちゃん。私、いいから・・・・・天麒麟に》

 サラの結界からするりと抜け出し、アレンの前までやってくる。

「え・・・・・・でも、いいのか、お前」

《いいの。だって、私だってリフィアさん救いたいもん》

 今救えるのに一番協力出来るのは私でしょ?と笑った。

「ゴメン・・・・・ゴメンな」

 綾乃はアレンの中に吸い込まれるようにして入って行った。

 その刹那、アレンの背に金色に輝く翼が現れる。

 アレンは綾乃が入ってきた時にその意識が消えるかのように深い、深い眠りにつくのを感じた。

 無意識の内に涙が流れた。

「ありがとう・・・・・綾乃」

 胸に手を当てる。

 力が増幅していくのが、凄く良く分かる。

 ・・・・・・勝てる。

 傍らに立つフェトは未来世界で父であるその人を見上げ、勝利を確信した。

 それ程までに、アレンの顔付きが変わったのだ。

「回復と攻撃からの防御は任せて」とサラがやる気満々に宣言し、

「頼む!!じゃ、フェト、いくぞ!!」

「うん、お父様!」

 全力の戦いが、後に引けない戦いが、未来では勝利を決めた戦いが、幕を開けた。







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