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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第二章『水の掟』
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第二章『水の掟』・第二話『絶えた血・朽ちた王座』Part1

『お前には、もう王たる資格は無い』大切な人を次々に失くした少年王から、残ったその王権までもが奪われ、新たな王家が立って早二十年。未だに、新王家は旧王家の支配を受け続けていた。その国の守護神・テイムは、綾乃達を大いに巻き込んだ復讐計画を立てていて・・・・・・!?





「本当に、水星国は豊かな国ですね」

 ぐつぐつという美味しそうな音を立てる特製スープを掻き混ぜながら、レウィンは焼き魚担当の太陽大命神兄妹に目をやった。

 身体がぬいぐるみであるがために、火から近すぎず遠すぎずの距離を保って覗い見ている湊生の様子は笑わずにはいられない。

 ヤマアラシのジレンマみたいである。

 現在焼かれている魚は昼間、途中飽きた湊生が離脱して昼寝する中、二人が黙々と釣り上げたもの。

 その数、合計八匹。

《確かに。果物も美味いよなー》

「うん、美味しいよね・・・・おっと、エスティ君、魚そろそろ焼けるよ」

 綾乃の声に、レウィンが手を止めて駆け寄ってきた。

「あ!はい。・・・・・・わあ。焼き加減いい感じですね」

《だろ。腹減った~》

 ぐう~とお腹を鳴らせた湊生に、綾乃は訝しげな目線を送る。

「え?お兄ちゃん食べるの?」

《な!?ちょっと待て。どういう意味だよ!当ったり前だろ》

 湊生は腕を組み、綾乃に迫るように近付く。

 だが、魚に迫られても何も応える訳はなかった。

「だって共食いじゃない。ねえ、エスティ君」

「あははっ!そうですね。それで、どうします?本当に湊生さんも食べるんですか」

《レウィン、お前もかよ》

 その時、少し冷たい風が巻き上がった。

 焼けていく魚を常に視界に入れ、焦げないように注意しながら一旦焼き魚から離れたレウィンは綾乃を手招きし、地面に敷いたシートを飛ばないように重石をさせる。

 一方自身は、皿を用意してその中にスープを注ぎ、重石をし終えた綾乃に手渡してシートの上に並べさせた。

「魚焦げてしまうので、冗談はさておき食べましょうか」

 三人はシートの上に座り、日が落ちて中央の魚を焼いていた火以外の明かりの無い中夕食を取った。

 裏世界の木は平均的に、木の枝が巨木でもかなり低いところから分岐しているものが多い。

 だからその日は、レウィンが用意したハンモックを太く頑丈な枝に取り付けて、そこで眠ることにした。

 先日寝た時は、水星国の気候が春の初め頃あたりのイメージであるが故に若干寒く、夜中に綾乃が厚く温もる布団を配って回ったということがあったので、今日は各自前以ってその布団を掛けた。








「お兄ちゃん・・・・もう、寝ちゃった?」

 斜め下のレウィンのハンモックを覗き、彼と一緒に寝ている筈の兄に声を掛けた。

 表世界ではないから月は無く、お蔭でおおよその時間すらわからない。

 勿論月光も期待出来ず、本来は結構暗いようなのだが、意外と月が無い分瞬く星々がちょうどいいくらいの明かりとなっている。

 因みに、実際の時間的には十時以降くらいといったところだ。

《んにゃ。まだ起きてる》

 隣で熟睡しているレウィンを起こさないように、小声で返す。

 当のレウィンは、旅出発以前フードを深く被っていたが、出発後はバンダナを鼻が見えて目が見えないくらいまでの深さまで被っている。

 そして、夜はバンダナを外す代わりにアイマスクのようなものをして寝ていた。

「ねえ」

《何だ?》

 布団からそろりと抜け出し、湊生は綾乃のハンモックに移った。

 綾乃が布団を少し持ち上げ、横に湊生が潜り込んだ。

「私ね、記憶全部戻ったよ」

《そっか》

「お兄ちゃんがまだ生きてた頃。私、よくお兄ちゃんの部屋に忍び込んで、一人で寝れないからって一緒に寝て貰ったよね。覚えてる?」

 今みたいに、と言って、綾乃は照れたように笑う。

《俺が死んで、表世界では三年経ったんだっけ》

「うん。そうだよ」

《じゃあ、もう4,5年前か》

 懐かしそうに湊生は目を細める。

「お兄ちゃんの趣味の天体観測。邪魔しちゃってたけど・・・・楽しかった。いろんな星とか、星座、惑星見たよね。彗星も見たし、日食も見たよね」

 湊生の趣味は天体観測であり、“星見の会”とかなんとかっていうものに所属し、積極的に活動していた。

 彼の部屋は亡くなった今も当時のまま保管されているため、相変わらずそこの本棚にはびっしり星とか宇宙に関する分厚い図鑑などの本が詰まっている。

 彼の影響で、綾乃も星を見るのは好きな方だが、そんな分厚い本を読むほどではない。

 ただ、ギリシャ神話の星座エピソードの本に限っては、兄に借りて自室で読んだりすることもあった。

《見たけど・・・・・どうした、急に。表世界に戻りたくなったか?》

 よしよし、と綾乃の頭を撫でた。

 いつもは払われるが、少し弱気になっているからだろうか、そのようなことはしようとしなかった。

 寧ろ、少し嬉しそうに見える。

「違うって言ったら嘘になるけど・・・・・私は裏世界好きだよ。留学だと思って、こっちの世界の問題が解決するまで帰るつもりはない。だって、それが私の“役割”なんだもん」

