第十四章『闇の掟』・第三話『三つの命・二つのセカイの真相』Part2
今回、謎が大きく分かります!
ラストまでもう少しですね。
後書きでミニ説明を付けているので、読んで下さい。
真ん中の塔、最上階。
ドアの左右にアレンとリフィアがそれぞれ分かれ、庇われる形でシャルテと綾乃が隠れる。
守護神二人は覚醒モードに入り、防御壁と魔法球を用意する。
今まで通ってきた道に兵は一人もいなかった。
この先も、居ない筈だ。
けれど用心に越したことはない。
バン、と一気にドアを開け放ち、中に押し入った。
そこには淋しくただ一つ玉座があって、仮面で顔を隠した男が座っていた。
銃器や魔法に関するもの、兵などは見受けられない。
それでも防御壁は消すつもりは無かった。
サラの“守護”ほど力は無い。
だからアレンの防御壁の内側にリフィアの防御壁を張っている。
「よく来たね。未来見て知ってたのかい?私が一人だってこと」
「ああ。」
リフィアはアレンが震えているのに気が付いた。
怖くてじゃない。
明らかに殺気立っている。
「冥王星王、いや《キング》!フォリビアやリフィア、たくさんの人々を弄んだお前だけは・・・・・・お前だけは許さない!」
怒りを露わにし、アレンは吐き捨てるように言った。
フォリビアを殺し、リフィアから身体を奪い。
未来の息子・フェトを誘拐、未来の自分を苦しめている。
今までの鬱憤が完全に浮上してきた。
それから、冥王星軍はランクがチェスになっている。
リフィアが“クイーン”ということは、まず間違いなくキングは冥王星王だ。
だがその言葉を聞いて、冥王星王は鼻で笑った。
「カッコイイ決めゼリフが決まったところ悪いんだけどね、キミ、間違ってるよ」
「何がだ!」
「私は、《キング》じゃないんだ」
「キング・・・・・じゃ、ないだって!?」
それはつまり、別にいるという事。
アレンは動揺した。
もし、リフィアよりも強い奴が戦争の前線に差し向けられていたら、と思ったのだ。
だが冥王星王は予想外の言葉を発した。
「キングは、《死んだ》」
「死んだ・・・・・?」
思わず聞き返すアレンの傍で、クイーンであるリフィアも目を見開いている。
トップシークレットだったのだろうか、彼女も知らないらしい。
「そ。自殺。ほぉんと、困っちゃうんだよね、勝手なことされちゃ。お陰で駒が・・・・人形が、一つ無くなっちゃったじゃないか」
冥王星王の、少し幼さを残したような狂ったような、とにかく挑発するような口調にアレンの苛立ちは増した。
「駒?人形?・・・・・・オマエ、人を何だと思って・・・・・っ!」
「ならば、こう言えば満足かい?・・・・・・・大切な息子がいなくなっちゃった、悲しいなって。ふ、笑っちゃうね」
「何だよ・・・・・それ・・・・キングはオマエの、オマエの息子・・・・・!?」
「伯父様っ・・・・・・!?貴方の息子、私の従兄妹は、既に2000年前に・・・・・!!」
え・・・・・・?
リフィア、お前、今・・・・・・・何て?2000年前?
《リフィアさん・・・・・・それ、どういうこと・・・・・・?》
はっと何かに気が付いたリフィアは、口を噤んで俯いた。
「そのことについてはまた後で教えてあげるよ。でも今言ってるのはそいつの事じゃないから。我が息子にして、忠実なる最高の僕。アレン、キミと戦わせる為の最後の駒だったのさ。でも自殺しちゃったし」
はあーあ、とふざけた様子の冥王星王は、アレン達の反応を見て心底楽しそうにしている。
それが大変不愉快だったが、先程から“自殺”という言葉を繰り返すその真意が気になった。
「何で自殺なんかって顔してるね。気付かなかったのかい?そもそも、知らなかったのかな?彼が苦しんでいたのを」
「・・・・・・・?誰のことを言ってるんだ・・・・・・・?」
「ヤツは、《自分自身》を友と思い込み、小娘と作りモノの恋をして。サダメを変えようとした愚か者だ」
言い直しても理解出来ぬような言い回しに、完全に興奮状態のアレンはすぐに食いついてしまう。
手に持っている魔法球が、僅かに大きくなった。
いつもならそっと手に触れ、落ち着かせるリフィアも、伯父である冥王星王の言っていることが理解出来ず戸惑いを隠しきれていない。
「だから、誰のことを言ってるんだよっ!!」
「まだ気付かないのか。・・・・・・・あ、そうか。なるほど、アレを言っておかないと、分からないか。・・・・私も、息子も、既に死し、転生してここにいる。そこにいるリフィアの言っていた従兄妹は、その転生前の我が息子の事だ」
「・・・・・・・・転生?」
「そうだ。我が息子の前世の名はホリス。この世界の、最初の天麒麟にして、三段階覚醒の守護神というその概念を作り出した者」
アレンにはその名や天麒麟について心当たりがあった。
前に水星国で水の枯渇問題が起こった時。
テイムは言った。
『もう一人・・・天麒麟の奴は、名前なんつったっけ・・・?ホ、何とかだったんだよなあ。取り敢えずその人は十四か十五の時に父親に殺されたらしい』
あのホ・・・・・何とかが、冥王星王の息子のことだったのか・・・・・・!!
