第十四章『闇の掟』・第二話『赤き血の海原・戦いを成す者』Part3
「お前ら・・・・・・死ぬなよ」
「お互いに、ね」
行く者、残る者。
両者、しっかりと握手し合う。
皆決められた配置につく為に、本部―――太陽城を後にするのだ。
アレン、リフィア、綾乃、シャルテの四人は直接冥王星国に。
テイム、ステアは前線に立ち、
サラは治療に回る。
その総指揮を、麗人が行うのだ。
勝つのは勝つらしい。
失う物が大きいと言うけど、一体何を失うというのだろう。
手を離し、それぞれ自分のなすべきことを成す為に持ち場に向かった。
・・・・・助けて。
誰かお願い・・・・・・助けて・・・・・・
パパっ・・・・・ママぁっ・・・・
微かな助けを求める声が、サラの耳に届いた。
幻聴だったのかもしれない。
でも虚ろな瞳の今の状態のサラには、冷静に判別することは出来なかった。
僅かな反応を見せつつも、サラは動こうとはしなかった。
ただ聞こえてくるその声に耳を傾けるだけ・・・・・・。
「綾乃、お前にそろそろ言っておかないといけないことがある」
そうアレンが切り出したのは、テイムとステアと別れたばかりの、ちょうど木星国上空でのことだった。
ワールドコネクトベルトが使えるのは一定の区間のみ。
太陽国から地球までだけだ。
火星国は敵の軍が滞在しており、木星国は戦場となっている。
土星国以降は冥王星国の直轄地であり、使用するのは危険過ぎる。
第二防衛ラインにはステアが向かい、第一防衛ラインへはテイムが向かうことになっているが、途中までは固まって移動することになった。
地球国でワールドコネクトベルトを降りた際にそこでステアと別れ、残りのメンバーは戦場の方へ向かった。
木星国が見えて来ようとした時、何よりもまず赤い光が見えた。
血なんかではない、炎の色。
ゆらゆらと揺らめく、赤い・・・・・・。
近付くにつれ、声が聞こえてくる。
大勢が何かを言う声。
それが悲鳴であることに気が付いたのは、木星国まであと少し、といったところだった。
恐らく、冥王星国軍が森に火を放ったのだろう。
自軍の兵がどうなろうとも構わない、そんな意志も感じられるほどの凄まじい火だった。
これを火の海っていうんだ、とアレンは呆然と考えた。
冥王星国の捨て身の攻撃に、太陽国軍の兵士達は逃げ惑い、冥王星国軍と戦いながら火に飲まれていっている。
そこで初めて麗人がステアを地球国に、テイムを火星国に向かわせたのか悟った。
これを見越していたのか・・・・・・。
地球国では、木ばかりある訳では無い。
日本のように平地があり、川や海もある。
でも木星国はそうではない。
最初テイムの方が強いからそうしたのかと思っていたが、総指揮を任せてよかった、と一瞬の安堵感が過る。
でもすぐに下を見て、その火の地獄に遣る瀬無さを感じた。
助けに入ることは出来る。
でも、俺らのすることはそれではない、と。
テイムは成すべきことを成せ、と辛そうにしているアレンに言った。
それに、アレンの力は光。
炎を増強させるしかない。
ここはテイムに任せ、アレン達は先を急いだ。
振り返れば、テイムは地面に下りることはせず上空から魔法で雨を降らせ、鎮火作業に入っていた。
「綾乃、お前にそろそろ言っておかないといけないことがある」
《?何?》
「俺とリフィアが未来に行ったのは、戦いに勝つ為の方法を見つける為だっていうのはお前分かってるよな?」
当然、と頷く姿に、これから言う内容を頭に思い浮かべた二人は、辛そうな顔をした。
アレンに抱っこされているシャルテも、不安げな顔をする。
「方法は、ちゃんと聞いた」
《うん?で、それは?》
「お前と、俺が・・・・・・・完全に、一体化すること・・・・・らしい」
《何それ。今のは不完全な状態だってこと?》
「不完全だ。何故なら、綾乃――――お前の意識が、今そこに存在しているから」
その意味を何となく理解してしまった綾乃は、思考を完全に停止させてしてしまった。