《“役割”・・・・か。俺にもあるんだろうか》

「あるでしょ、太陽大命神殿。」

 寝っころがったまま、敬礼。

《あー。そういやそうだった。そんなのあったなー》

「もう。忘れちゃいけないトコでしょ。ほんっと緊張感というものが欠けてるんだから・・・・」

《それでこそ俺だろ。お調子者で、ノーテンキの篠原湊生!》

 っていうか、忘れてるんじゃなくて逃避しているのだと綾乃は認識した。

「アレン・・・・ううん、太陽大命神アストレイン=ヴァーイェルドであるお兄ちゃんと、私の命が連動してるなんて・・・・・・不思議」

《若干違うな。命が連動してたら、俺が事故で死んだ時お前も死んでんじゃん》

「あ、そっか」と、綾乃は苦笑した。

《同じ魂を持つ存在。だから言っとくけど、こっちにもう一人の綾乃はいねーよ》

「当たり前なんじゃ・・・・・だって、その存在がお兄ちゃんなんでしょ」

《そうだ。けど、普通は片一方の世界に魂を共有する者が、合わせて二人いたことの方が異例なんだ。しかも、俺とお前以上にそっくりさんなもんなんだぜ?》

「そうだったの!?それ気にしてなかった!」

《ちょ、綾乃!声大きい!レウィンが起きるだろ》

「おっと・・・・・むぐ」

 思わず叫んだ綾乃は、ハンモックから上半身を乗り出し、レウィンの様子を覗った。

 綾乃が見ている間に一回だけ寝返りを打ったが、起きることはなかった。

 それを見て、綾乃は胸を撫で下ろす。

「良かった。寝てる」

《おお》

 綾乃は元のように寝っころがり、天を仰いだ。

「見て。表世界よりも星がはっきり見える」

《そりゃまあ、近所のコンビニとか家とかの光があるからな・・・・》

 二人の表世界での家の二軒先にはコンビニ、向かいにはそれなりの規模の塾がある。

 コンビニは24時間営業だし、塾も授業が終わっても自習とかで残っている生徒や事務処理的なもので遅くまでの仕事している先生達がいるから、12時くらいまでは明かりが絶えない。

「何の星なのかな。・・・・・あれ、私たちが知ってる星じゃないんだよね」

《・・・・・・。》

 やっぱり、綾乃は故郷が恋しいのかもしれない。

 強がっているのかも。

 そう考えて、“魂を同じくする者”である自分が綾乃を引き寄せてしまって、記憶まで失わせてしまっていたことを思った。

 儀式を行って来させたサフィールやソロンではなく、原因は自分にあって。

 湊生は押し黙り、ただ意味深な綾乃が漏らした言葉を心の中で反復させた。

 が、一泊置いて言った綾乃の照れくさそうな発言に、今までの考えは全て吹き飛んでしまった。

「裏世界で・・・・・お兄ちゃんと再会出来てよかった」

《綾乃・・・・》

「自分が男の子になったのには驚いたけど」

《それなんだけどな、綾乃、お前は表世界と裏世界の時間の流れが違うのは知ってっか?》

「うん。エスティ君と世話係のクィルさんから教わったけど?」

 勉強を始めた初日、クィルと初対面した日だ。

 まずは表世界と裏世界の因果関係について教えてくれたっけ。

《ずっとチューブの中で眠ってた俺の魂が綾乃の体に入ったのは、俺が生きた年数、時間がちょうど綾乃のそれと合致した時じゃないのかなってさ》

「え!?でも、それって・・・・」

《基準が表世界だから、合ってるんだよ》

「そうなんだ・・・・・やっぱり、お兄ちゃんと私。繋がってるんだね」と、綾乃が笑う。

《おう。俺はもう死んでて、これ以上死ねないし、映画に出てくるような魂を消滅させる装置もないし。俺は、綾乃がこっちにいる間は傍にいる》

「・・・・うん」

 何だか眠たくなってきて、瞼が落ち始める。

 それでも、一番言って置きたいことを言わなきゃいけない。

 これからに関わってくるから。

「あのね、お兄ちゃん?」

《んー?》

「もし、必要な時が来たら」

《うん》

「私の体、使ってもいいよ」





pixivでキャライメージを公開しています!

一番新しいのは、”旅前・旅中”。

旅前と旅中の綾乃とレウィンの服装及びキャラ自体のイメージが掴めます!

”太陽系の王様”で検索して下さい。他の同シリーズの絵もたくさんあります。


活動報告更新中!小説の最新情報とかあります!是非チェックしてみて下さい!コメントを頂けると幸いです。

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