しかも、父親に殺された、ということは。
「アイツは転生したから、今ヤツには別に両親がいる。運命、自殺、恋・・・・・これらで連想する、キミの一番身近なヤツは」
《自分自身》を友と思い込み、小娘と作りモノの恋をして。サダメを変えようとした愚か者・・・・・・・・?
そんなものに思い当たる人などいなかったが、口は勝手にある人の名を紡いだ。
「ま、さか・・・・レ、イト・・・・・・・?でも、キングなんかじゃ・・・・・」
「確信無いみたいだけど、正解だよ。随分時間がかかったね。・・・・それほど、信頼していたって訳かな。考えてもみなよ。どうして私がレイトに力を返すことに批判しなかったと思う?どの道、私の手駒に変わりないからとは考えなかったのかい?」
「そ、そんな・・・・・。嘘、なんだろ?騙して、そっちに得することがあるんじゃないのか!?なあ!!レイトは・・・レイトは敵なんかじゃ!!」
「では、何で連想した?オマエが自分でレイトだと言ったんだよ。本質的に、直感的に解かっていても、認めたくないからそう言ってるんじゃないのかな?それに・・・・・・・レイトレイトって言ってるけど、アレン、キミだってレイトなんだよ?」
冥王星王は、アレンを指差した。
ちょうどその時、追ってきたサラが辿り着いた。
アレン、キミだってレイトなんだよ?
その名に、サラは反射的にドアに身を隠した。
レ・・・・・イ・・・・・ト・・・・・・。
アレンと、レイトが同じって・・・・・・。
「どういう意味だ・・・・?」
「ホリスの転生後の姿だってことさ。本来の転生後の姿はレイトだった。だが何らかの干渉が入り、表世界でレイトは二人に分解してしまったんだ。裏世界では一人なのにね。キミは表世界の彼に出会った。そしてホリス、レイト、アレンが共鳴して裏世界に実体を持たぬキミだけが、霊体として裏世界に連れて来られた。でも、裏世界では元々一人だった為に、バランスを取る為どちらかを減らすか合体させなければならなくなった。その二人の内から選ばれたのが君だ、アレン」
因みに綾乃は、穴埋めとして用意された存在だった。
アレンが死に、用無しとなった綾乃はあのまま表世界に留まり続けていたら、消える可能性があった。
その前に裏世界に来て、湊生と合体したりしていたため、回避された訳だが。
穴埋めとして生まれたにも関わらず、綾乃は穴埋めされるべき世界ではなく多い方の世界に生まれ落ちた。
故に“世界”は湊生を消し去ろうとした。
裏世界に霊体として連れて来られた湊生の為に、再び綾乃は彼の元へ戻り、そして依代となるべく今に至る。
それは運命。
「選ばれたのが、俺?・・・・・・じゃ、レイトは・・・?」
「いずれ消える・・・・・いや、既に消えかけてたんじゃないかな。《魔》に漬け込まれた時点で、ヤツのキングとしての存在価値はなくなった。漬け込まれなければ心を消して、乗り移ろうと思っていたんだがな。仕方ないから魔力の一部にしてやろうとか思って捕えたんだけど・・・・・・・結局死んだしな。使えないカスだ」
「存在価値?無くなった?お前に・・・・・お前なんかにレイトの良さが解って溜まるかぁっ!!」
ドアの向こう、サラは震えていた。
何?どういうこと。
レイト王子は利用されて・・・・?
「・・・・・・で?戦いを挑むつもりかい?この、私に」
冥王星王は、そっと仮面を取った。
「!!・・・・・サっ!!」
「サフィール、それが今の、転生後の私の姿だ!!」
誰もが瞠目し、言葉を失った。
”ホリス”って誰だかピンときませんか?
実は、プロローグ『鳥籠』に出てくる少年の事。
あの後、魂だけを転生の為に委ね、身体自体は父親によって殺されているんです。
食べ物無しくらいでは死にませんが、刺されたりしたら流石に死んじゃうんですよね。
やっとホリス、アレン、レイトの関わりが明らかになりました。
これで分かった謎は二分の一くらい?詳しくは以降の話で!!