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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第十四章『闇の掟』
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第十四章『闇の掟』・第二話『赤き血の海原・戦いを成す者』Part1






 その時は、急に訪れた。

 冷戦状態が二ヶ月ほど続いた時、冥王星国はいきなり攻め込んできた。

 太陽国側は、その軍を三つに分けた。

 第一軍は直接冥王星国直轄地に面している木星国に。

 第二軍はそれ同様に直轄ではないけれど攻めてくる恐れのある火星国に対し、地球国に配置。

 そして第三軍は、本部である太陽国に。

 ついでに言うと、守護神達は、今全員太陽城に集まっている状態である。

 攻め込まれたのは、木星国。

 直轄地側(土星国以降)からと、火星国に挟み撃ちされている状態にあるのだという。

 くっ、とアレンは歯噛みした。

 太陽国側の兵を第一軍から3:2:1の割合で置いていたのはこの状況も見越しての事だったが、報告によれば敵の勢力は予想以上で、今のところ何とか対応出来ているくらいらしい。

 でも増援に向かうのは難しかった。

 他の防衛ラインを薄くすれば、また別の方向から叩かれてしまうからだった。

 とはいえ、この戦争において木星国の役割は大きい。

 因みに木星国の向こうに海王星国はあるが、海王星国の住民は既に全員移住を済ませ、今は太陽国に居るのでそれは安心だ。

 ただ残念なことに、予知能力を持つレイトは消え、それによりトランスの力も失われた為、太陽国側は若干不意打ちを食らってしまった。

 けれど第三次魔法大戦は、いずれ必ず起こると言われていたこと。

 十分に備えはあった。

「始まったんだな、第三次魔法大戦が」

 見える筈は無いが、アレンは窓の側に腰掛けて遥か彼方にある木星国の方を見た。

 もう完全に公式カップルと化したリフィアもその傍に立っている。

「綾乃」

《な、何!?》

「お前、俺から絶対に離れるな」

「それ、リフィアに言えよ」と、テイムがちゃちゃを入れる。

 アレンがそれを言った、本当の意味を知っているリフィアは苦笑した。

 逆にそうツッコまれてアレンは真っ赤になった。

《ホントだよ。で、どういうこと?なんでそんなこと私に言うの、お兄ちゃん》

「それは・・・・・・言えないけど」

《戦いの足手纏いにならない?この姿じゃ戦えないし》

 綾乃は自らの姿を室内にあった姿見で見た。

 どう見ても魚のぬいぐるみ。

 これで戦いに参戦出来る筈が無かった。

「一緒に戦えっていう訳じゃないんだ。安心しろ、そのぬいぐるみは不死だから撃たれても刺されても死なないから」

《でもお兄ちゃんが死んだら、その身体が死ぬじゃん》

「ま、そうだな」

《冷静に言うな!私の身体なんだから、無傷で返せー!!》

 身体に戻った時痛いって感じるのは私なんだから、と言い掛けて、アレンの表情に言うのを止めた。

 切羽詰まったような、申し訳なさそうな。

 その意図が掴めなくて、綾乃は首を傾げた。

「綾乃さんには、辛い選択になるでしょうけど・・・・・・・でも、私達と来て下さい。寧ろ私の方が足手纏いになると思いますわ」

「ん?どういうことだ?俺にも分からないけど」

《そうだよ。リフィアは守護神だし、魔力ランク高いみたいだし》

 リフィアは何も言わず、微笑んでいた。

 ただ、何らかの確信を持っていることは間違いなかった。

「それは、今はどうでもいいことですわ」

「・・・・・・じゃ、本題に戻すぞ。俺らも配置につかなきゃいけないのは各自、分かってるな?」

「うん」《分かってる》「それで?」

「間違えるな、この戦いは長引かせてはいけない。備蓄はそれなりにあるが、長引けば不利になるだろう」

 皆コクリと頷いた。

 アレンの言う通りだった。

 防御しながら様子を見るのは大事だが、戦力からしてこちらの方が心許無いのだ。

 向こうは魔法を使う。

 魔力持ちだからではなく、人工的な。

 だから疲労もしないし、連続で出来る。

 打って変わって太陽国側にはそんなものは無く、銃や弓、剣が主なモノとなる。

 それだけでも不利なのに、戦力の要である守護神達の魔力は無限にある訳では無い。

 連続して出せば、疲労困憊する。

 況して一人でも失えば、大きな損害を受けてしまうのだ。

 長期戦に向いているとはどうしても思えなかった。

「まず、テイムとステア。お前達は、前線で戦ってくれ。後方からの援護攻撃でも構わないが、ともかく直接敵と戦うポジションにつけ」

「了解」

「わかりました」

「サラ、お前は負傷者の回復を頼む。鈴木砂羅さんは、そのサポートを。サラがその状態じゃ、まともに役割果たせるかどうかわからないからな・・・・・・。ま、金星国の救護班もいるし、堅苦しくしなくても大丈夫だろう」

「はい」

 砂羅は、傍の椅子に虚ろな瞳をしてただ座っているサラを見て言った。

「麗人、お前は全軍の指揮を頼みたい」

「え!?ちょっと僕!?」

「そうだ。頭いいし、戦法とかその手も得意そうだしな。この中の誰よりも多くの面で優れている。それになにより・・・・・・・お前なら、安心して任せられる」

 麗人がアレンの肩をがっしりと掴む。

「じゃあ湊生は!?湊生はどうするんです!?本来なら麒麟であり太陽大命神の、キミの役割でしょう!!」

「俺は、いや、俺と、リフィアと、綾乃と・・・・・・シャルテの四人は、直接冥王星国に向かう」

「正気なんですか!?勝ち目ないでしょう、それでは!!キミがいなくなれば、敗北は目に見えてしまう」

 アレンは黙って頭を振った。

 そんなことは無い、とアレンは断言する。

「未来で聞いたから、それはない。冥王星王は、兵を一人も残さずに俺らを待ってる」

「その、結末も聞いた?」

「・・・・・・・俺らは、勝つ。だが、たくさんのものを失う。にも関わらず、得られたものは少ない」

「戦争なんてものは、そんなもんさ」と、テイムが言う。

 何かを得ようとして戦うのに、結局は計り知れないものを失ってしまうもの。

 悲しみは悲しみを生み、無限に続く。

 でも戦ってでも守らないといけないものがある。

 だから、俺達は。



「・・・・・・そうだな」

 アレンは拳をきつく握りしめた。





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