第十四章『闇の掟』・第一話『止まった砂時計・弾けゆく泡』Part7
アレン達が太陽国に戻って、一ヶ月。
動きをみせていた冥王星国はいつの間にか静かになり。
ただ互いの様子を窺う日々が続いている。
その変わらぬ日常の中で、ただ一つ、気になっていることがあった。
サラが夢遊病のように、よく夜中彷徨うようになったこと。
レイトの死は、サラの心に一点の墨を落とし、涙でその色は滲んでいった。
広がる悲しみに日毎耐えられなくなっていく彼女は、声を失った。
目も虚ろになり、生きる気力すら既に感じられない状態になっている。
時折狂ったように笑い、どこかを見詰めている。
彼女の目には、そこにレイトがいるように見えているのだろうか。
今の彼女なら、何をしてもおかしくなかった。
どこにいるの?
ねえ、今貴方はどこにいるの?
昔かくれんぼしてた時みたいに、後からちゃんと出て来てくれるのでしょう?
どうして皆いないだなんて言うの?
いなくなる訳ないじゃない。
何を言っているの?
ふらふらと、何重にもなされている警戒網を潜り抜けて。
いつの間にかどこか知らないところに居る。
でも、歩いて行くその向こうにいる気がするんだもん。
そんな気がするから。
ね、どうしてそこに居るのがレイト王子じゃないの?
他に何も要らないのに。
いつも私を見つけ出すのは同じで、違う人。
その傍らで気の毒そうな眼をする、もう一人の私。
分かるでしょ?貴女は私なんだから。
貴女は私。
でも、同じで、違う個体。
追い掛けて来てくれたのを認め、私は笑みを浮かべる。
でもその笑みに魂など無い。
認めたくない、認められない。その現実を。